【12日目】ウルグアイ牧場滞在記2019
DAY 12 2019/09/06 (金曜日)
6時起床。
ミゲルは風邪で寝込んでいる。
今日は朝食後、ニコラスに牛の乳しぼりを教えてもらった。
裏庭には搾乳用に4組の親子がいる。
まずは母牛の後ろ足を紐で縛り、暴れないように固定する。
次に、子牛に4つの乳首をそれぞれ吸わせていく。
その後、子牛を引き離し、搾乳を開始する。
(後ろ脚を縛る)
(4つの乳首を子牛にちょっとずつ吸わせる)
ニコラスは慣れた手つきで見本を見せてくれる。
初めは力加減がわからず、ちょろちょろとしか出なかった乳も、
10分もやればコツがつかめてくる。
ある程度絞ると、次の牛を搾乳する。
バケツには、すでにいっぱいの牛乳が溜まっている。
それが終わると、アルバロ、イネスと共に、
トラックでパドックの見回りに出かける。
イネスが入れてくれるマテを受け取り、飲んでカップを戻すたびに
「ありがとう」と言っていたら、マテ文化のありがとうは、
「もういらない」という意味だと教えてくれた。
激しく揺れるトラックで、よくマテのお湯を入れられるなあと
後部座席から感心して見ていると、イネスは手すりにすら捕まっていない。
あれっ?と思い観察していると、おそらく骨盤で車の揺れを吸収している。
ああ、乗馬と一緒なのかと思い、意識してみると、
たしかに手すりに捕まらなくても体が浮いたりしない。
今まで体を硬直させ、手すりに必死につかまっていたのが嘘のようだ。
この後は、どんなデコボコ道でも車酔いしなくなった。
車の中で動物たちの妊娠期間について教えてもらった。
一番長いのが、馬で12か月。
次が、牛の9か月。
続いて、羊が5か月。
豚は、5週間と5日と5時間、とのこと。
(すべて5なので、5holas(5時間)と呼ぶらしい)
豚は一度に生む子供の数も多い。
好き嫌いなく何でも食べるので、雑飯処理役となっている。
愛嬌はないが、食肉用に飼育する動物としてはとても優れている。
また、ウルグアイではクリスマスに豚を食べるのが一般的だという。
動物から取れる油も、豚のものが最良だと教えてくれた。
車で入れない場所は歩きながら見回りを行う。
(米を栽培していた土地。なだらかに見えても高低差があるため、段々畑のように細かく畝を立ててある)
地面は場所によって、スキー場の上級コースのようなコブがある。
タクルセスという自然の地形で、地面は1M 程度と深く、
夏場でも水分が蒸発しにくいため、土壌としては最も好ましいという。
平らで固い地面は水分の蒸発が早く、夏場の植物が育ちにくくなるとのこと。
(背丈の高い草と低い草が入り混じった土地)
ある地点の草は、背丈の高い草と低い草が入り混じっている。
背丈の低い草は量が少なく、背丈の高い草は量が多い。
羊は地面スレスレに生える草も食べることが出来るため、こうした土地に羊を入れると、
根っこを引き抜いてしまうという。
しっかりとした根っこが張るまでは、この土地には牛を入れる。
牛は5㎝以上の背丈がないと草を食べることが出来ないためだ。
背丈の小さい草が増えてきたら、羊を移動させる。
一回りして、10時頃にはベースに戻る。
ベース内を歩いていると、4頭の羊が横になっている。
近づいても逃げる力が無い。
また、皮干し場には新たに剥ぎ取られた牛2頭分の皮が干されるのを待っている。
豚小屋は、2日前に大人2頭が屠畜されたため、
先週のようなにぎやかさはなく、しんとしている。
予報では明日から4日間雨が降り続く。
少し寒々しい空気が流れている。
(死んだ子羊。まだへその緒がついている)
生まれたばかりの子羊は警戒心がないため、人が近づいても逃げたりはしない。
そして親からはぐれてしまった子羊はほぼ死んでしまう。
9月は誕生の季節であると同時に、死の季節でもある。
雨や風が強い日に子供が生まれると、生存率が下がる。
生まれたばかりの子羊は、少しの風でもプルプルと震えて寒そうにしている。
次の出産ラッシュは、月曜日の予定だ。
4日間降り続く雨の前に子供が生まれると生存率が下がってしまうため、
雨が先に降ってくれた方がありがたいと、アルバロは言っていた。
羊の出生後の生存率は良い年で80%。悪い年で50%。
だいたい70%程度が平均になるという。(双子も5〜10%生まれるので、減少率は異なる)
一方、牛は97%程度が生存するという。
(昼食)
午後からは、バイクに乗って羊たちの移動を手伝うことに。
明日からの雨予報のため、水没しやすいパドックでは羊たちが死んでしまう。
(アベル、ヘスースは馬で。僕はバイクで)
(この距離でも決め顔のアベル。もうネタになっている)
到着すると、生まれたばかりの子羊が沢山いる。
1頭でもグループからはぐれないよう
かなりスピードを落として移動させていく。
(歩けなくなった子羊をヘスースが馬に乗せている)
どうしても付いていけず、グループから遅れる子羊は馬やバイクに乗せて運んでいく。
母羊は、隙を伺ってはバイクの目の前にいる子羊たちの元に戻ってくる。
普段は人間に5Mも近づかない羊たちなので、
必死に我が子を守ろうとしていることがわかる。
子羊たちも何が何だかわからずに、馬に向かって歩き出したり、
立ち止まって動かなくなったり、かなりの大混乱だ。
ガウチョたちは声を上げたり、葉っぱのついた枝などで進め進めとせっついている。
子供を含めた群れの移動はとても大変だ。
大人の羊だけならばすんなりと行くものが、何倍もの時間がかかる。
僕もバイクのひざ元に子羊を拾い上げ、
落とさないようにかなり慎重に運転する。
3時間程かけて、3㎞程離れたパドックに群れを移動させた。
生まれた直後の子羊にとっては大変な移動距離だ。
家に戻るとイネスを乗せてアルバロ、ミゲルがサルトへ帰るため車に乗り込んでいる。
イネスにお別れを告げる。
ここへきてもう2週間が経とうとしていることに驚いている。全てが真新しく、たった1日の出来事のように感じられる。
(死んだ羊の皮を剥いでいるニコ)
まだ明るいので釣りに出かけることに。
豚小屋にある牛の肉をニコに頼んで切ってもらう。
牛肉のぶつ切りに、5㎝大の錆びた釣り針。
ロープのような太い糸を振り回し、10mくらい先に投げ入れる。
この道具ではさすがに釣れる気がしない。
1時間近く試したものの、釣果ゼロで帰宅。
夕食時にショセリンに釣りの話をしていると、
奥から釣り道具箱を持ってきてくれた。
新品の小型の針や、細くて透明なナイロン糸が入っている。
ミゲルに頼んで買ってきてもらおうと思っていたものが全て揃っている!
先に夕食を済ませ、簡単な仕掛けというか、
針に糸とおもりを付けたものを準備する。
明日、雨が降らなければ再度釣りに行こう。
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