千葉篤胤の転生記_25~治承・寿永の乱
義仲軍へと向かう今井兼平軍を、師常率いる範頼軍が追い続ける。
途中、今井軍は義仲軍と合流し何度か小競り合いをしては逃げるも、結局は近江の粟津あたりで義仲軍は全員討ち取られた。
義仲が討たれ、京は義経軍が治安維持の為、駐留した。範頼軍は大軍で食料不足を起こさないためにもそのまま瀬田に駐留したままだった。
ある夜、師常と篤胤は二人で河原にいた。師常が篤胤に話しかけた。
「篤胤が言う通り、源義仲様が京へ攻め入るも、頼朝様の弟である範頼様と義経様が討ちとられた」
「そうだね。それが僕の知っている歴史だから」
「これからは平家を追いに西へ西へと進んで平家を滅ぼすんだろ」
「そうだね」
「そこで終わらずに、今度は義経様と戦い、義経様と奥州の藤原氏も討ち果たすんだろ」
「そうなるね」
「篤胤がそう言うんだからきっとそうなるんだろうな」
師常は続けた
「でも、篤胤がこの時代に来て、我ら千葉一族へこれからの事を語ってくれなければきっと今の様にならなかった様な気もしてるのさ。篤胤が我らに伝えてくれたからこそ、頼朝様が挙兵したときに下総上総が一致団結して強固な軍勢として支えることも出来なかっただろうし」
「なにより我らが篤胤の言葉があったからこそ、迷わず突き進めたんじゃないと思っている」
「つい数年前は平家を倒すなんて夢にも思いつかなかったが、こうやって京まで頼朝様の軍勢が入京しているところまでこれたんだ。篤胤が言ったこれからの未来は今迄の事に比べれば特に素っ頓狂なことでもなさそうだ」
師常に言われて篤胤も同じ事を感じていた。自分が前にいた未来に学んだ歴史の一頁でしかないことは当たり前の様に頭に入れていたが、実際にこの時代に来てみるとどれも奇跡の連続で今まできた。時には1年以上もなにもなく、本当に自分が学んだ歴史通りになるのかと不安な日々を過ごしたこともある。
もうここまでくれば、頼朝が強固な鎌倉幕府を開くためにも平家を討ち、弟の義経を討ち、奥州藤原氏も討つのはこの時代に生きる人たちにも「まさか」という程の事でもなさそうだ。
そう考えると篤胤としては一息ついたと感じていた。今日は不安もなく久々にぐっすりと寝れそうだ。師常にお休みの挨拶をし、篤胤は一人床へと就いた。
あくる朝、起きてみるとずいぶん久しぶりな光景が目の前にあった。自分の部屋だった。篤胤は令和の世に戻ったと悟った。
完
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