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Watasinoニューアルバム『You are not alone』リリース情報②

この記事ではアルバム『You are not alone』の制作の経緯や、旧作再発の意図に関して掲載していきます。

前回の記事はこちら↓


アルバム制作の経緯

ニューアルバム『You are not alone』

SETO CHORD MUSICとの出会い

この話はSETO CHORD MUSIC (以下SCM) との出会いからスタートします。

SCMは今年の4月に愛媛で始動したばかりの新しいレーベル。オーナーのOunak氏はとても情熱的な人でいつもパワーをもらっています。

Ounak氏とは元旦にリリースされたJapanolofi Recordsのコンピ『WABI to SABI』に二人とも曲が採用されるという縁があったのですが、直接のコミュニケーションは当時まだありませんでした。

後日TwitterでOunak氏のツイートを読み、こちらが一方的に曲を送り付けたというのが始まりです。


”Ambeat”というコンセプト

(注) ツナミのデーモンとはTsunami SoundsのオーナーDamon Broussardのこと。

上記が連絡のきっかけになったツイートです。

Ambeat (Ambient + Beat Music) というコンセプトに強く共感し、Ounak氏とコミュニケーションをとっていく中で「ではAmbeatのアルバムを作りましょう」という話になりました。

Ambeatについて少し説明します。まずAmbeatというジャンルはAmbient + Beat Musicという事以外まだまだ定義として確立されていないのですが、Ounak氏と何度か話してお互いの共通認識として持っているのは、Hiphopの匂いがするものということ。

Ambientとリズムが一体化したジャンルの先例としてはAmbient Technoがありますが、ここで指すBeatはHiphop的なものを指しているということです。

個人的な見解としては、昨今ワールドワイドに注目を集める冥丁氏やTOMC氏のようなAmbientとBeat Musicの垣根を自由に行き来していく作家たちと共振するコンセプトだと思います。


『You are not alone』というタイトルに込めた想い

人は皆、孤独な魂を抱えていると僕は考えています。どれだけ繋がりを得ても埋められない何かがあると。それはあるいは、本当の意味では他人とは解りあえないという諦めなのかもしれない――――そんなことをいつも考えます。

しかし音楽には孤独を慰める力があります。僕は特に多感だった10代後半から20代前半の頃、本当に音楽に助けられてきました。そして今度は自分の音楽で誰かの孤独に寄り添いたい。

『You are not alone』にはそのような想いが込められています。


旧作再発とbandcamp限定販売の理由

なぜ今10年以上前の、それもWatasinoではなく本名名義の音源を再発するのか。先述したAmbeatと繋がってくる話です。

『You are not alone』が数ヶ月の制作期間を経て出来上がり、作品の出来に手応えを感じる反面「この作品はこれまでのWatasinoのリスナーを置き去りにする可能性がある」という危機感を覚えました。

言い換えるとファンに対して不親切な作品であるということです。

というのも、このアルバムはAmbeat作品であると同時に、これまで培ってきた自分の音楽的センスや手法を棚卸して作られた作品でもあります。その棚卸しされたWatasino名義以前の音楽性の部分が少し尖っているというか……これまでの”Lofi Beatsのプロデューサー”という枠組からは明らかに脱線している。そのような理由から予め本作へと繋がるレールを敷く必要があると判断しました。それが旧作2作品となります。


Watasino以前のサウンド

かつて僕はロックバンドに参加するかたわら、ソロでは即興系のギタリストとしてAmbient/環境音楽/ノイズと呼ばれるような音楽を作っていました。旧作2作品にはその時期のサウンドが収録されています。

bandcamp: https://watasino.bandcamp.com/album/2023-remastered

『散り敷ける白い足あとのために』はギターによるインプロヴィゼーションの一発録りに、エフェクトやテクスチャーを加えた作品。2011年作。

bandcamp: https://watasino.bandcamp.com/album/tayutayu-2023-remastered

『tayutau』は深い残響音を伴ったエレキギターによるインプロヴィゼーションの多重録音作品です。2013年作。

この2作品はインプロヴィゼーションという点で共通しており、それは新作と地続きの部分。そう、新作では即興で作られた要素が多分に含まれているのです。即興の部分だけでなく、音色やテクスチャーの選別にも同じ視点が感じられるはずです。

また察しのいい人はお気付きの通り、僕はビートメイカーでありながらかつてはAmbientの作家だったワケで、Ambeatというコンセプトを初めて見た時、これは自分のためのものだと直感しました。

ゆえに、新作こそが本来のWatasino=Akinori Okamuraの音楽性に近いということをここに記しておきます。


そして先述したタイトルのコンセプトと通ずる孤独がこれらの音源には収められています。

今よりも更に未熟だった当時の僕は、臆病で自分のことにしか興味がなく、今以上の孤独を抱えていました。人生の中でも特に辛かった時期です。新作は、あの頃の自分を救うためのメッセージでもあります。

『散り敷ける白い足あとのために』と『tayutau』の2作品のいずれかを聴いたあとに新作を聴くと、きっとある種の納得感が得られるはずです。そこには同じ血が通っているのだから。


bandcamp限定販売の理由

SpotifyやApple Musicに代表されるサブスク配信でのリスナー獲得は、基本的にプレイリストカルチャーへいかにコミットするかで決まってきます。プレイリストからの恩恵を享受する一方で感じる問題点は、「自分のリスナーは一体どこにいるのか?」ということ。再生回数を少しずつ稼げるようになっても、本当にWatasinoの活動を追ってくれているリスナーの姿が一向に見えてこないのです。

その理由は少し考えればわかります。

第一にサブスク配信のプレイリストから得られる情報は、リスナーにとってほとんど受動的なものであるということ。プレイリストは勝手に更新され、熱心に新しい音楽を探す人でもない限りプレイリストの内容はほとんど聞き流されてしまう。

第二にWatasinoがLofi Beatsのフィールドで活動しているということ。Lofi BeatsはまさしくBGMのカルチャーであり、プレイリストとの相性が抜群に良い。更にLofi Beatsはジャンル的に飽和しており、常に供給過多の状態にあります。そんな中では自分の作品を熱心に聴き込むリスナーとの出会いはあまり見込めません。

これらの理由に加え、新作はこれまでのWatasinoの音楽とは少し傾向が異なる作品であることから、現状のプレイリストからのインプレッションを捨ててでも、あえてbandcamp限定で販売することにしました。これはWatasinoの活動をサポートしてくれるリスナーと改めて向かい合いたいという意思表示です。

僕の音楽と向き合ってくれる人と、僕は出会いたい。


おわりに

自分の作品について語るということはあまりしないようにしてきたのですが、今回に限っては予め説明が必要な内容だと思い、ここまで記してきました。

リスナーの皆さま、いつもWatasinoの音楽を聴いてくださって本当にありがとうございます。『You are not alone』のサウンドがあなたの耳へ届くことを切に願っております。そしてその際は「届いたよ~」と一言声をかけてもらえると、これ以上嬉しいことはありません。



『You are not alone』販売ページリンク
https://setochordmusic-jp.bandcamp.com/album/you-are-not-alone

(注) こちらのBandcampページはSETO CHORD MUSICのアカウントのものになります。Watasinoのアカウントではアルバムを販売しないのでご注意ください。



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