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【獣害対策・ジビエ関連Techカオスマップ】
近年、罠の監視センサーに代表されるような獣害対策やジビエ利活用にフォーカスしたテクノロジー系サービスが急速に増えています。とはいえ、現在どんなサービスがあるのか体系的に整理したものがなかったので作ってみました。
各サービスは、獣害対策やジビエ利活用のプロセス「個体数把握⇒防除⇒捕獲⇒加工⇒流通」の他、関連する行政関連の事務手続きや分析に資する「データ利活用」を軸にまとめています。なんでもIoTだといって試してみるのもよいですが、せっかくなら各地域の事情に合わせて必要なサービスを取捨選択する際の参考にしていただければ幸いです。
※うちもそうですがサービスロゴがあるところは少なく企業ロゴで代替しているのはご容赦ください。また転載する時には一言連絡をお願いします。
1. 個体数把握関連サービス
どこにどれだけのシカ・イノシシがいるか把握するためのサービス。把握するための技術によって分けられます。最近は赤外線やカメラ搭載のドローンを使った実証のニュースなどをよく見かけます。
a. カメラ
屋外に設置したカメラが鳥獣の接近を感知して自動でその姿を撮影し、撮影した画像を元に、どの獣種が畑を荒らしているかなど出没状況や侵入経路を分析できます。独立記録型の安価なカメラと携帯回線などを用いてWebと連携した高機能なものがあります。
・ハイクカム/ハイク社
・GISupply社
・阪神交易社
b. ドローン
赤外線カメラやズームカメラを搭載したドローンで、藪などに隠れた鳥獣の様子や頭数などを捕捉。広範囲の地域で生息するイノシシやシカの実態や夜間の活動を調査できます。他の資材も扱う鳥獣対策専門業者の他、ドローンを使った調査、測量、点検など幅広く展開するドローン事業者が提供しています。
・スカイシーカー社
・スカイリンク社
・地域環境計画社
・TEAD社
c. タグ
鳥獣の首や耳に取り付けられた電波発信機(タグ)を基に、生息域、移動ルート、休息地の調査、追い払い後の行動変化を把握できます。調査対象に合わせて首輪やイヤータグなどを使い分けます。
・ANIMAL MAP/サーキットデザイン社
2. 防除関連サービス
田畑にやってくる鳥獣を中に入れさせない、追い払うためのサービス。一時話題になった○ンスターウ○フもこれらの一つです。
a. 電柵監視
インターネットに接続可能な電圧計を通じて、電柵の電圧(漏電)をスマホで確認。破損や雑草・下草が絡むことによる漏電が家にいながらわかります。
・エフモスJr./協和テクノ社
b. 威嚇
近寄ってきた鳥獣を検知し、光や音で威嚇する獣除け装置。光や音以外にも、オオカミを模した装置や自走ロボットなどがあります。
・鳥獣撃退器AR171/ワイズトレーディング社
・鳥獣被害対策ロボット”HAPPY"/シマノ社
・逃げまるくん/小野精工社
・モンスターウルフ/太田精器社
c. ドローン追払
音響装置やサーチライトを搭載したドローンによる鳥獣の追い払い。自動飛行による定期的な見回りの他、鳥獣の出現に合わせ手動で追い払うこともできます。ドローンによる追払サービスや、ドローン販売と操縦技術取得のための講習を提供する企業などがあります。
・アタックドローン/きっちんらぼ社
・イームズロボティクス社
・エアリアルワークス社
3. 捕獲関連サービス
捕獲に伴う見回りの効率化・負荷低減、狙った個体の捕獲を支援するサービス。いわゆる獣害対策IoTというとだいたい、ここに挙げたものをイメージされることが多い。今まさに群雄割拠ですが、3年後にどんだけ残っているのか、、、苦笑。
a. 捕獲通知センサー
センサーを通じて罠の作動を検知し、捕獲者にメール等で通知。作動を検知した罠からの優先的な見回り、事前にとめさしの準備をして見回りに行くことで捕獲活動の負担を軽減します。通知機能に絞ったシンプルなものや、GPSを搭載し捕獲情報(日時・場所・個体情報)をアプリケーションで記録できるものなど、いろいろあります。ジビエのトレーサビリティとの連携や捕獲確認書の自動作成といった便利な機能を持つものもあります。
・スマートトラップ/huntech社
・オリワナシステム/フォレストシー社
・ほかパト/アイエスイー社
・わなタグ/アイニックス社
・ワナの番人/マスプロ電工社
・わなベル/ジョイ・ワールド・パシフィック社
b. 捕獲通知カメラ
センサーを搭載したカメラが鳥獣の接近や罠の作動を検知し撮影。撮影した画像をメール等で通知。画像で罠の状況が確認できるため、かかっている獲物の種別・誤作動がわかるため、捕獲活動の負担を軽減します。クラウド上で画像が管理できるものもあり、一般的には「a.捕獲通知センサー」よりちょっとお高め。
・トレリンク/GISupply社
・ハイクワークス/ハイク社
・みまわローラ/NTT PC社
c. 遠隔・選択捕獲
罠に鳥獣が入ったことをセンサーがで検知し通知、監視カメラを通じてスマホで罠の状況を確認、スマホからそのまま遠隔操作で捕獲できます。罠に入った個体数や成獣/幼獣の区別を基に自動で捕獲することも可能です。
・ロボットまるみえホカクン/アイエスイー社
・WebAIゲートかぞえもんAir/一成社
4. 加工関連サービス
ジビエの加工処理施設向けのサービス。安心・安全なジビエの流通支援をサポートするトレーサビリティをベースに、在庫管理やHACCP対応支援といったサービスが展開されています。
