41、その少年の驚きの順序
その少年は特に習いごとをしていなかった。
最後にしていた習いごとは地獄の剣道だった。
(剣道の地獄さ:過去の記事【21,その少年と剣道】参照)
https://note.com/watashiomu/n/n6c6b492751cb
剣道を中学生になってから辞めてからは、特に母からも何かするように言われることもなく自分から習いたいと思うモノもなく過ごしていた。
習いごとをしていない事によって困ることは特に何もなかった。
部活も行ったり行かなかったりで、学校が終わるとすぐに家に帰っていた。
本当は友達と遊びたかったのだが、友達はだいたい部活を真剣にやっており、
サボって一緒に帰るということはなかった。
部活がなければ一緒に帰り、遊べたので学校が終わりかけると「今日は部活があるのか」と手当たり次第に毎日聞いて周った。
だいたい部活はあるので、だいたいひとりで家に帰っていた。
その少年が定期的に狙っている、友達と必ず遊べる期間があった。
それはテスト期間だった。
テストの1週間前からの全ての部活がなしになり、全生徒が一斉に帰宅する。
その少年はこのテスト期間に、普段なかなか遊べない友達と遊ぶことを狙っていた。
そして、その期間が来た。
中学2年の冬季テスト1週間前。
その日の朝一番にその少年は、友達に声をかけた。
「今日から部活ないやろ?遊ぼ」
その少年は即答のOKが返ってくると思っていた。
しかし、実際は違った。
「テスト勉強するから無理」
その少年は衝撃だった。
テスト前にちゃんとテスト勉強をするという選択はその少年には全くなかった。
みんなそうだと思っていた。
しかし冷静に教室を見渡すと、教室はいつもより静かでほとんどの人がノートを開いていた。
まだ一時間目も始まっていないのに。
話をしている人も何か勉強系の話をしていた。
それは今までのテスト前の様子と違っていた。
1年生の時や夏季のテストの時に、先生が教室に来るまでふざけ合っていた友達も何かの問題を数人で出し合っていた。
その少年はその問題に聞き耳を立てたが、化学の問題なのか数学の問題なのかも分からなかった。
その少年は夏休みの終わり頃からうっすらと感じていた授業中の静けさを思い出した。
そしてピンと来た。
こいつら、高校受験を意識しだしている…。
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