【5日目】ウルグアイ牧場滞在記2019
DAY 5 2019/08/29(金曜日)
朝4時頃、体当たりでドアを開けライザが部屋に入って来る。
雷の点滅と大きな音におびえ、部屋をうろうろしている。
牧場の雷はどんなだろう?
と僕は少し前から起きていた。
だから、真っ暗な部屋のドアが突然開いて、犬が入ってきたことが何よりも怖かった。
昨日から続いていた生暖かい風が、今日は雨と雷を運んできた。
(いつもとは違う色の空の下で、ミゲルとウゴーが打ち合わせをしている)
雨が降る前に見回りに行くという。
(まだ立ち上がらない子供を見守る母親)
(生まれたばかりの双子と母親)
(まだ眠っている羊の群れ)
羊たちの群れは7時を過ぎてもまだ眠っている。
睡眠時間の短い彼らのこうした光景を見るのは珍しいとのこと。
地面の状態を確認しに行く途中で、柵から逃げ出した20頭前後の牛たちを発見する。携帯で連絡を取り、ウゴーに状況を伝える。
これまでに十分な雨が降っているため、これ以上必要ないというが、空は暗く今にも降り出しそうだ。
昨日までの30度近い気温は、10度まで下がっている。
地面は思ったほど濡れておらず、草の成長も順調なため、来週は動物たちを移動させるという。
だいたい5日くらいの周期で移動させ、食料が不足しないように気を配っている。
(柵にひっかかったビニール袋)
途中、ビニール袋やペットボトルを拾う。
動物たちの毒になるため、見つけたら回収していく。
8時半頃には雷と共に雨が降り出し、次第に強くなっていく。
こうなっては仕事にならない。
動物たちを移動させることは不可能になり、外仕事もできない。
停電しているため、ミゲルはキャンドルで読書をしている。
(家から見える羊。雨が強くなるとじっとしている)
(小雨になるとまた食べ始める)
外は雨が降ったり、止んだかと思えば雷が鳴ったりしている。
雨は降り続きそうなので、今日は仕事しないとのこと。
今年は降雨量が多かったため、脚に病気をかかえ、
びっこを引いている羊が多い。
足をくじいたような歩き方で、見るからに痛そうだ。
病気の羊たちは小屋に戻し、爪を切って、必要があれば注射を打ち、
消毒液の入ったプールに脚を10分間浸ける。
それで殺菌し、再度牧場に開放する。
牧場を歩いてみると、ぬかるんだ地面は、
牛や馬・羊の糞が混ざってぐちゃぐちゃになっている。
まだ涼しい季節だからか、もしくは草しか食べないからか、悪臭はほとんどない。
それでも肥溜めのようなぬかるみを素足で歩けば
人間も病気にかかるだろう。
靴を履かない動物たちにとって、薬は必要なものだ。
薬を使わない = オーガニックにするということは、
動物たちの生存率を下げることに繋がる。
生きていても脚を引きずりながら、
一生痛い思いをして生きていく羊たちのことを考えれば、
オーガニックであることと、羊の幸せはトレードオフ(どちらかを取ればどちらかを失う)の関係になる。
僕自身、なるべく地球に負荷をかけない生活を望んでいるが、
オーガニック至上主義のような考え方をしていると、誰かの幸せを犠牲にしてしまうのかもしれない。
(昼食。ギソデアロース、羊肉と米の煮込み)
(マーティン・フィエロという人の名前がついたデザート。チーズにジャムを乗せたもの)
16時頃ミゲルは犬のライザと一緒にサルトに帰って行った。
毎週末サルトにある自宅へと戻り、1週間分の食材などを買い込んで、月曜日か火曜日に戻ってくる。
気を使ってくれ、街に戻らなくていいのか?何か買ってくるものはないか?
と何度も聞いてくれていたが、正直、牧場の何もない生活が満ち足りていて、
欲しいものは思いつかなかった。
初めは持ち歩いていた財布も、
そもそもお金を使う場所がないので、すぐに鞄の奥に仕舞い込んだ。
インターネットもほとんど電波がないので、今のところは繋げていない。
(マッシュポテトに羊肉が入っていて、上にはチーズがかかっている)
(揚げパン。ジャムを付けて食べる)
夕食の途中でまた停電。
一人キャンドルの灯りでご飯を食べるのもなかなかおつなもんだ。
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