#2 夫について(結婚まで)
夫は私より1歳年上で、対人援助サービス職に就いている。
私とは仕事場で知り合い、支援の必要な方への接し方や要支援者が彼を慕う様子を見て好感を持ち私から接触を持って交際。
当時一人暮らしをしていたお互いの家を行き来しながらなんとなく結婚を意識するようになり、私の妊娠を機に入籍、結婚した。
初めての妊娠は8週目で稽留流産してしまったが、その2年後、さらに3年後に妊娠、出産しふたりの子どもを授かることができた。
交際を始めて今に至るまで、もう20年も経ったんだ……と改めて思う。
この間自宅を購入したり夫が自己免疫疾患系の難病を患ったりと、人並みに山あり谷ありな20年だった。
交際当初の彼はとにかく自分のことを話したがり、私に自身の人となりを知ってもらおうと必死な様子に見えた。
植物の種や苔を拾って育てるのが趣味なこと
日本の伝統芸能の手習いをしていること
日本の民芸品の作り手として技術を継承したいと思っていること、などなど……
また自身の家族については厳格な父や奔放な妹とは相容れない様子であることも折に触れ話しをしていた。
幼い時から姉と一緒に自営業の手伝いをさせられ、テレビを観ることも友人を家に招いて遊ぶことも出来なかった、と。ゲームも買ってもらえず、父親が仕事で家を不在にする時だけが唯一の自由な時間だった、と。
一人暮らしの部屋に当時からしても時代遅れなゲーム機やソフトを買い集めていた彼を見て、「大人になって誰からも干渉されなくなったいま、子ども時代に欲しかったものや時間を取り戻そうとしてるんだな」と私は思った。
夕方仕事が終わり、一時間かけて彼の一人住まいするアパートに向かうと、彼が古いストーブで部屋を暖め炊きたてのご飯と煮魚を用意して待ってくれていた。
煮魚は煮汁が多めで、いつも厚揚げが一緒に入っていた。
夕飯を食べると片付けて翌日の米を研ぎ、2人で小さなお風呂に入って私の髪を洗ってくれる。
寝るまでの間、私は彼の部屋の漫画を読み、彼は古いテレビゲームで遊んでいた。
昭和みたいな、新しさのない小さな世界。
その部屋で私は子どもを宿し、両家の両親は喜んでなんの障壁もなく私達は結婚することを決めた。
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