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新しき世代_01 千葉純胤の時空移動
某日の下総、千葉氏館へ向かう2人の青年が向かっていた。
一人は大須賀通信。千葉六党の四子で大須賀胤信の嫡男だ。
もう一人は武石胤重。同じく千葉六党の三子で武石胤盛の嫡男である。
千葉六党とは千葉常胤を父として六兄弟を指す。この六兄弟は千葉氏を継いだ長子以外は新しき家を興していた。
大須賀通信が語る。
「今日は成胤が俺らを招集したが、胤重はなにか聞いてるか?」
成胤とは千葉六党の長子で千葉胤正の嫡男である。
武石胤重が返す。
「今日は義胤が相馬家の家督を継ぐ祝いをしたく、内々の集いと聞いてますよ。通信は聞いてないのですか」
義胤とは千葉六党の次子で相馬師常の嫡男である。
大須賀通信はそんな話だったかとトボけた。大須賀通信は語り続けた。
「俺も早く家督継ぎてぇ。オヤジ、早く隠居してくんねぇかな」
「家督を継ぐのはそれで大変な事でしょう。東家を継いだ重胤なんて当主の重責故か、いつ会っても苦笑いしてますよ」
重胤は千葉六党の六子で東胤頼の嫡男である。
大須賀通信はアイツはいつだってそんな性質だろうと返した。
そうこうしているうちに千葉本家の館に着いた。奥座敷正面に千葉胤正が座り、右横に三名がすでに座っていた。奥より相馬家の義胤、東家の重胤、そして千葉六党の五子で国分胤通の嫡男になる時通だ。
ここに千葉常胤の孫、六名が集った。この六名は従妹同士でもある。
千葉成胤から相馬義胤への家督を継いだ祝いの言葉と共に祝杯をささげた。しばらくはそれぞれの近況を語り合っていたが、千葉成胤から皆に話があると切り出した。
「頼朝様と我ら千葉一族が挙兵して今の世になり、早二十と数年。今の千葉一族の繁栄の礎には、常胤お祖父様や我ら父達、そして私だけが知っている秘中の秘としてきたことがある」
「今日はそのことを皆に伝えたく、こうして集ってもらった」
千葉成胤はそう言うや奥に祭ってある妙見様の方へ近づいていった。そして妙見様の像に向かい、念じ始めた。
その刹那、襖の奥でガタンガタンと大きな音が響いた。そして襖が勢いよくバッと開き、一人の黒装束の青年が立っていた。
「いやぁ、久しぶりです。どうもはじめましてかな。千葉純胤といいます」