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千葉篤胤の転生記_06~治承・寿永の乱
大海原にポツンと小さな帆船が西へとゆるりと進んでいる。船内には船を舵している船員数名と胤盛と胤通という面子である。
帆船の後ろのほうは小屋のような部屋があり、そこに胤盛と胤通がいた。胤盛は胤通に語る。
「日胤は伊豆に向かっているようですね。恐らく私たちのほうが少し後に伊豆に着きそうです」
「ちなみに今は胤通と篤胤なのですか。それとも篤胤だけ?はたまた胤通だけ?」
胤通は答えた。
「いまは胤通だけだよ。この目の色で他の人でも分かるようだね」
胤通の眼は両目とも白かった。胤通が胤盛に目の色の説明をした。目が両方とも不普通に白いと胤通だけで篤胤は意識下にはいない。片目が真っ赤になると胤通と篤胤の意識が共有して2人いる状態。両目が真っ赤になると胤通はおらず篤胤だけの意識状態となる。篤胤と胤通はこの真っ赤の目を「朱の眼」と呼んでいた。
「胤通。あなたは中にもう一人いる事に怖くはないのですか」
「はじめはびっくりしたけど慣れたよ。篤胤はいい奴だし」
「ふぅん。篤胤は普段なに話してくれるの」
「色々未来の事とか。よくわからないことがおおいけど。篤胤からもこの世の事とか聞いてくるから教えてあげたりしてるよ」
「あなた自身は頼朝様の挙兵話はどう思ってるの?」
「未来人の篤胤がそういうんだからきっとするんだろうなと思ってる。いつどうするかは分からないけど」
「そうですか。でも胤通。私は未来は絶えず分岐していくものと思うの。篤胤がいう『常胤と息子達は源頼朝と共に挙兵して~』という語り草も、仮にいま父上が急死でもしたらそんな世界はないの。篤胤がいた世界は未来のひとつ。これから私たちが歩む時間が全く同じとは限らない」
「胤盛はやっぱり賢いね!僕はそんなこと篤胤と話して少しも考えなかったよ。まあそれでも篤胤がいう頼朝様と共に挙兵する未来を今は信じて歩んでいこうと思うよ」
胤盛はそうね胤通ならそう答えるわねと返した。胤盛は続けて胤通に篤胤とどう入れ替わりなどをしているか尋ねた。はじめは運で入れ替わりがあるかと思いきや、今は二人である程度意識をもって分け合えているようだ。どちらかが意識をより集中すれば全部そちらに寄るし、仮に片方が意識外にいても、起こすように呼びかければ意識下にくるらしい。
胤通は「いましてみるよ」と言いながら、胤通の眼がみるみるうちに片方の目が朱となり、瞬く間に両目とも朱に染まった。
「なんか急に胤通が呼び出したかと思えば、本人はいなくなっちゃな。胤盛、なんかあったの?」
顔は胤通のままだが、話し方は篤胤だ。そんな篤胤に胤盛はこう言った。
「なかなか面白い芸当ね。落ち着いたら旅芸人でもしてみたら。稼げるんじゃない」