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綿生さんちの素朴な毎日/亥の子餅と、虎屋の和菓子の話🐗
今日のお菓子は亥の子餅(いのこ餅)。いのししの子どもみたいに見えるから亥の子餅。毎年この時期になると町に現れる伝統ある和菓子だ。
季節のお菓子にもいろいろあるけど、亥の子餅の凄いところは味が美味しいところである。見た目がかわいいだけじゃない。かわいさと美味しさが合理的に交わっている。
今日食べたものだと、焦げ茶の求肥はいのししの毛色を表現しているわけだが、これがニッキ(シナモン)の香りがしてとても美味しい。求肥とニッキは組み合わせとして最高なのだ。八ツ橋の人気の理由を思い知る。
さらには求肥の中に粒の黒ごまが練り込まれていて、こちらはいのししの柄を表現しているわけだけど、噛むとお口の中でぷちぷちと弾けて食感よく、香ばしい。
これらが中のあんこと合わさると、もちもちぷちぷち、とても美味しい。ちなみに今日のは粒あんだから、しみじみとした田舎の味わい。
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ところで亥の子餅にもピンからキリまである。今日のお菓子(食べかけ写真でごめんなさい)は町の和菓子なので、キリの方だ。キリと言ってもこれはこれで凄く美味しい。ピンとキリは活動拠点が元から異なるのだ。町の人々の日々のおいしいを支える素朴な和菓子。好きだなぁ。
「餅は餅屋」という慣用句があるが、これはもともと和菓子選びの話から来ている。和菓子屋さんには上菓子屋と餅菓子屋(餅屋)があって、用途が全然違う。
上菓子屋は茶席で使われる主菓子(練り切りなどの上生菓子)を作るところで、例えば虎屋とかがそれにあたる。餅菓子屋は前述のような日常のお菓子、たとえば団子とかお安めのお饅頭とかお米のお餅とかを作る。
だから普通の餅が食べたいなら餅屋に行きなはれ、「専門のとこに行くのが一番」、という意味の慣用句になったのである。
亥の子餅は基本、庶民のお菓子。がしかし、お茶席で使うこともあるらしく、上菓子屋さんも作っている。そして、虎屋の亥の子餅(↑)は亥の子餅界最強のおいしさを誇る。やっぱり和菓子は虎屋に限る。
虎屋が作るだんごより餅菓子屋が作るだんごの方が美味しい、ということはままあるが、かといって虎屋が作るきんとんやら薯蕷饅頭やらその他ちゃんとした主菓子に他の和菓子屋が勝つことはない。世界で一番美味しい和菓子屋が虎屋であることには変わりがない。
和菓子っておもしろいもので、料理の世界だとサブカルチャー寄りの店が美味しいとか、料理屋さんから独立した個人店が美味しいとか、そういうのもあるけど、和菓子にはそれがない。常に一番は虎屋。これはもう決まっていて、覆ることがない。
それはお菓子ひとつひとつに銘を付けて、何年も何百年も同じデザインのお菓子を継承し、過去に存在した優れた職人の味覚をレシピごと残しているからなのだろう。
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虎屋の和菓子には本当にびっくりするくらい古いものがたくさんある。生まれた年を元号で書かれても、大正より前のものばかりで、西暦いつなのかわからない、それくらい古い。
たとえばこちらの『松襲』というきんとん(↓)は、初出年代は天保5年(1834)。(https://www.toraya-group.co.jp/toraya/products/namagashi/matsugasane/)
『小倉野』(↓)は、初出年代は棹菓子として正徳元年(1711)。(https://www.toraya-group.co.jp/toraya/products/namagashi/ogurano/)
もはや、えっ?というくらいに古い。300年も前に誰かが考えたレシピが、そっくりそのまま食べられるって本当に凄いことだ。
そういえお菓子がざらにある。それが虎屋の素晴らしさなのです。ちなみに色味のない地味なお菓子は古い傾向にあるという虎屋豆知識。昔は色素がなかったのかなあ?
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さて、そんな虎屋の亥の子餅はいったいどんなに昔に生まれたのだろうとホームページを見てみると、初出年代は平成11年(1999)だった。めちゃめちゃ最近やないかい!(つっこみ)
虎屋には今も、味覚、デザインの感性ともに優れた職人さんがたくさんいらっしゃるということなのでしょう。勉強になりました。
美味しくてかわいい亥の子餅。期間中はまだまだたくさん食べたいな。🐗🐗🐗🐗🐗
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