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【β版】千葉篤胤の転生記_16

胤頼(タネヨリ)は意識内にいる篤胤に呟いた。

「篤胤、本当にこれが君の知っている未来なのか」

胤頼の呟きは続く。

「以仁王が各地の源氏に平氏を討てと令旨を出した。以仁王からすると次の天皇は自分かもという中、弟である今の天皇が僅か3歳の子に禅譲(皇位を譲る)したらもう目はないと憤慨するだろうし、その後ろにいる平氏こそ諸悪の根源と思うのは仕方ないけどね。

本来なら八条院様のところから粛々と各地の源氏に回るも、そうそうに漏れてしまった。早すぎて各地の源氏も準備が整わないよ。ここで平氏側が以仁王を捕らえ土佐へ流される事まで決まっていた。本来ならこれで失敗と一度終わるはずだった。

けど以仁王は園城寺へと逃げおおせた。そこからだよ。僕が解せないのは。以仁王が園城寺にいる間に源頼政様が以仁王に合流した。源頼政様だけじゃない。日胤(ニチイン)まで駆けつけてしまった。以仁王を哀れんだのか以仁王に近しい者たちが園城寺へ集ってしまった。

そんなに園城寺に集まってもたかが知れている。平氏側に完全に取り囲まれる前に、以仁王以下、皆で南都(今の奈良)の興福寺へと向かった。あっちの方が守りやすいだろうからね。でも途中で皆討たれてしまった。

確かに以仁王が出した令旨はこれからも反平氏としては大義名分が立つ。以仁王自身が生きて囚われたのち取り消されることもなく、お亡くなりになったことは已む無しと思う。でも日胤が死ぬ事は必要だったかい。日胤はあのまま石清水八幡宮で以仁王を心の中で支えていればよかったのに。そんな無謀な謀に駆け付けなくてもよかったのに」

「篤胤、本当にこれが君の知っている未来なのか」

篤胤は父親からよく聞いていた「常胤と息子6人は源頼朝と共に挙兵して鎌倉の世を創り~」がなぜ7人でなく6人なのか理解できた。頼朝と挙兵した時には日胤はもうこの世を去ってしまっていたのだと。




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