おどりとわたし🐙(ずぶぬれ掲載文・再掲)
おどりとわたし
三歳の梅雨。私は母が弟の出産で入院するため、今は亡き母方の祖母の家に預けられていた。ある日、祖母につれられコンビニエンスストアーに買い物に行った。その時流されていた有線の音楽に合わせて店内で踊ったらしい。詳しい事は覚えていないが、おそらくでたらめなリズムで、でたらめなステップを踏んだ。祖母に「陽気な子やなあ~」と言われたことを覚えている。私の一番古い踊りの記憶である。
記憶を探っていたら、小学校二年生の時のお楽しみ会のことを思い出した。めいめいに子供達で紙芝居や合奏などの出し物を披露するのだが、私はそこでなぜか「たこの踊り」を披露した。確か何か歌いながら……今思えば最初の振付作品だったのだと思う。会場は大笑いの大盛り上がりだったのだが、母親はその評判を聞いてひどく恥ずかしがっていた。私は母が恥ずかしがる様子を見て、自らを恥ずかしく思った。
数年後、母とクラスメイトが出演するバレエの発表会に行った。母は「綺麗で良かったねえ」と拍手を送っていた。私の踊りは「恥ずかしかった」で、彼女のバレエは「綺麗で良かった」のかと、子供ながらにじわじわと傷つき、なんとなくバレエの事が嫌いになり、ダンスと名のつくものが苦手になっていった。
みさきさんに「ダンスについて何か書いて」と頼まれた。ちょうど自分の踊りについて言語化したいと思っていたところだったので、二つ返事で快諾した。「ダンス」は敷居の高いものだと思われがちだ。教室で習うには安くないレッスン料がかかるし、運動神経やリズム感が良くないとうまくできないと思われがちだ。
でも私は上記いずれも良くないし、もともと「ダンス」が苦手な人間であった。苦手なことをもう、気がついたら10年弱している。なぜ、私は踊るのだろう?なぜ人は踊るのだろう?
🐙🩰
以上が「ずぶぬれ」第2号に掲載した文章です。
この体験はわたし初めての「踊りたい→踊る!」が生まれた瞬間でありまた潰された瞬間でもあり、この時感じた思いは生涯大切にしていきたいと思っています。
今回のわたしのお部屋は、この文章のような少女期の思い出×サービス精神×持ちうる表現=盛りだくさんのイベントになりそうです。
お楽しみに!
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それではまた。 中西ちさと
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