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【β版】千葉篤胤の転生記_11

「災難でしたね」

篤胤はいま日胤(ニチイン)の意識内にいる。篤胤も目覚め先は慣れてきたかほぼ次は誰にかは願い通りにできるようになってきた。いままでの目覚め先を一通り日胤に伝えた結果がお悔やみ的な呟きだった。ここは八条院御所。八条院という皇族の方のお館らしい。八条院は朝廷で一番偉いといわれている後白河法皇の妹にあたる人で、ガチンコの皇室のお方と知り、篤胤は何故か緊張してきた。今日は伊豆への祈祷行などの近況を八条院へ伝えにきたそうだ。いま八条院はこの部屋から離れた奥にいて、順次人が通されている。

「日胤ではないか。頼朝はどうだった。相変わらず覇気がない様子かの」

日胤に40半ばの男性が声をかけてきた。日胤は篤胤に「あの方は源行家様です。この御所に仕えている方で頼朝様の叔父にあたる方ですよ」と教えてくれた。結構、源氏ってほうぼうにいるもんだなと篤胤は思った。行家は日胤を呼びに来たらしい。行家に連れ添って奥へ奥へと進み、部屋へ通されると真ん中に女性が一人いた。

「八条院様。お久しぶりでございます」

日胤は八条院に挨拶をして、頼朝への祈願話などをたくさんしていた。八条院は日胤の話のうんうんとうなずいて聞いていた。日胤は八条院と話しながら、篤胤にも八条院がどういう方かも意識内で語ってくれた。どうも八条院の周りには西国平氏でない各地の有力者などいろいろ集まってるそうだ。特に八条院が集めてきているのではなく、自然と集まってきたらしい。篤胤はこの齢を重ねた八条院のどんな魔力があるのかと不思議でならなかった。

「日胤、今日は来てくれてありがとう。近いうちに以仁王にも会いに行ってあげてください」

八条院は日胤との話の終わりにそういった。篤胤は日胤に以仁王ってだれと聞いてみた。後白河法皇の息子の中でただ一人親王になっていない人らしい。親王にならないと天皇になる可能性自体なく、いろいろあって八条院が母替わりとして以仁王を預かっているそうだ。不憫な御方ですと日胤はいった。また先ほどいた部屋に戻ると、胤頼(タネヨリ)が座っていた。

「兄様もここにいらしたのですが。八条院様との話は終わりました。次は兄様では」

胤頼はそうだねとそっけなく答えた。声のトーンもあのハイな感もなく小さく呟いていた。なんかすごくいつもとテンション違いすぎると篤胤は思った。そして胤頼は日胤に近づき耳元で囁いた、

「日胤、福原より平清盛様が兵を率いて上京してくる準備をしている。そのことを今日は八条院様に伝えにきた」

篤胤はえっ、平清盛が京攻めてくるの?どういうこと。歴史で学んだっけ。と思いつつ、篤胤はなぜこの人はそんなトップシークレットみたいな話を皇族に伝えに来るような人なのかちんぷんかんぶんだった。日胤が篤胤の情報キャパ超えを察知したのか、後白河法皇と平清盛が2年前にイザコザがあって不穏な関係にいまある事を教えてくれた。とはいえ日胤としてもわざわざ距離を置いていた清盛が兵を率いてまで上京するのはよっぽどのことと感じているらしい。もう胤頼はスタスタと奥へはいっていっていた。

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