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安達盛長〈転生記外伝〉

「盛長、あんた若様についておくれよ」

安達盛長は義母の比企尼から不意に頼まれた。

若様とは源義朝の子である源頼朝を指し、比企尼は頼朝の乳母をしていた。

源義朝が戦で敗れ、頼朝は伊豆に流罪となったらしい。

比企尼は頼朝を哀れと思ったのか、郷里である伊豆へ近い武蔵へ戻り、頼朝を下支えするそうだ。

妻から聞いたが、下の妹二人(比企尼の次女・三女であるが)の嫁ぎ先である河越重頼と伊東祐清も母の比企尼からの願いで頼朝に力添えするらしい。

このご時世、敗軍の将の子に助太刀するのはかなり苦難であるが、これも縁。なんとか工面して支援していこうと思い至った。

そこで比企尼と会ってなにをするか聞いた矢先があの詞だった。

要は頼朝の家人として盛長には付き添ってほしいとのことだ。

それってずっと頼朝と四六時中、伊豆にいろということか。

妻はもうその気でいた。

今更、断る術もないので頼朝へ付き添うことを盛長は観念した。

盛長は早々に妻と共に旅立ち、伊豆で頼朝と出会った。

頼朝は寡黙な面立ちだったが目は凛としていた。

行った先には河越重頼と伊東祐清もいた。

伊豆には頼朝の身の回りを世話するものは他にはほぼいなく、盛長が取り仕切ることになった。

来た当初は平家の見張りがひっきりなしにうろうろしていたが、月日も流れるとそれもいなくなった。

頼朝と過ごして数年が経ていた。

稀に頼朝を源義朝の弔い合戦と称して、頼朝を祭り上げようと近づいてくる輩はいたが都度追い返していた。

頼朝の比企尼でない乳母の一族らしい三善康信という貴族が京の事情を伝えにちょいちょい尋ねに来ていた。

世は平家がじわじわと権勢を振いはじめていた。

とはいえここは京より離れた東国の伊豆。

源氏一門を弔いながら狩りをしたりのどかに暮らす日々。

盛長は変わらない日常がこのまま続くような感覚を覚えていた。







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