鬼出電入のアメアラシ③【創作大賞2024 漫画原作部門】
授業が始まる前のクラスはガヤガヤと騒がしい。
チャイムが鳴るまでは授業ではないからそれぞれの自由である。
新は机の中をガサガサ整理していたが、後ろ席から「アラタ!」と声がかかった。
クラスメートの新田陽仁(にったはると)である。
新はおはようと返しつつ、陽仁は話し続けた。
「アラタ、昨日は凄かったよな」
新はなにが?と返しつつ、今度は横から『昨日のって、机がバタバタしたことでしょ』と女性の声がした。
新の横席に居る大内心結(おおうちみゆう)だった。
新と心結、そして陽仁は小学校から一緒だった。
幼馴染というか、腐れ縁というか。
仲は一貫して悪くなく、ワイワイガヤガヤここまできてるんだから良好な仲間と云えよう。
陽仁の云う凄かったことは、昨日新の机が授業中にちょっとガタガタしたことを指していた。
いつものように不意に能力が発動してしまい、なんとか最小限に抑えたものの、授業中というコトで少しの音でも目立ってしまったことが仇となってしまった。
「アラタ、あれはやっぱり心霊現象だよ」
陽仁には超能力は気づかれてないが、彼は心霊現象がよく新の周りで起こっていると信じている。それ自体は助かっている。
そんな陽仁に対して、心結は首を振る仕草をした。
「ハルト。心霊現象って云うけど、そんな非現実的なコトがしょっちゅう起こる訳ないでしょうに」
超能力だって世間的には十分に非現実的なんですけど。と新は心の中でツッコんだ。
陽仁と心結はしばらくじゃあアレはなんだったのかと云いあっていたが、始業のチャイムと共に何事も無かったかのようにお互いの席に着いた。
今日はまだ新の能力は発動してない。
新はせめて人が居ない時に起こってくれと今日もチャイムの鐘が流れている間、眼を瞑りながら願いを唱えていた。