鬼出電入のアメアラシ②【創作大賞2024 漫画原作部門】
=土御門家の朝食=
リビングのテーブルに2人が対で座っている。
土御門新と姉である土御門楓(つちみかどかえで)である。
二人ともそれぞれの学校の制服に着替えていた。
テーブルの前には朝食があった。当たり障りのない、トーストと牛乳が入ったコップがそれぞれ置いてある。
二人はそれぞれ口にしていた。
「ねえ。アラタ」
不意に楓が弟である新へ声がけた。新はなんだよお姉ちゃんと返した。
「あんた、今日はまだなの?」
新はこくりと頷いた。
まだとは能力発動のコトである。
一日一回超能力が発動するというコトは、まだなければ今日も必ず一回発動してしまうというコトでもあった。
楓はため息をついて話を続けた。
「そうよねぇ。困るわよね。とっとと出てほしいんですけど」
新は仕方ないじゃんと突っ込むも楓はギっと新を睨んだ。
「アンタの能力はいいでしょう。気づかずさりげなくこなせるんだから」
「お姉ちゃん、そんな事無いよ。瞬間移動だよ。不自然でしょ。お姉ちゃんの能力の方が無難じゃん」
楓の能力は筋力増強。瞬時に四肢全身の筋力が驚異的に上がる。突然であることなどは新と一緒だ。
「あんたはちょっとの移動なら目の錯覚とか誤魔化せるでしょ。私はそうはいかないのよ」
超能力とは気づかれにくいが、楓の筋力増強はよく破壊を伴うので目立つは目立つ。
彼女自身、常日頃より筋力はコントロールして不測の事態に備えているが、やはり不意を突かれると騒動を巻き起こすこともよくある。
「私達みたいな能力じゃなくて、ケンちゃんみたいのだと救われてるんでしょうね」
ケンちゃんとは関西の方にいる親戚の男の子だ。
ケンちゃんの超能力はテレパシーだ。相手の心が読めてしまう。
土御門家は時々、新や楓のように超能力を持って生まれてくる子がいる。
新や楓の様に兄弟二人ともというのは稀ではあるが。
「ケンちゃんは人が考えていることが読めるだけでしょ。周りも超能力って気づかないじゃない」
「そうだけど、満員電車とか人がいっぱいいるところで発動すると一挙に頭に入ってくるから頭痛いって言ってたよ。1人しかいないときは露骨に分かっちゃうから気まずいらしいし」
楓はそれはそれで難儀よねと呟いた。