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ジョージア、ピンからキリまで公衆浴場が並ぶトビリシ旧市街
コーカサスの国のひとつジョージア。
かつてはグルジアと呼ばれていた。
場所は、イランの北側で黒海の北東部にある。
といっても、どんな国かイメージするのが難しい。
世界最古のワインの産地であり、数年前に松屋に期間限定メニュー「シュクメルリ御膳」の国である。
そのジョージアに1週間ほど旅行する機会があった。
首都トビリシを中心にまわった。
首都トビリシの古い町を歩いていると、イスラム圏にあるモスクのような建物があった。
しかしモスクではなく、公衆浴場なのである。
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値段設定は高めで観光客向けである。
中を覗いてみたいので受付に空き状況を尋ねると、3時間ぐらいは「個室」の空きがないとのこと。
個室に加えて、マッサージやあかすりまで頼むと、物価の安いジョージアでも結構なお値段(30ユーロ以上)。
宿代をあまり変わらないのであきらめて外に出た。
他にないかなと探していると、モスク風の建物の前に石造りの中近東のような建物がある。
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近づいてみるとこちらも公衆浴場みたいだった。
扉を開けて中を覗くと、半地下だからなのか薄暗い。
そして奥にカウンターがある。
尋ねると、個室+風呂を借りるシステムらしい。
こちらにはあかすりはないが、マッサージはある。
中の写真を見せてもらうと、何やらバーに水槽を置いたような感じ。
お高いのか、怪しいのかよくわからない。
しかもさっきのモスク風の公衆浴場よりも値段が高い。
加えて、さっきの公衆浴場だと他にお客さんがいたから危ない感じがしないが、こちらは半地下で薄暗いし、他にお客さんも見当たらない。
さすがにひとりだと怖い。
「予算が合いません」と断ってから、地上に出た。
他にないかなと探し続けていて目に留まったのが、この建物。
ジョージアの文字のとなりに、「Bath」と分かりやすく掲げられている。
しかも、建物の扉が開いており、さっきと異なり中に入る敷居が低い。
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早速、建物の中に入る。
おしゃれとも思える通路の奥に番台がある。
値段は、入浴料にオプションでマッサージとあかすりをあわせて31ラリ(約10ユーロ)。入浴のみだと6ラリ(約2ユーロ)。
さっきまでの2か所とは値段設定が違いすぎる。
だからだろうか、地元の方と思しきご老人がぞろぞろと入ってくる。
若い人がいないのは、私が訪れたのが平日の日中だったからだろうか。
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「よし、ここの風呂に入ろう」と決めて、入浴料の支払いを済ませた。
支払いの際に「タオルは借りるのか?借りるならば2ユーロ必要」
と言われた。
日本の景品のタオルを持っていたので、見せると
「それは小さすぎるから、借りなさい」と言われてタオルを渡された。
タオルと言うよりもシーツに近いかな。
大きさも素材感も。
あとで風呂に入り、なぜ持参したタオルが小さすぎるのか、
こんなシーツみたいなタオルを渡されるのかがよく分かった。
泊まれ支払いを済ませて、女性用の更衣室に向かった。
更衣室の中は、日本の銭湯や学校の更衣室よりもずっと殺伐としている。
古い映画に出てくる、牢屋に収容される前の身体検査の場面で出てくる場所に近いかもしれない。
中に入ると、こわもてのおばさまがいた。
あかすりとマッサージを希望する旨を伝えた。
あかすりは、三トンを別に購入する必要があった7ラリ(2.5ユーロ)。
1週間前にトルコであかすりしたから、あかすりはあきらめてマッサージだけを希望し、代金の15ラリ(5ユーロ)を支払った。
おばちゃんは更衣室の番人らしく、支払いを終えると
「〇番のロッカーを使うように」
該当する番号のロッカーに連れていかれた。
周りが開いてそうな番号のロッカーを指さし、
「あちらがいい」と言っても、
聞く耳持たずでその場から離れていく。
さすが元共産圏だった国。
これ以上言ってもらちが明かないので、指定のロッカーの中に脱いだ服を入れて番人のおばさんを呼んだ。
今度はこちらの要望をあっさりと聞いて鍵をかけてくれた。
裸になって、スライディングドアを開けて浴室に入る。
更衣室同様に薄暗く天井が高い空間は、コンクリートの打ちっぱなしで
床面がドロッとしており滑る。
硫黄泉だからだろうか。
地元のおばさまたちはスリッパをはいてシャワー浴びていた。
私はスリッパは持っていないので、滑らないように気を付けてシャワーを浴びる。
そして浴槽に向かう。
浴槽の前に石のベッドがあり、そこであかすりとマッサージがそれぞれ行われていた。
係のおばさまにマッサージを希望する旨を伝えると、
順番が来たら声をかけるから、風呂に入って待つようと言われた。
浴槽は日本より深く、どちらかと言えばプールの前の消毒層に近い。
また日本の銭湯の浴槽よりは狭いので、足を延ばすという感じではない。
他に浴槽に入る人もいなかったので、肩まで湯に浸かり順番を待っていた。
順番が着て、係のおばさまに呼ばれた。
石のベッドの上に横たわるように言われた。
まずはあおむけにされて、ボディーソープらしいものを全身にたらされる。それから、顔にクレイパックのようなパックを塗られる。
パックは終わるまでそのままにしておくように言われ(と言うかジェスチャーで示され)、ボディーソープをたらされた体をスポンジでこすりながら、マッサージする。
滑りがいい状態だからなのか、時折おばさまの指がツボに入り、非常に気持ちいい。
前半分が終わると、次はあおむけになるように指示を受ける。
ベットの上で転がりあおむけになると、今度は背面全体にボディーソープがたらされる。そしてスポンジでこすられる。
全身が終わると、足の裏や指を洗いながら、マッサージしてくれた。
そして一通り終わると、起き上がってシャワーを浴びるように言われた。
顔のパックもその時に流してよいとお許しをもらった。
ボディーソープとパックを流し終えて、片づけをするマッサージのおばさまに尋ねた。
「あのパックは何でできているんですか?」
私の言わんとしたことが通じたらしく、
「ザクロと植物」とのことだった。
シャワーを浴びた後、再び風呂に入りくつろいだ。
ちょうど風呂を出ようかなと思った頃に、ロシア人の若い観光客が数人入ってきた。
よかった、彼女たちよりも前に到着していて。
シャワーを浴び終えた女子たちが浴槽になってきたので、
風呂を上がり脱衣所に向かった。
おばちゃんに声をかけてロッカーのカギを開けてもらった。
ロッカーからシーツのようなタオルを取り出し、身体をぬぐった。
洗髪はしていないが、毛先が濡れたのでドライヤーを借りたいと申し出ると、5ラリ(1.5ユーロ)と言われたので断った。
多分髪を乾かして、更衣室でグダグダするならシーツのようなタオルで身体を巻いてリラックスするのもいいんだろうな。
この日は暑かったので、とてもそんな気分にはならなかった。
身支度を済ませてから宿に向かった。