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高校生が議員になれちゃう世界線③【創作大賞2024 漫画原作部門】

【ミカ】
ミカは共働き家庭である。

子どもは2人。保育園と小学校に通っている。

夫は育児に協力してくれているが、どうしても妻である自分に子供絡みの事の比重が大きく乗る。

今の世になり多少は在宅ワークの時間が夫婦ともに増えたが、やはり育児には手が足りない。

どちらの両親も健在ではあるがすぐに孫を見てくれるような距離には住んでいない。

延長保育などを利用しながら仕事とのバランスを取っているが毎日予定通りに行くわけではない。

会社の方も世情からか働き方に関してよりフレキシブルに検討はしてくれはじめてはいる点は助かっているとは云え十分ではない。

そんなある日に議員独自選出特区の記事をWEBで読んだ。

これはどうもいろいろなアイディアと実行を募っているのではとミカは直感した。

ミカはどんなサービスや施策があれば、より共働き家庭が育児に良い効果を生み出せるかを思考を巡らしてみたが、すこし考えた後に思いとどまった。

出てくるものが全て「私ならば」という自分思考なのである。

これでは育児で妻の比重が重いことからは抜け出せない。

そもそも普段からもっと夫が私の様に考えいるのか怪しい。

これは夫が育児をより自分事として捉えるにはいい機会なのではと予覚した。

ユカは今日帰ったら、議員独自選出特区をネタに夫にもっと育児へ真剣になってもらうように語り掛けることを目論むことに


【ユウジ】
ユウジは房総市の農業活性課に勤めてる市役所員だ。

いわゆる公務員である。

議員独自選出特区の事は市役所内ではだいぶ前から話はほうぼうで聞こえていた。

ユウジとしてはなんか新しい議員選出方法だなくらいしか思ってなかったが、実際に提示されて全容を知った時は驚いた。

公務員でも立候補可能というコトに。

世間では18歳から選出可能がチラチラと取り出されているが、ユウジとしてはこちらの方が気になる。自分の人生で公務員を続けながらなにかをするというのは思いもしなかったからだ。

よく通ったなと感心した。まあ公務員はある一定数房総市に住んでいるので、ここをごっそり抜けてしまうと少し片割れ感がでてしまうであろう。

とは云え、実際に公務を担っている身が兼業として議員となるのは如何なものであろうか。相当の自分自身や周りからのチェックやコントロールがないとまずいことになりかねない。

ユウジは少し眉唾的なものを感じるも、今まで行政に携わりながら「ああしたらいいんじゃないか」という想いはたくさんしてきた。上司に提案したこともある。受理されることはほぼないが。

これが議員になれたら自身の手で提案できるし、実行の可能性も高くなるというメリットもある。

しかも従来の選出はわざわざ退職しないと選挙へ立候補すらできないという片道切符であることを考えると、なにか思うことがあるなら出てみる価値は大いにある話だなとあらためてユウジは想った。


【チカ】
チカはシルバー人材系の紹介センターの事務をしている。

センターは公益社団法人であり、よく公務員と間違われるが民間企業になる。

紹介センターには働きたいシルバー年齢の方が登録や相談に来るし、シルバー人材を雇いたい企業や家庭が依頼をしてくる。

その橋渡しをしているというのが主な仕事だ。

紹介センターはシルバーの方を雇用するわけではない。企業や家庭側も雇う訳でもない。あくまでも請負・委任の契約となる。

いまどきのデキるシルバーの方は自分でPCやスマホで仕事を探しているのかセンターに来る方はそういうのにお得意でない方が中心となる。

センターに依頼が来る仕事も除草や家事、介護、軽作業などが多い。大工・植木などもあるがこれは前職経験がないと紹介は厳しい。

チカは紹介センターで働く前は60歳超えても働く人は社会との繋がりを大事にしたいとか、より充実した老後の為に働いているかと思っていたが、そうじゃない人も多いことを知った。

