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十三人の合議制_05 千葉純胤の時空移動

某日の下総にある千葉の館。奥の間には当主である常胤が床にいて上半身起きている。その傍に師常がいた。常胤が語り始める。

「本当に純胤の言った通りになったのう。訴訟は十三名いずれかの御家人の合議を通さないとできぬことになったわ」

常胤はそれはそうとと言いながら話を続けた。

「頼家様の政を十三名の御家人が支える。これで安定した世が続くと思うか」

師常は問いに返した。

「この体制はそれぞれの想いの妥協の産物。純胤の申した通り均衡が崩れますとこの世が荒れる始まりとなりましょうぞ」

「そうよのう。では純胤を呼んでこれからを聞いてみるか」

「父上、お待ちくだされ。そうやすやすと純胤を呼んでばかりでは。今後の算段は我らで検討すべきです」

常胤はそれはそうよのうと答えた。常胤と師常としては結局のところ、この体制は比企家と北条家がそれぞれ縁者として頼家へ影響力を誇示したいとなった折に三浦家が混じる事で合議の形を保っているのであろうとまとまった。

「こうなってくると儂としては十三名に入らなかったあの御方の動向が気になるわ。儂自身はこんな針のむしろに座るようなことはしたくないので入らなくて清々しているがな」

「父上、『あの御方』といいますと、武田信光殿でしょうか」

「そうよ。宿老として名を挙げれば先ずは一番とも言える。そもそも信光殿はあの頼朝様と相並んでいた源信義様の嫡男。時の流れが少し違えば頼朝様や頼家様になっていたかもしれぬ御方」

「信光殿は十三名に入ってしまいますと格が違いすぎ合議になりませぬ。それこそ頼家様との間に一波乱起こりかねません」

「すると敢えて距離を置いたのかもしれぬの」

常胤と師常はしばし言葉を交わし続け、師常は日が落ちる前には出立しますと千葉の館を後にした。





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