千葉篤胤の転生記_02~治承・寿永の乱
篤胤がある朝起きたら見慣れないただ広い部屋に寝そべっていた。自分の体は布団の中。目の前には人がいて、去年ぽっくり死んだ篤胤のじいちゃんにそっくりだった。
じいちゃんそっくりの人は篤胤を「タネミチ」と呼び、自分の事を「ツネタネ」という。落馬して運ばれたらしい。なんか話がチグハグしているが、篤胤は会話を重ねているうちにこれは過去に来てしまったとわかった。
どうやら篤胤は千葉常胤の息子達の中の5番目、胤通に転生したようだ。目の前にいるのは父親にあたる常胤。篤胤としてはこの時代に転生した以上、現状を受け入れると決めたが、常胤は頭が整理できず、胤道の中に800年も未来の子孫がいることに納得するまで時間がかかった。
結局、もう元の胤通でない事は受け入れたが、このことは今は秘めてほしいとのことだった。もしかしたらまだ気が触れているくらいに思っているのかもしれない。
篤胤はなんとか歴史の授業とネットで調べた時の知識を辿りながら常胤に質問をしていくつかの事がわかった。
今はまだ源頼朝が挙兵はしてないこと
源氏が平氏と戦ってほぼ勢力として壊滅したのは20年も前ということ
今は平清盛を筆頭に平氏の世であること
篤胤は「時期的にはそろそろ頼朝が挙兵する頃合い」だと推測した。篤胤は常胤に語る。
「ところでご先祖様。源頼朝と共に挙兵して平氏を倒すことになっていますが、そういう準備はもう動いてます?」
そういわれて常胤はきょとんとしてしまった。篤胤からすると「頼朝が雌伏を重ね時機到来と挙兵するんでしょ」「それを千葉一族が裏から支えているんでしょ」となかなか壮大な想像をしていたが、目の前にいる常胤は全く思いもよらなかったという顔をしている。常胤は篤胤に聞き返した。
「われ等、千葉一族が頼朝様と挙兵?」
「そうです。歴史はそうなってます」
「どうやって?」
「この下総で」
「頼朝様はずっと伊豆に囚われているのに?」
「脱出して下総に来ます」
「どこにそんな兵力が?」
「それは知りません」
「そもそもなんで頼朝様が挙兵など。。相手はもしかして平清盛様か」
「そうですよ。20年前、源氏は平氏にやられたんでしょう?その仕返しなんじゃないでしょうか」
問答はしてみるも常胤は頭を抱え込んでしまい、あまりにも荷が重いと感じてしまったのかしばらく黙り込んでしまった。