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オレンジの星

2021/10/07

香りはどの感覚よりも記憶に残る。卒業式の日の友人の言葉を、この季節になると思い出す。
この香りを感じた時に実行されるルーティーンがある。①もうこの季節が来たのか、としみじみする。②この香りの持ち主となる木はどこにあるのか探す。③花の状態を見て、あとどれくらい楽しめそうかを予測する。④名残惜しいと思いながらその場を過ぎ去る。
しかしこの流れはあくまで理想である。たいていの場合は、②で持ち主が見つからないというトラブルが発生する。捜索中にまた新たに香りが確認されれば、大混乱が招かれ、第一の持ち主は確認されないままとなる。そうなったらまた翌日、捜索が再び行われる。ここで問題となるのは、香りの期間が短いことである。一度確認された場所で、翌日は確認することができないなんてことがざらにある。この問題により、その後一年間捜索が行えない危険性が発生する。
この問題の解決策として、一年中この香りが楽しめるようになればいいのにと思う。一年中捜索できたら、時間に余裕のある時にでも全て探し切ることができ、日々捜索を続ける必要がなくなる。今日発見出来なかったら、明日、明日出来なかったら明明後日、、、あれ、そうやって先延ばしにして一生探さなくなってしまうんじゃないか?そう言われてみれば、探し切ってしまっても、捜索という日々の楽しみがなくなってしまう。そもそも、一年中香っていれば、この季節が来た!というワクワクも失われてしまうのではないか。それでは本末転倒だ。
わずかな期間にしか感じられないという儚さ。そこが魅力の一つだったんだ、と妄想劇により気付かされた。危うく日々の楽しみを一つ失うところだった、危ない。

ところで何の話をしているか分かりましたか?
そうです、金木犀のお話でした。
正解したあなたには、頭の中に金木犀を咲かせて差し上げましょう。

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