6、その少年の冒険
知らない街までおじぃのメガネを買いにきたその少年とおじぃは、
帰り道で迷子になっていた。
「どこや、ここ」と5歳児に聞く老人。
自転車の後ろからその少年が、「右、左、まっすぐ」と
指示を出してみる。
当然、適当に言っているもんで、どんどんと知らない街に入り込んでいく。
おじぃは少し焦った様子ではあるが、
その少年はおじぃと迷子になっているのが楽しかった。
いつも黙って目的地までたどり着くおじぃが、その少年に意見を聞くのが新鮮だったし、ゴールを探して冒険をしているゲームのようで楽しかった。
右へ左へその都度のカンで道を曲がり、大迷子を1時間ほどした頃、
自転車のタイヤがパンクした。
おじぃの顔には疲れが見えたが、その少年は新たなトラブルにさらに興奮した。
自転車を降り、触ってもしかたがないタイヤをイジイジと触っているおじぃ。
近くに自転車屋がないかと周りをキョロキョロと探すその少年。
それはケガをした仲間の為に、薬草を探すミッションのようだった。
おじぃが、自転車をここに乗り捨ててタクシーで帰ろうと言い出した。
長時間のふたり乗りの運転と、
自転車の後ろでギャーギャーと興奮する勇者気取りの5歳児に疲れがかなり溜まったのだろう。
しかしおじぃは、疲れたからという理由は使わなかった。
あくまでも自転車がパンクしたからここまでだという言い方をした。
勇者に気を使った言い方をした。
しかし勇者は、そんな裏ワザを使ったクリアの仕方を却下した。
おじぃはワガママな勇者が、
このスイッチが入った時はもう止められないと知っていた。
「ほな、どうするん…?」
弱々しく聞くおじぃの背後にチカチカと光り輝く建物が目に入った。
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