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ギグ法案が成立、経緯と産業への影響まとめ

ギグ法案成立、2020年1月に施行

Uber、Lyft、DoorDashなどが反対する通称ギグ法案(正式にはAB5という)が、カリフォルニア州上院で可決された。

ギグ法案は、ギグエコノミーの労働者の権利を保証するための法律だ。

カリフォルニア州下院議員では法案はすでに通過しており、上院での法案通過が焦点だったが29対11の投票で法案を可決した。よってギャビン・ニューサム知事が法案に署名する*1と、2020年1月1日には発効される。

*1 署名して法案は成立しました

ギグ法案の中身:雇用労働者か請負労働者かの区別を厳格化

この法案ではダイナメックス・テスト(Dynamex Test)と呼ばれる請負労働者であることの認定のための基準を設置する。ダイナメックス・テストは以下の3つのABCテストから構成される。
- (A)業務に関して会社から指示を受けているかどうか
- (B) 会社の主要な業務に従事していないか
- (C)労働者は独立して事業しているかこの法律の主な目標の2つであるUber

上記の基準を満たさないとその労働者は請負労働者ではなく雇用労働者とみなされ従業員と同等の福利厚生・保険などを付与しなければならない。

これまでgigエコノミーというキーワードをまというまく労働者を安く囲っていた企業にとっては大きな痛手だ。実際Uber、Lyft、DoorDashなどの西海岸を代表するギグエコノミー企業は、この法案の成立を防ぐため、ドライバーの買収をするなどなりふり構わぬ工作に出ていた。またこの3社は法案成立前の8月末に9000万ドルを拠出し、ドライバーにAB5の法案の是非(ギグ労働者として従業員ではない第三の労働形態を認めるべきかどうか)を問う住民投票を実施すると発表した。


成立後の各社の反応

Uber

Uberはギグ法案が成立したにもかかわらずどう法案を考慮しても、Uberを支える膨大なドライバーを従業員として分類しなおす計画はないと述べた。Uberは、カリフォルニア州で成立したこのより厳しいテストでも、ドライバーを独立した請負業者として扱うことができると主張している。

Lyft 

Lyftの広報担当者はTCの取材に対してメールで失望の意を述べたという。

ギグ事業者にとって大打撃は避けられず

カリフォルニア州だけの法律であれば、すぐさま影響はないと考えるのは禁物だ。一般的にギグエコノミーにおける各サービスのカリフォルニア州が占める割合は非常に高い。調査会社のSecond Measureによると主要なギグエコノミー系スタートアップのカリフォルニア州の依存度は以下のようになっている。

画像1

カリフォルにはではリンク先の図からもわかるようにLyftがUberに対して健闘している地域だけにLyftにとっては特に大きな打撃になる可能性がある。楽天の株主は要注意しておくと良いだろう。

しかし楽天より深刻なのはUberに投資するソフトバンクかもしれない。同社のビジョンファンドは、ギグエコノミー領域に大きくベットしている。Uberの投資家として知られるだけでなく、例えばフードデリバリのDoorDashの5億3500万ドルラウンドのリード投資家、犬の散歩代行サービスを展開するスタートアップWag!には3億ドルを投資などだ。ウーバーは、こんぼギグ法案により年間5億ドルを超える追加コストが発生するとするアナリストレポートもでており、他の州が追随すればコストはどんどん膨らむ可能性がある。


今後はどうなる?

今後は米国の他の州や他国の多くが追従して類似の法律が導入されるかが焦点となる。Uberは7月のマーケティング部門の大量解雇に続き、エンジニアリング部門とプロダクト部門で従業員の解雇。合計435人で、全体の約8%にあたる人員を整理するという報道もあり、この法案成立がなくても逆風と言える状況だ。ギグエコノミーというバズワードを隠れ蓑にして法律の穴を使って高い収益性をだしていたギグエコノミー系企業の収益力にさらに大きな陰を落とすことになりそうだ。

[Case]ニュージャージー州で罰金6億4,900万ドル

ニュージャージー州は、ドライバーを従業員ではなく独立した請負業者として誤って分類したとしてUberに6億4,900万ドルの罰金を課した。


他の業界への打撃

まさかの新聞業界やメディア業界にもダメージがあるとのこと。AOLなど多くのメディアは日々のニュースはフリーランス記者にまかせ、長文記事だけ社員で書くといった状態で運営を回しているという。たとえばAOLでは日々のフラッシュニュースをフリーランス一人で1ヶ月あたり35本ほど要求しているという。今回の法律に関してはカリフォルニア州の新聞業界によるロビー活動で、新聞は適用が1年間先送りとなったという。

アルバイトの新聞配達員に宅配を託し、編集局の縮小でフリーランスに記事面での依存割合が増えている新聞社にも、法案の規定で、彼らを「従業員」としての採用を迫られることになりそう

その他の規制の動き

米上院議員で民主党大統領候補でもあるのエリザベス・ウォーレン氏が、ギグワーカーの労組結成を認める法案を提出したという。CNBCが伝えた


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