a. トレーサビリティ + 在庫管理
ジビエとして利活用する個体の捕獲・加工情報を記録し、QR コード等を通じて飲食店・消費者へ情報提供を行います。処理したジビエをブロック別に在庫管理ができるもの、また秤と連動し重量・価格を付けたラベル作成が容易なものなどがあります。
・オウライ社
・ジビエトレース/宝塚ジビエ工房
・ジビエ商品管理システム/富士通社
b. トレーサビリティ + HACCP 支援
aに記載のものと同様のトレーサビリティ機能に加え、21年6月からジビエ加工施設にも義務化されるHACCPに対応するために必要な施設の衛生管理情報の記録・管理が可能です。HACCPでは主に「取り扱うジビエの個体情報の管理」と「施設の衛生管理情報の記録」が求められますが、これ一つでHACCPへの対応がスムーズに可能です。
・ジビエクラウド/huntech社
5. 流通関連サービス
消費者向けのサービス。狩猟・ジビエに関する情報の提供や購入できる場(EC)等、消費者がジビエに触れる機会の創出に貢献しています。
a. ジビエEC
複数のジビエを比較検討し購入できるEC サイト。国産ジビエ認証制度取得済みの施設に絞った直売EC サイトや、農水省の交付金を活用し楽天が運営するジビエEC サイトなどがあります。
・ザ ジビエ/Tsunagu社
・HELLOジビエ/楽天社
・肉道
b. 情報配信
ジビエに関する情報配信サービス。ジビエのレシピや取扱いのある飲食店の紹介といったジビエの魅力だけでなく、ジビエ体験イベントや獣害対策の事例についても配信しています。
・ジビエト/テレビ東京コミュニケーションズ社
6. データ利活用
1~5のプロセスにおいて得られるデータを活用して付加価値を生み出すサービス。目撃情報や保護区等のアナログにある情報をデータベース化し共有し価値を生み出すサービスと、収集されたデータを分析・加工するなどして価値を生み出すサービスとがあります。
a. 目撃・被害・捕獲情報共有
野生鳥獣を見かけた、自分の田畑が獣害をうけたといった時にスマホ等でその情報を記録し、地域で情報を共有するサービス。情報を共有することで効率的な被害防止等の対策が可能です。また、捕獲情報を記録し行政と連携するサービスなどもあります。
・シカ情報マップ/マップクエスト社等
・鳥獣被害情報公開アプリ/esriジャパン社
・狩ing/Pacific Spatial Solutions社
b. ハンターマップ
狩猟を行う際に確認しなければならない、休猟区、鳥獣保護区、特定猟具使用禁止区域などが確認できるアプリ。事前の行動計画策定に役立つほか、猟場の画像なども記録でき、次の出猟時の参考にもなります。現在の所、サービスエリアが限定されていますが、自作の方法もあります。
・またぎぃ/スサノオ
・hunter Map/ハンティングラボ社
・自作の方法
c. 確認書自動作成・獣害対策DX
捕獲活動従事者がスマホなどから登録した捕獲活動情報を行政と共有、また登録された情報を自治体ごとに定められている捕獲確認書等のフォーマットで出力、電子上での確認書提出等を行うサービス。これにより、リアルタイムで適正な活動状況の把握ができるほか、捕獲確認等に関わる書類作成・集計作業といった負担が軽減されます。昨今DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せてきていますが、獣害対策分野においても例外ではありません。
・ジビエクラウド/huntech社
・鳥獣害対策クラウド/富士通社
d. 画像解析
画像を機械学習させたシステムが分析し、野生鳥獣の種別、成獣/幼獣の区別、頭数などを判断するサービス。生息状況調査から捕獲支援まで幅広く活用されています。画像解析データと、その土地の地形、被害・対策情報との組み合わせなど、獣害対策支援として今後の活用が期待されます。
・シカカウンター/スカイシーカー社
・鳥獣害対策用GIS/日立社
・ICT箱罠/富士通社
e. ワナシェア
狩猟に興味関心のある人向けに、監視カメラやセンサーなどを用いた罠の共同監視、狩猟体験、SNSコミュニティなどを提供。未体験の人にとっては狩猟現場が体験できる、狩猟免許を持ち始めようとしている人の入り口として関係人口に増加に貢献しています。狩猟免許保有者へ狩猟する機会の提供や、鳥獣被害に悩む農家さんと狩猟免許保有者とをつなぐサービスも出てきています。
・ハンターバンク/小田急電鉄社
・ワナシェア/カリラボ社
・.Wanna!/WorkVision社
まとめ
改めて業界のテクノロジー系サービスをまとめてみると、プロセスごとまたプロセス横断でのデータ利活用といった観点でのサービスがこんなにでてきたんだなと感じます。とはいえ、よくよく見るとドローンの利活用や電柵監視、HACCP対応、行政向けサービス(獣害対策DX)などは提供事業者が少なかったり、まだまだ実証どまりといったことも見られます。人口減少により獣害対策・ジビエ利活用の担い手が減っている中、こういったサービスをうまく使っていっていただきたいと思います。
頑張って広く情報引っ張ってきていますが、人間ですので抜け漏れ・間違いなどあればお知らせください。できる限り更新・追記していこうと思います。ちなみに農林水産省がまとめた鳥獣被害対策に活用できる機器情報はこちら、ICT活用システム(トレーサビリティ)はこちらにありますのでよろしければご参考まで。
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