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nishiyan2460
アナログバイリンガル
千葉胤盛は越中に来ていた。数日前は甲斐にいた。
故郷の下総にはほとんど居なく、各地を歩回きする日々を過ごしてる。
諸所出歩くのは、千葉一族内で胤盛の役務が偵察な故だ。
長男・次男・四男・五男はずっと拠点の下総にいて、六男・七男はこれまたずっと京にいる。
三男の胤盛だけが転々としていた。
こういう暮らしをしていると、その土地土地の住人達の話し方や素振りを身につける必要がある。
胤盛の設定を山伏や行商人として旅をすれば容易だが、なかなか溶け込めずに生きた情報を手に入れにくい。
以前、五男の胤通に「どうしてそんなに多くの国々ですんなりと暮らせるのか」と尋ねられたことがある。
多少の法則の様なものはあるか、結局のところ馴染む迄入り込むとなると、ひとつひとつ習熟していくしかない。
とは云え、いつも最初に心がけて行っている事がある。
胤盛は胤通に返した。
「先ずは笑顔で接しろ。笑みは万国共通だよ」