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ファーストコンタクト〜ムラクモ〜
特別な時間をくれる時計との出会い
私がキクチナカガワのムラクモを手に入れたのは2023年の春、執筆当時で既に一年が経過している。それでも初めて手にした時の興奮は忘れていない。磨き込まれた鏡面のケース、CGのような立体感を誇るスペード針、それを上手くまとめあげるプロダクトとしての質の高さ。
今時、腕時計で検索すれば、星の数ほど出てくるが、その中でもこれほど磨き上げられた三針のSSドレスウォッチは見つけられないだろう。
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ムラクモとの初めての出会い
兼ねてよりこの時計については欲しいと思い、クロノ24で購入を試みたこともあったがドイツからの個人輸入は難しく断念せざるを得なかった。ただ、やはり諦めきれず、その後もこまめに探していた。それでも全く見つからなかったのを覚えている。(その内容については、前回までのnoteで書いていたが、)
それから凡そ半年ほど経ったときだったろうか、出会いは突然だった。
小石川にあるよく伺うブティックで以前より欲しかった超高額モデルの提案を受けた直後で、半分意識はそちらに持っていかれながらも、ふらふらと他のお店を回っていた。そのお店に入った時は馴染みの店員さんは接客中だったのを覚えている。珍しいモノも多く置いてる店内を少し見ていると、接客を終えたのか店員さんが近づいてきた。一度話しただけなのに覚えてくれてたのか。挨拶しようと顔を上げると、店員さんはおもむろに
『先日ムラクモお探しでしたよね?ありますよ、ムラクモ』
ドクンと自分の心臓が跳ねるのを感じた。一気に鼓動が早くなる。店員さんは私を席に案内すると、時計を丁寧な物腰で運んできた。
小ぶりながらも、異様な幅でスラリと伸びたラグ。そして眩しいくらいに輝くケースと針。
ムラクモ…!あの伝説の時計が、間違いなく自分の目の前にある。鼓動の高鳴りを抑えきれなかったが、冷静に努めたうえで時計を両手でもち、拝見させてもらった。もちろん、ストラップを持って持ち上げた。この鏡面ケースには触れられない。
現物を見てわかったこの時計の真価
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仕上がりの良さは想像通りだった。エッジの立ったケースに備えるは、大きく逆アールを備えたスペード針。時計にゾクゾクする、背中に何かが走るような感覚は随分久しぶりだと思った。
最初に手にして思った事は、ずいぶんとケースが薄く、そして不思議なほど軽い時計だという事だ。パテックの96を思わせるフラットなベゼルにハッキリと自分の顔が映る。今までに見たことのない磨き上げられたSUS金属の表面。鉄ではない、どちらかというと、鏡や貴金属のような触れてはならないオーラがある。そのオーラが、感じるはずのない重さを感じさせているのだろう。持ち上げた際に、時計が軽いと思ったのは、私だけではないのではなかろうか。
肉厚なスペード針
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そしてこの肉厚なスペード針♠️。スペードの形をした針は今まであれど、この見事な稜線とネガティヴアールを備えたポリッシュ針を持つモデルはそうない。ムラクモの画像や動画なら穴が空くほど眺めてきた。ただ、実際に見たこの針は、想像を超えていた。
遠目に見てもはっきりわかるほどに、3本の針はディテールのある作りをしている。スペードの先端部はネガティヴアール、根本部は通常アールのため、先端と根元で必ず異なる光の入り方をすり。こういう点が大変面白い。
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この針にできる影は異様だ。右から当てれば左に影ができるが、ネガティヴアールと通常アールを備えた針は、根本と先端で異なる影の作り方をする。それがこの時計の針に対して、初めて見たような感覚を覚えた原因だろう。
平面的な作りを持つケースと違って、この時計の針は曲面が多い。単調にはならない時計のバランス感がここにもよく出ていると感じる。
磨き上げられたケースとフラットベゼル
ゆっくりと時計の角度を変えていく。
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針ばかりでなくケースもすごい。これほど丁寧に仕上げられたステンレスケースの時計を、今まで見た事があるだろうか。裏蓋はもちろん、ケースの側面、ベゼル、尾錠、針至るところに磨きを感じる。
パテックフィリップのグラコンモデルのケースであれば、こういったクオリティも頷ける。ただし、あれは貴金属ケースで、尚且つ貴族が持つ時計だ。お値段も最高レベルな価格(4桁万円超)で提供されている。一般的に価格とクオリティは相関はあるものだが、この時計の仕上げの良さはプロットすると多分大きく外れるだろう。それぐらい価格や材質からは想像もつかない仕上げのよさである。
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お値段は当然プレ値だったが、迷わなかった。当時お金は全然なく、必死にかき集めて何とか手に出来た。正規のルートは、すでにバックオーダーは溜まりに溜まり8年待ち。時間を短縮する魔法をお金で買えるのであれば、この時計にはそれだけの価値があるだろう。本来待たないといけなかった時間で、たくさんの思い出をこの時計と私は作ることができる。
それにしてもよく自分の手元に来てくれたと思っている。ブランドの立ち上げが6年前かつ、年産わずか8〜10本という噂を考えると、まだこの時計を眼にした事もないことが多いのではないか。そうした話もあり、今回改めて記事にしてみた。また時間があれば長期着用レビューという目的で次の記事を仕上げようと思う