働かなきゃいけない人がこんなにもいるのかと。

何年か前に定年後の資金で2000万円が必要みたいな話があったが、ここにくるシルバーの方は今月をどう過ごすかという方もいる。

厚生年金分がないとか、家族や自分の負債があるとか訳アリを耳にする。

生涯働き続けなければいけなく、それから解放されるのはお亡くなりになった時という現実。

一方で、同じ働くでも一所懸命働いている人もいればそうでない人もいる。

軽作業を定期的に依頼してくる企業からも愚痴を頂くこともある。

悲しいかな行けば小遣いがもらえる感覚でボーとしていたり、しょっちゅうトイレなどに行って現場をすぐ離れる人もチラホラいるらしい。

そういった方にこちらからヒアリングして注意はするもいつも生返事だ。

外したいのはやまやまだが、そういった仕事に限ってあまり人気もなく、代替が効かない。それを見越しての態度なのであろう。

そんな折に会報誌で議員独自選出特区の記事を読んだ。

その際にチカの脳裏にふと浮かんだ。私の仕事周りはこれからの社会の縮図ではと。

なにかのニュースでみた。

日本は超高齢化が進み、これから各国が高齢化するにあたって研究が進んでいると。

そうするとチカの仕事周りはまさしく、その前線と云える。

ただただ紹介して調整しているでなく、ここにはシルバーの方々の働くことや生きていくことの気持ちが詰まっているのでは。

なにかまとめて発信していくなりトライしてみることに、なにか価値がありそうな気がしてきた。

チカはいま湯水のように湧き出る想いをノートへ書き殴りはじめた。


【タクミ】
タクミは稲社駅チカ商店街で八百屋を営んでいた。

戦後に商店街が出来てから自分で3代目となる。

親は2年前に半分リタイヤをし、ほぼタクミ中心できりもみしていた。

従業員と云えるのは親と妻しかいなく、あとはパートの皆さんに支えられている。

世間は商店街と云えばシャッター街の様なイメージをもつこともあるが、稲社はまだまだ賑わっているほうだ。

タクミの八百屋もそれなりにやれている。

稲社駅の商店街を通り、15分程歩いていくとそこには浅間神社がある。

かってはこの道は参道として栄えていたらしい。

今は亡き祖父が小さい頃にタクミに話していた。

それが戦後の復興・高度成長期を経て、車社会になり、ごみごみした通路となったようだ。

いまじゃ通勤通学時は歩く人もおおければ稲社駅へのバスの乗り入れも多く、なかなか不便で危険な参道である。

何度か道路拡張など計画はあったようだが、予算や区画整理が難航して頓挫しているようだ。

タクミ自身も子供のころから移り変わる稲社で過ごし、浅間神社の隆盛も次第に先細っている感がある。いまでは年末年始や七五三、お盆以外での盛況ぶりを感じない。

どこかでなにかをしないととはうっすらと覚える。

稲社と浅間神社は互いに栄え、互いに廃れてしまう。そういう離れられない関係であろう。

この前の青年会で議員独自選出特区の話題が出た。

大体選挙となると地域の代表で選出している議員を商店街で支えましょう的な話が出るのが常である。

今回は推しの議員は専業なのか兼業なのかどっちでいくのかという話だった。

まあ4期も勤めているので本人的には迷わず専業らしい。

ただタクミは気がかりがあった。

この制度こそ、俺たち商店街のだれかが本当の代表になってやるべきなんじゃないかと。

推しの議員も俺たちの事だけを考えて市政に参画しているわけじゃないし。

他にも俺らの様なサポートがあって選出されているなら、あくまでも俺らはこの議員にとっては何分の一かの支援者でしかない。

もっと自分たちの見解でどうしていくべきか。今一度考えなおした方がいいんじゃないか。

タクミの中には今までとは違う視点が芽生えてき始めていた。


【ヒカリ】
ヒカリは大学生をしながら或コトもしている。

YouTuberだ。

登録者数は1万人程度。YouTube自体で1万人以上の登録数は全体の数%ではあるがさほど収益がある訳ではない。

とは云え、数的にはインフルエンサーの仲間入りらしい。

ヒカリ自身は大学生活でなにかプラスなやった感が欲しくて1年半前くらいから始めていて、特に登録者数や再生数には注力を置いてなかった。

身バレはしたくないなと思いもあり、自分がどこの大学に通ってどこに住んでいるかは非公開にしている。

動画をみても首都圏在住の大学生であろうくらいしか判らない。

ただ友人などがみればヒカリだよねとは判る。

ヒカリは房総市に住んでいる。

ヒカリは大学では英文科を専攻している。ヒカリが英文科を選んだのは英語が好きだというともあるが、せっかくなら世界と繋がる仕事を将来はしたいなという漠然とした気持ちだった。

ヒカリにとって房総市のお気に入りスポットは張幕メッセ付近である。

あの30年前くらいに「近代都市はこうだ」というデザインで街を新設した巨大な創りものである

平成初期から令和を経ていい感じに味が染み出ているのが好きだ。

街自体もイベント・コンサート・野球など集客力があり、結構有名な企業もあったりする。

戦隊ものの撮影でもよく使われ、味わい深い都市である。

もっと世界に張幕が発信されればいいのに。

そんな思いからか自分の動画では張幕の露出は多めだ。

ヒカリが動画制作中に調べものをしている際にある記事が目に飛び込んできた。

議員独自選出特区の記事である。

ヒカリの中でなにかが衝動が走った。この想いはあの時と似ている。

YouTuberをしてみようと思い立ったあの時と同じだ。

#創作大賞2024 #漫画原作部門

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