#東京 #自由民主党 #大西英男事務所 政策秘書との面会ルポ
面会日:2021年8月18日 10:00~12:20
担当:内藤百合子、本間のどか、徳田悠希、高橋悠太
ルポ作成者:内藤百合子
議員会館にて、東京16区選出で自由民主党の、大西英男議員の政策秘書の方と面会をしました。当初1時間程度の予定でしたが、最終的に約2時間、私たちの質問に率直な回答をしてくださり、事務所としての見解を丁寧にお話しして下さいました。
以下、私たちと秘書の方の対話の様子をお伝えします。
(※は内藤による捕捉)
大西英男事務所としての4つの質問への回答
①核兵器の廃絶を目指すべきだとお考えですか。
明確に廃絶を目指すべき。
核兵器禁止条約に対してのスタンスに関して我が国が失ってはいけないのは、まず唯一の被爆国であるということ。
そして我が国の姿。憲法9条も含めて、過去の大戦の後に戦争を行っていないという厳然たる事実、そして平和国家として発展しているという事実自体が、核兵器なんてなくても国は平和に繁栄し、国民が幸せになれるということを体現しており、これを体現し続けるのが日本の役割であると大西事務所として考えている。
②核兵器禁止条約が発効しましたが、議員個人として、核兵器禁止条約に賛同しますか。
③日本は核兵器禁止条約を批准すべきだと思いますか。
今ではない。
②の「条約に賛同しますか」というのを「署名すべきだと考えていますか」と捉えたら、今ではないということ。
③も同様で、今ではない。
核兵器禁止条約に関して、核兵器を廃絶するというゴールの地点に関しては賛同しているが、では今署名すべきかどうかという話に関しては、今はその時期ではないという理解をしている。
④どのような条件のもとならば、日本は核兵器禁止条約に署名・批准することができますか。また、署名・批准に至らない障壁となっていることはなんですか。
核兵器禁止条約に今批准すると、核兵器を保有すること自体が即時違法となってしまう。
また現核保有国が署名した際に、具体的にどのような措置を取りどういう風に核兵器を無くしていくのかということが明確ではない。
法律には使ったら違法、持っているだけで違法など色々あるが、これを条約に当てはめてみた場合(※核兵器禁止条約のように)持っているだけでも違法ということだと、あらゆる事情を考慮しないからすぐに捨てなくてはならない。
核兵器を無くすに至って経過措置を設けるなどはもちろんやるのだろうが、そこの部分に関して、現核保有国が署名をした場合には、どういう措置でどういう風になくしていくかという部分がこの条約にはない。(※条約推進派は)「いやいやそれは、逆に署名してくれた核保有国の意見を聞きながら、どういうことならば現実的なのかと相談していく」と言うのだろうが、そうなると核兵器不拡散条約と何が違うのか?ということになる。核兵器不拡散条約も核兵器を廃絶すべきであるというゴールは一緒なのだから。
内藤:どこかの(※核保有)国が「国として核兵器をやめる」という政策を取らないと、この条約に参加していくことは難しいということだが、日本が先陣を切ってそれをできないのはアメリカとの関係があるからなのか。
「アメリカとの関係があるから」というわけではなく、現核保有国とされる国が一国も賛同していないからである。
例えば「英仏露中が核兵器禁止条約の署名に前向き」という状態になっていてアメリカが嫌がっているという状態だったら、アメリカが不参加を決めたTPPの時のように、説得する役割が日本にはあると思う。
「日米同盟の中で日本はアメリカについていくしかない」などということを言う人がいるが、少なくとも今の日本が言っているのは、「アメリカが」ということではなく現在核保有している国が一国も賛同していないということ、増してドイツやカナダなど主たるNATO含め、軍事的な秩序に関して実際に担っている国がどこも加わっていないということである。
そういう状態(※核保有国が参加に前向き)になった時にどうするかはまさに日本政府が判断すべき。
でも政府は、核保有国が積極的でないからはい終わりという話にはしていない。実際に賢人会議(※核軍縮の実質的な進展のための賢人会議)など場面場面において発言しているというのが今の政府の立ち位置である。
”橋渡し”について
本間:政府答弁にもよくある、橋渡しという言葉はどのように捉えているか。
橋渡しとは一体何をしているのかという問いに関して政府の説明として、直近では賢人会議を出している。日本が主導したものである。
極論、橋渡しとしていちばん大きなインパクトを与えるのは(※核兵器禁止条約に)日本が署名することだ。しかし、例えば北朝鮮の核の脅威の中で日本が危険な状態になったときにどうするのか。国民が危険にさらされるリスクが高すぎる。核の傘に入っている日本が核を否定するにはしっかりとしたリスク回避を担保しなくてはいけない。
日本がやっている橋渡しは全て核兵器不拡散条約の延長線上にあると思う。そうでないと(※核保有国が)集まってこないから。
