令和6年武道振興大会 決議
令和6年月刊弓道より
我が国は、明治維新以来、驚異的な勢いで国 力を増し、世界有数の経済大国となった。しか し、昨今は国際情勢が厳しさを増し、価値観の 多様化も相俟って、行動規範や善悪の基準が揺 らぎ、明るい国家、社会の将来を見通すことは 難しくなっている。
このような中にあって、武技による心身の鍛 錬を通じて人格を磨き、識見を高め、有為の人 物を育成することを目的とする武道は、旺盛な 活力と清新な気風の源泉として日本人の人格形 成に少なからざる役割を果たしてきた。
我が国伝統の武道の普及奨励は、精神を高揚 し、質実剛健の気風を育成するばかりでなく、 国家・社会の発展に寄与し、広く世界の平和と 福祉に貢献する人物を生み出すために必要不可 欠である。これは、教育基本法に示される「伝 統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我 が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、 国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」 という目的とも合致する。
よって、我々は武道のさらなる振興発展が図 要望する。 られるよう、ここに左記事項の早期実現を強く要望する。
記
一
必修化された中学校武道授業に関し、学習 指導要領に並列明記された武道全九種目が幅広く実施されるよう、外部指導者を活用 した複数種目実施のモデル事業を全国各ブ ロックで継続して行うこと。そのために必 要な措置を講ずること。
二
中学校武道授業が充実、成功するよう、施 設、用具、指導者の条件整備をより一層推進すること。
特に、指導者については、教員養成大学で 武道を必修化し、中学校教員採用試験に武道を試験科目として位置付けるとともに、 武道有段者の学生を積極採用するよう各都 道府県教育委員会に働きかけを行うこと。 さらに、充実した授業が実施できるよう優 れた外部指導者を各中学校に配置し、処遇改善を図って、指導に万全を期すること。 また、全国一万余校の中学校体育教員を対 象とした武道指導者講習会を、関係武道団 体の協力を得て、実施すること。授業に当 たっては、時間数を増やし、複数種目の実 施校拡大を図り、武道ならではの教育効果 が上がる「礼」を重視した指導を徹底する こと。これに関わる武道九種目の指導者研 修会や指導法研究、指導書作成等、関係団体の諸活動に必要な支援、助成を行うこと。
三
将来の小学校における武道授業の実施へ向 け、実践校における実践研究をより積極的 に展開し、発達段階に応じた武道九種目の 指導法研究を行い、準備を推進すること。
四
武道の国際的普及振興のため、国内外におけ る武道の国際大会や国際交流事業をより一層 推進するとともに、海外日本人学校におけ 武道授業の内容充実に向け、必要な支援、助 成を行うこと。
五
全国的な武道の普及振興をより確かなものと するため、全国都道府県立武道館協議会の活 動に対する支援と、各都道府県武道協議会の 設置促進に必要な支援を行うこと。
六
武道の源流である一千数百年の歴史を有する 古武道の保存・継承を図るため、伝統流派の 活動の成果を認め、文化財保護法に、我が国 が世界に誇る「古武道」の名称を明記し、全 国各地の古武道の文化財指定が推進されるよ
う所要の措置を講ずるとともに、文化庁長官
表彰の授与など必要な支援、助成を行うこと。
七
武道場の整備については、武道授業を含め、 国の補助制度を拡充するとともに、必要な支 援、助成を図ること。全国の武道館及び町道 場については、維持存続のため、修繕・新築 に関する助成金の支出、賃料・地代の援助、 相続税・固定資産税の減免措置を講ずること。
以上、武道議員連盟・日本武道協議会・日本武道 館三者によって共催する武道振興大会の名におい て決議する。
令和六年三月六日
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