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アナログバイリンガル

千葉胤盛は越中に来ていた。数日前は甲斐にいた。

故郷の下総にはほとんど居なく、各地を歩回きする日々を過ごしてる。

諸所出歩くのは、千葉一族内で胤盛の役務が偵察な故だ。

長男・次男・四男・五男はずっと拠点の下総にいて、六男・七男はこれまたずっと京にいる。

三男の胤盛だけが転々としていた。

こういう暮らしをしていると、その土地土地の住人達の話し方や素振りを身につける必要がある。

胤盛の設定を山伏や行商人として旅をすれば容易だが、なかなか溶け込めずに生きた情報を手に入れにくい。

以前、五男の胤通に「どうしてそんなに多くの国々ですんなりと暮らせるのか」と尋ねられたことがある。

多少の法則の様なものはあるか、結局のところ馴染む迄入り込むとなると、ひとつひとつ習熟していくしかない。

とは云え、いつも最初に心がけて行っている事がある。

胤盛は胤通に返した。

「先ずは笑顔で接しろ。笑みは万国共通だよ」


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