高校生が議員になれちゃう世界線①【創作大賞2024 漫画原作部門】
あらすじ
日本は国際比較に於ける影響力停滞から脱却するために抜本的に総力体制へ移行する必要があり、国家戦略特別区域をかなり大幅解釈して大胆な経済活性と市民の政治参画へ誘因したいと考えた。
試行錯誤の末、市民がより自治体の議決機関である議会へ参加しやすくする為として、選挙権を有する有権者のルールを限定・時限付きで変更することに至った。
ルールのひとつに
「十八歳から立候補出来、いまの立場である就業や学業等は引き続き継続して構わない」
が加わった。
房総市に住む高校生『千葉ハジメ』が挑む、政策・社会事業ストーリー。
キャラクター:
千葉ハジメ│主人公
高校3年。18歳。
クラスメートの園崎カンナの勧めにより、房総市での社会課題へ解決する為、議員を目指すことを決意する。
園崎カンナ
高校3年。17歳。
政治・社会課題にかなり関心度大。
本当は自分が議員へ挑戦したいが、17歳なので出来ず。
自分の想いを千葉ハジメに託す(押し付ける)
神垣
房総市長。
房総市での斬新な取り組みを仕掛けてきた。
第1話
202■年に世界中が混乱に陥り、収束し始めた後の世界常識は変わり始めていた。
当たり前の様にあった旅行やビジネスでの人の行き来は以前より減り、リモートワークは日常になっていた。
グローバル化が進む一方で地域ごとのローカライゼーションも進むという人類史上新しい世界が訪れようとしていた。
世界と比べ日本の再スタートはやや出遅れ、情勢を巻き返すために大胆な改革が求められていた。
その中の一つとして、国家戦略特別区域をかなり大幅解釈して市民も巻き込んだ政治・経済参画へ誘因し、モデルエリアを決めて新しい地域行政の創生を模索することとなる。
正に総力戦であるも、肝心の地域と市民を共にどのように活性化させるかが胆であった。
試行錯誤の末、市民がより自治体の議決機関である議会へ参加しやすくする為として、選挙権を有する有権者のルールを限定・時限付きで変更することに至った。
要は地域行政の担う議員のルールをモデルエリアを決めて実行することにしたのだ。
モデルエリアとして選ばれたのが房総市。
房総半島一帯に広がり首都圏の一旦を担う房総県の県庁所在地市である。
議員のルールは以下の様に決めた。
・従来の議員選出方法と新選出方法で選出人員を半分ずつに分ける
・従来の選出議員を「専業議員」とし、新選出議員を「兼業議員」とする
・専業議員は前回までと変更点はない
・兼業議員は十八歳から立候補出来、いまの立場である就業や学業等は引き続き継続して構わない
・兼業議員は議決に加わる資格など専業議員と同等の資格を持つ
・兼業の報酬は月額の給与はなく、議決など携わった分に関して設定報酬とする
というニュースを房総市の学校に通う千葉ハジメはスマホでみた。
要は市民生活をしながら議員が出来る枠を設けたということらしい。
まだ具体的な選出方法などは調整中の様だ。
房総市で行われる事は決定したらしく、追加情報で具体的な次回の房総市議会員選挙の予定時期も出ていた。
『202x年』
ちょうど俺十八歳じゃん…
千葉ハジメはスマホ片手に歩きながら呟いた。
ーそれから2年ー
千葉ハジメは十八歳の高校3年生になった。
202■年に世界同時で発生したパンデミックからだいぶ落ち着きを取り戻すも、かっての世界とは様変わりしていた。
ー新しい世界へ向けて地方行政を大きく切り替えようー
日本政府がその舞台として選定した房総市に千葉ハジメは暮らしている。
なにをどう大きく切り替えるのか。
要は市民一丸となって政治参加出来るように
・十八歳以上で議員になれます
・専業でなく副業的になれます
この2点を定めた。
そして運命の第1回選挙は今年で、千葉ハジメはちょうど立候補出来る歳でもあった。
選挙日まであと3か月と迫ってきたからなのか、ニュースサイトとかではちょいちょい目にするようになった。
とはいえ、一介の高校生である千葉ハジメのとって、ふぅ~んという程度の関心事でしかない。
今日もいつもと変わらない日常として学校へと出かけ、着席して授業の準備をしていた最中、
「ハジメちゃんはどうするの?」
と後ろから呼びかけられた。
同じクラスの園崎カンナだった。
彼女とは小学校から同じ学校で腐れ縁と云えよう。
どうするってなにをと聞き返したら、園崎カンナは自分のスマホを千葉ハジメへ突きつけ、右手人差し指で選挙記事の画面を指しながら詰め寄った。
「これよ。これ。ハジメちゃんは十八歳でしょ。出るの?」
千葉ハジメはまたかよと思った。
園崎カンナは本当は自分が立候補したいらしい。
しかし彼女はギリギリ17歳というお年頃である。
規定年齢に達するにはあと数か月生まれが遅かった。それはご愁傷さんとしか云いようがない。
自分は出れないけど、千葉ハジメを通じて間接的にやりたいらしい。
巻き込まれようとしている身にもなってほしいものだ。
何度も断っている事ではあるが、そんなことはお構いなしにタイムリープの如く、挨拶の様にぶっこんでくる。
いつものようにNG返答をしようと思った最中、千葉ハジメにはつい昨日逢った祖母ちゃんの会話が過った。
祖母ちゃんは房総市にある亥鼻城近くで団子屋を営んでいた。
昔は城への観光客とかでそこそこにぎわっていた団子屋である。
家が近いからしょっちゅう顔出しに行っていた。
いつも笑顔の祖母ちゃんで、表情は変わらないけど、小さい声で呟いた。
「すっかりお客さんが来なくなってね。そろそろ終い時かもね」
ーこのままでは終わっちゃうー
千葉ハジメの脳裏には微かな寂しさの余韻が続いていた。
ほんの過ぎゆく記憶が千葉ハジメを後押ししたのかもしれない。
「カンナ、出るって言ったらどうする?」
2話
3話