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『手当たり日記 93』 本と、たけえランチボックス、ラムネとクエン酸 2024年2月10日

昨日、2月9日の日記。

朝、6時くらいに起きて、コーヒーを淹れて、シリアルを食べながら、会議の資料の準備。作業を始めると案外集中できて、思ったよりも早く終わった。朝、集中するスイッチが入れられる習慣がつけられると、できることが増える気がする。まあ、すくなくとも今の取材のスケジュールだとそうは行かないけれど。平日は毎日朝6時に起きているので、編集期間に入っても、早起きする習慣は崩さずいたい。前に家で編集することがあったが、昼までダラダラすると、結局集中モードに入れるのが、夕方の3時とか、ひどい時は夕食後だった。あれは繰り返したくない。

準備を済ませ、会議の開始に間に合うように、家を出た。空気が冷たい中、ポケットからイヤホンを取り出して、耳に入れる。ふと、ある曲の、冒頭に流れるピアノのコードが頭に浮かぶ。アップルミュージックの検索欄に、「ホセゴンザレス」と入力して、アーティストページへ。トップランキングに載っている『Stay Alive』を再生する。頭の中に流れたコードが、聞こえる。疲れが溜まってきて、睡眠不足も蓄積してきて、それでももう少し頑張ろう、と思って毎日を乗り越える。『Stay Alive』を聴いていると、もう一歩頑張ろうと思うと同時に、理由もわからず涙が出そうになる。

Leaves you empty with nothing but dreams
In a world gone shallow, in a world gone lean

In the morning watch a new day rise
We'll do whatever just to stay alive

生きる、生き続けるためになんでもしよう。

会議は11時半ごろに終わったが、先にいつもの先輩には現場に行ってもらっているのもあり、そのまますぐに現場に直行する気にはなれない。どこかで昼飯でも食べて行くか、どうしようか、と考えながら、一旦青山ブックセンターに立ち寄る。なにしろ、最近は通勤時間が長いので、日々の疲労や睡眠不足が蓄積していたとしても、10分でも、15分でも、電車の中で本を読みたい。何か新しい本を読みたいなと思っていた。取材が終わって、編集も終わって、お金に余裕があったら買って読みたい分厚い本が何冊かある。枕になりそうな本。いろいろ余裕が出てくるのは4月の終わりか5月くらいだから、どこかに旅行でも行って、そこの旅館で読書だけして過ごしてみたい。そんなことを考えながら、店内を歩く。100分de名著で取り上げられているローティの著作が気になっていたので、NHK出版の番組本を手に取って、文庫新刊で出されていた、斎藤真理子さん翻訳、チョン・イヒョンの短編集『優しい暴力の時代』も、タイトルに惹かれて手にした。そろそろ会計をするかと思い、歩いていると、ばったり大学の頃の友だちに会った。去年の5月ぶりだったので、しばらく立ち話して、4月に共通の友人たちとするお花見がある、と誘われたりして、別れた。朝から表参道で撮影の仕事があったらしい。

買った本を鞄に入れた本用の袋にしまいながら青山通りの歩道を歩く。そうだ、昼飯はどうしよう。最近頑張っているから、経費でたけえメシでも食ってやるか、などと思う。おしゃれな1500円以上するランチボックスを買って、ふたたび会社に戻り、デスクに座って、ラジオを聴きながらガツガツ食べた。おしゃれなランチボックスには到底似合わない風景だっただろう。それにしても、たけえランチボックスが、たったの1500円だなんて、夢がない話だ。

先輩に、今から向かいます、とLINEを入れて電車に乗る。乗った電車は空いていたので、席に座り、本を途中まで読んで、眠くなってきたので少し寝た。今日は少し早く帰れるかな、と心の片隅で願いながら、現場に行った。

結局、取材相手との議論や、安全対策の話、インタビューなどをしているうちに、取材を終えたのは22時を超えていた。足と体全身の疲労感でいっぱいだった。先輩と、半分愚痴のようなことを言い合いながら建物を出る。電車が来るまで時間があったので、コンビニに寄り、思考できない時にいつも買う、赤飯おこわとサーモン寿司にぎりを購入。それから、疲労感軽減とか、集中力の低下をなんとか、とか、たくさんのことばでパッケージが埋め尽くされたラムネを2種類買った。効能を意味する概念で埋め尽くされたパッケージがあまりにも滑稽で、写真を撮ってインスタグラムのストーリーズに乗せると、友だちからDMが来た。メッセージのやり取りの流れで、「疲労感軽減」とデカデカと書かれたキレートレモンを、元気になれるとお勧めされた。家の最寄駅にあるコンビニで買って、すぐに開けて一気に飲むと、「疲労感軽減」の概念が強めの炭酸とクエン酸っぽい酸味を伴って喉を流れていった。ほとんど、祈りだ。


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