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プライベート・エクイティはコロナでさらに伸びるのか?


前回金融危機をチャンスに変えたPE業界

2007-09 年の金融危機の間、ヘッジファンドや投資銀行などおおくの金融機関が厳しい逆風にさらされた。しかしプライベート・エクイティ(PE)業界は、金融危機の逆風の例外であった。2007-09年の危機時にヘッジファンドが投入したファンドのリターンは、年率換算で中央値で18%とさほど影響はなかった。そして、金融危機の逆風をのりきっただけでなくPEの重要性は金融危機後はるかに高まったといえる。大学の基金から公的年金基金に至るまで、投資家はこれまで以上に多くの現金をPE業界にながしている。また今後は401k(米国の確定拠出年金)で投資可能なアセットクラスとして認められることで一般の個人投資家からも資金を獲得できそうだ。


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金融危機後PEファームは大きな資金をあつめてきた(Dry Powderはまだ投資していない資金を意味する)

最大手のPE企業は、バイアウト、不動産、クレジット市場にまたがる金融コングロマリットへと発展し、ウォール街の投資銀行たちがかつて担っていた役割の一部を引き継いでいる。PE業界の運用資産は40兆ドル以上に膨れ上がった。アメリカでPEが運営する8,000社の企業は、GDPの5%を占め、労働力のシェアも同程度に及ぶ。もはや金融業界の一大勢力にまで成長した。

コロナ危機で既存のポートフォリオは痛むが、新たなチャンスの到来でもある

現在のコロナ危機において、PE企業の業績は投資家と経済全体にとって極めて重要な問題だ。レバレッジをかけた企業や債券は、PEのポートフォリオの中で脆弱であり、ファンドマネージャーがこれらの投資を乗り切ることができるかが問われている。PEの既存の投資先への打撃が問題となる一方で、危機によってもたらされた千載一遇の取引のチャンスも同時に到来している。

コロナのPE業界への影響をみるために米国で上場しているPE企業に注目してみよう。2020年の第1四半期には、アポロ、ブラックストーン、カーライル、KKRの4つの大手上場PE企業が、ポートフォリオに900億ドルの損失を計上した。この金額は運用資産のわずか7%に過ぎず、非上場資産の価値の評価方法が上場企業ほど透明ではないという点には注意すべきだが、思ったほど痛んでいないと結論づけれそうだ。実際上場してるプライベートエクイティ企業の時価総額はS&Pと同程度かそれ以上の水準を保っている。

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PE運営企業の積み上がった負債がもたらすリスク

株式市場は楽観的だ。しかしリスクもある。多くのプライベート・エクイティ・マネージャーは、購入した企業に負債でレバレッジをかけて利益を上げてきた(LBOの手法)。前回の危機の直後には、ほとんどのバイアウト案件は営業総利益の6倍以下の負債で行われていた。しかしコンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーによると、2019年までには、取引の4分の3が6倍以上のレバレッジをかけられていたという。これは、プライベート・エクイティ・ファームが運営する企業が脆弱であることを示唆している。格付け会社ムーディーズによると、今年の第1四半期にデフォルトしたジャンク格付け企業18社のうち、半数以上がプライベート・エクイティ・ファームが所有する企業であった。ムーディーズは、全体のジャンク債のデフォルト率が2021年までに3倍の14%になると予想している。

PE運営企業の負債の特殊な性質

過去10年の間に、プライベート・エクイティ・ファームの融資は、銀行から、専門的な民間クレジット会社へとシフトしてきた。プライベート・エクイティ・ファームは、プライベート・エクイティ・ファームが運営するビジネスを維持するために、債務の減免の受け入れを困難にする可能性がある。さらに厄介なことに、大手プライベート・エクイティ・ファームのマネージャーの多くは、自分たちが所有している会社は、アメリカ政府のビジネス救済策であるペイチェック・プロテクション・プログラムやメイン・ストリート・レンディング・プログラムの対象外であるか、あるいは利用する気がないと言っている。

ただかけられたレバレッジは気になるものの、プライベート・エクイティの取引を支援するために発行される負債の多くは財務制限条項が緩和され、逆にいうと貸し手保護条項が不十分なコベナント・ライトと呼ばれる融資となっており、借り手企業は貸し手からのペナルティを受けにくい仕組みとなっている。2007-09年の危機以降、多くのプライベート・エクイティ・マネージャーは巨大な与信部門を設立しており、これらの企業は、経営者に社内の専門知識や負債調達のメカニズムをより多く提供し、脆弱な投資先企業の負債を有利な条件で再構築することができる可能性もある。

最後の切り札は追加の資本注入

多くのPE企業はコロナ後の経済再始動を見越して資金をつなぎとめる可能性もある。そして、プライベート・エクイティ企業が経営する企業が、より多くの負債を調達できず、債務不履行に陥ったり、借入を再構築できない場合、残された選択肢は、資本注入による救済だ。すでに、EYが世論調査したプライベート・エクイティのCEOの約70%が、投資先企業に新たなエクイティを注入する必要があると答えている。

ファンドの構造上、マネージャーは、新規ファンドのために調達した「ドライパウダー(ファンドがまだ投資に回していない待機資金)」を古いファンドが所有する会社に展開できないという制限がある。しかし、ほとんどの老舗ファンドは多額の準備金を保有しているので問題にはならない。Blackstone の最高財務責任者である Michael Chae 氏によると、1,520億ドルのドライパウダーのうち約300億ドルがファンドのために確保されているという。ファンドは他の方法でも資金を集めています。一般的に、プライベート・エクイティ・ファンドは、出資している企業の株式を売却した時点で投資家に現金を一度返却するが、投資期間が継続している場合には、ファンドは資金を再度返還するよう要請することができる。プライベート・エクイティ投資家の業界団体によると、このような「再生資本」を活用する機運もたかまっているという。

既存投資を救済することは、プライベート・エクイティのリターンを低下させることにつながる。買いの機会がそれを補うことができるかどうかはまだわからない。ほとんどのプライベート・エクイティ・マネージャーは、新たに拡大した信用部門を利用して、価格が暴落して破綻したローンや債券を買いとる意欲があるという。しかし、伝統的なバイアウトの量は3月に急激に減少し、それ以来、購入を行った企業はわずか数社にとどまっている。何年もの間、プライベート・エクイティの大物たちは、巨大な「ドライパウダー」を自慢してきが、それがこうした不況時に使われれば、桁外れのリターンを生み出すポテンシャルになる。

千載一遇のチャンスとみて積極投資するPE

AirbnbはPEのシルバーレイクとシックス・ストリート・パートナーズから10億ドルを調達している。シルバーレイクはほかにもここ数ヶ月で、ソーシャルネットワーキング企業の Twitter、旅行予約サイトの Expedia、Alphabet の自動運転車部門 Waymo、インドの急成長中の通信グループ Reliance Jio に数十億ドルを投資するなど、爆買い状態だ。これは2008年の金融危機の際にゴールドマン・サックスからゼネラル・エレクトリックに至るまで、アメリカ経済の中心にある企業を支援するために踏み込んだバークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏と比較されるほどの存在感を示している。


上記内容は主に以下エコノミストの記事を参考にした簡略・意訳版です。性格な全文は以下を参考にしてください。


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