核兵器不拡散条約はどこまでいっても核廃絶を目指すということをもっと強く発信していくべきだと思う。最終ゴールを見誤ってはいけない。
核兵器不拡散条約(NPT)について
徳田:核兵器不拡散条約で核保有国という核兵器を持っていい国が決められていること自体が分断状態であり、すべての国が持ってはいけないということを改めて形にするという良い意味で核兵器禁止条約は意味があるものだと思う。
核兵器不拡散条約が有効な手段であると考えているとのことだが、では核兵器不拡散条約の推進に対して日本ができることは何か、またどう推進していくと想定しているか。
核兵器禁止条約が、核兵器不拡散条約が機能していないという問題意識に立脚しているのであれば、日本政府が繰り返している「日本は核廃絶を目指している」というゴールは変わらない。
核兵器不拡散条約を基軸に目指していくのであれば、(※核兵器不拡散条約の)「これ以上増やさない」というスタンスの中で、核保有国を増やさないということと、核兵器を増やさないということの両方を目指すべきであるということを、原点に立ち返って確認する必要があると考える。
(※核兵器不拡散条約を)有効な、機能するものにしていくべきだ。
徳田:核兵器禁止条約にはメリットがないということか。
メリットがないというより、いきなり保有しているものを違法化すること自体が混乱を生む。経過措置があると言われても、プロセスが不明確である以上、国民の命と暮らしを危険にさらして署名することはできない。
核兵器禁止条約の締約国会議のオブザーバー参加について
徳田:核兵器禁止条約のプロセスが不明瞭であることや実効性が懐疑的であるという時に、来年の締約国会議で具体的なプロセスを話し合う場になると思うが、そういった場に参加する、オブザーバー参加はどうか。
ルールを作る場に、署名しないでも議決権を有して参加させてもらえるのであれば、一考の余地はあると思う。
(※現状では)仮に締約国会議にオブザーバー参加をしたときに、ひたすら「プロセスが見えない」ということだけを言い続けることになると思う。
プロセスが不明瞭であるということの説明を、”核保有国でないが立場の橋渡しをする”という日本が担うべきだ、(※締約国会議に)出るべきだ、という意見に関してはしっかり検討していかないといけないと思っている。
徳田:この会議では核兵器が使われた際の被害者援助の話も出されると思う。先日黒い雨訴訟などもあったが、被害者援助という観点からの発言など、日本が力になれることもあると思うがどうか。
被害者援助の議題を(※その他の議題と)切り分けてくれれば可能だと思うが、おそらくそれは難しいだろう。もし仮に分けられたとしても、(※国際社会からは)「分科会にオブザーバー参加した」ということから、イコール「締約国会議にオブザーバー参加した」という受け取られ方になってしまうと思う。
賛同してないオブザーバー参加なのに、重みが増すからということで「締約国会議に日本が参加した」とたくさん報道を含め発信されるだろう。
となると、「あれだけ説明したのに『プロセスが見えない』というのはどういうことか、反対したいだけなのではないか」と言われてしまう可能性があり、悩ましいことである。
まとめ
各自が感じたことを以下にまとめました。
内藤:与党の議員の方から見る政府の言動や核兵器禁止条約に関する見解を伺うことができたのは非常に新鮮で、視野の広がりを得られる有意義な時間となりました。核兵器禁止条約に後ろ向きである日本政府の姿勢の理由を改めて理解することができ、核兵器廃絶というゴールは共有しているのに実際の動きが進んでいかないところに行き詰まりを感じました。同時に、核廃絶というゴールを共有しているということを確認し合い、それぞれの考えの違う点を明らかにできるという点で、政治家と市民の対話の重要性を強く感じ、今後もこのプロジェクトを推進・活性化していきたいと強く思いました。
本間:前回伺ったのは、野党の方ということもあり、与党の方からは異なる意見をお聞きすることができて、とても新鮮でした。この面会だけに言えることではありませんが、核兵器は廃絶すべきというゴールは一致しているのにも関わらず、なぜ議論が進まないのか、廃絶に向けて進まないのかと、もどかしさが募りました。今後も前向きにプロジェクトを通して、議員の方々と対話を進めていきたいです。
徳田:はじめて与党の議員事務所の方からお話をお伺いし、見解を聞けたことは、貴重な経験となりました。核廃絶という同じゴールを共有しているからこそ、互いに異なるプロセスを現段階で描いているとしても、対話を持ち続けることの重要性を実感しています。これからも多くの議員の方と対話をし、意見を聞き、また意見を伝えるという活動を通して、議員の方々が「検討します」のその先に進み、議論が活発にされるきっかけとなりたいです。
大西事務所の皆様、この度は誠にありがとうございました。ぜひまた大西さん本人ともお話できたら嬉しいです。