44、その少年の境
その少年は中学3年生になり、中学生活最後の1年を楽しんでいた。
その少年は自分のクラスが大好きだった。
クラスの中に嫌いな人間は誰1人おらず、女子も男子も関係なくみんな仲が良かった。
中学1年、2年の時に男だけで授業と休み時間の境もなく、
ガヤガヤと騒いでいるだけだったその少年だったが、3年のこのクラスになってからは違った。
それは担任の先生の緩急のうまさなのか、仲が良くなった友達全員が切り替え上手だったからか、はたまた少し落ち着くことを覚えたからなのか、明確な原因は定かではないが、その少年はクラスのいい雰囲気に順応していった。
そして、そのいい雰囲気のおかげか、その少年の成績は上がっていった。
平均30点ほどだったテストの点数は平均70点ほどまでになっていた。
勉強が好きになったわけでは一切なかったが、ある程度の点数を取り友達と悩みを共有しているのは楽しかった。
といっても、友達はみんなその少年より1段階も2段階も上のレベルだった。
平均90点を取るような人たちだった。
その少年の友達はみんな頭が良かった。
同じように休み時間は遊び、同じ内容の授業を同じ先生から受けているのに何故みんなとこんなに差があるのかと、その少年は不思議だった。
一応、その少年も塾に通っている。
みんなとは違う塾だが、そこでやることはやっている。
不思議だった。
ある日、家で真面目に考えてみた。
1年生の時と2年生の時の基礎力による差か?と考えた。
確かに1、2年生の時には一切勉強をしていなかった。
しかし、帰ってきたテスト用紙を復習しても基礎力が問題ではない間違いをしている。単純に知識にない問題で間違えていた。
何故自分は70点止まりなのだろうか。
しかしこれの答えも分からなかった。
考えることを諦めたその少年は、毎日の日課のギターを弾くことにした。
家に帰ってから夕飯の時間までギターを弾く。
そして夕飯を食べて、ギターを弾くか音楽を聴くかバラエティ番組を見るかをして寝る。という流れだった。
ギターも練習をしているわけではなく、簡単なコードを適当に弾き遊んでいるだけだった。
その日もいつも通りで、好きな曲に合わせてギターを弾こうとした。
そして、ギターを抱えたその瞬間に気がついた。
あ、この時間にみんなは勉強してるんだ…。
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