見出し画像

支援者として、人として、人に向き合う~更生支援の現場から 千葉龍一さん、インタビュー記事①

3月13日午後8時から、「支援者として、人として、人に向き合う」
~更生支援の現場から~(臨床心理士の経営を考える会・主催)
の講師を務めていただく、千葉龍一さんのインタビュー記事です。

取材、執筆はいずれも中條幸子・臨床心理士の経営を考える会代表。
情報は2020年2,3月時点のものです。

①2018年に男性出所者向けの自立準備ホーム(※1)を開設し、2019年には女性向けの施設と男性向けの施設2軒目を開設しました。千葉さんは男性ですが、女性の支援はいかがでしょうか?男性と違うところがありますか?

「これはちょっと語弊があるかもしれませんが、女性はその日によって気分が変わるような気がしますね。男性は気持ちが一定というか。一度、沸点に到達すると、それで収束する。なので、男性は気分の波が読めるのですが、女性は感情の起伏があるというか(笑)」


・なるほど(笑)。では、どのような理由で女性出所者のための施設を始めたのでしょうか?

「非常に多くの人に”女性のための施設をやらないか“と言われることが多くありました。なぜなら女性の施設は少ないからです。平成30年度の犯罪白書によると男性の出所者は年間で約20000人、それに対して女性出所者は約2000人ですから絶対数が10分の1ですね。そのため施設の運営が読めず、施設を開所する人が少ないのが現状なのです。私は前職の駆け込み寺に勤めている際に自立準備ホーム(※1)の施設長を5年間経験して、男性の場合は常時、3、4人はいるかな、と計算ができますが」


・千葉さんは満期出所(※2)の方など、ほかの施設では支援が難しいと思わる方々を受け入れてきました。今まで19人。思い出深い方もいるのでは?

「全員に思いがありますね(笑)。高齢の方で頑固ですぐに怒っちゃう人がいましたね。食事もうまく食べられないことが多いから、だらしない人と思われてしまうのでしょうね。集団生活はなじめない感じで。でも仕事をしたいという気持ちはすごく強かった。そこで、ハローワークで協力雇用主(※3)のことを尋ねたら“協力雇用主とはなんですか”って言われまして(笑)。」

・ハローワークの職員でも協力雇用主制度を知らない

「そう。でも、清掃やビル管理は一人でもできる仕事ですから。仕事を見つけて、今は一人暮らしをしていますよ」

(続く:全3回の①)

<用語>

※1<自立準備ホーム>刑務所を出所したものの行き場所が無い人に一時的に住居を提供し、再起を助ける民間施設。NPO法人などが、あらかじめ保護観察所に自立準備ホームとして登録し、受託する形で運営している。自立準備ホームの職員が毎日 生活指導などを行うことで、自立を支援している。

※2<満期出所>満期出所とは、受刑期間が終了して出所すること。身元引受人がいない自分は必然的に満期出所となる。出所後は、住居、衣服、携帯電話などを全て自分で用意しなければならない。
<仮釈放>仮釈放とは、模範囚(他の受刑者のお手本になる)と認められ一定の条件をクリアしている受刑者が満期終了前に、条件付で釈放される制度。大まかな条件は、帰住地(帰る家)があること、無事故であること、刑務所の規則に違反し懲罰を受けないこと、身元引受人がいること。


※3<協力雇用主>
協力雇用主は,犯罪をした者等の自立及び社会復帰に協力することを目的として,犯罪をした者等を雇用し,又は雇用しようとする民間の事業主のこと。現在,全国で約22,000の協力雇用主がいる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?