なぜ無音で動きが合うのか
本日の話題
今日は、こちらのサイト「note」への移行記念といたしまして、2018年全日本インカレ予選の青森大学団体の映像の解説をしたいと思います。
動画が上がったことがないので、ご存知の方は少ないかと思いますが、この大会、音響のアクシデントにより楽曲が演技冒頭で止まり、2分30秒以上は無音で演技を行っております。
動画を見ていただく前に、一つだけ言いたいことがあります。
それは、「単純に新体操の魅力を伝えたいだけ」ということです。
このアクシデントは、僕のチームである青森大学側のミスであり、運営側に一切の責任はありません。
また、このアクシデントにより、選手の安全を優先するために新体操のルールを見直した方がいいのではないかという意見も多く見られました。
たくさんの物議を醸した大会ではありましたが、事の真相やルール改正についての発言をする事、そしてこの大会のことを美談にするつもりは一切ありません。
自分のチームの失態を晒すなんてと怒られる可能性もあるかもしれません。
でも、焦点はそこじゃないんです。
「曲がないのに、ここまで揃う」
「聞こえるのは選手の息遣いとフロアを蹴る音だけ」
その魅力を感じて欲しいだけです。
では、ご覧ください。(冒頭、手をあげて返事をしてるのが僕です。)
画質が良くなくてすみません…。
そもそもどうやって動きを合わせているの?
無音で動きが揃う事の解説をする前に、そもそもどうやって普段から動きを合わせているのかの話をしていきます。
新体操選手がよくこういう風にいうのを聞いたことがありませんか?
「呼吸で合わせています」
この表現の仕方、すごく抽象的ですよね。
僕の感覚でいうと、動きを合わせているのは「視界」と「呼吸」と「想像」です。
・視界
これは一番簡単ですね!
相手の動きに合わせて自分も動く。これだけです。
・呼吸
新体操の徒手体操と呼ばれる動きは、もともとラジオ体操から由来しているものなので、必ず呼吸を用いて体を動かします。
ストレッチをする時とかに、”息を吐いてください”って言われますよね?
それと同じ感じです。
(徒手体操とラジオ体操の関係についてはまた後日記事にしたいと思います)
そのため、動きの中で行われている「吸って・吐いて」を合わせることを、新体操選手は”呼吸で合わせる”と言っています。
息ぴったりという言葉は新体操のためにあるような言葉ですね!
・想像
これは、かなり表現が難しい…。
団体であれば、自分以外の5人全員が視界に入っている状況というのはかなり少ないので、全員と動きを合わせるには、誰が今どこにいて何をしているかをある程度想像しながら動く必要があります。
つまり、頭の中で競技フロアにのっている6人を想像しながら動いているわけですね。
矛盾はしていますが、
「見えないけど見る」
ということです。
これはよく”相手を感じる”という言葉に置き換えられて使われます。
なぜ無音で合うのか
先ほどまでの解説を聞いていて、感の鋭い方はもうお気づきかもしれませんが…。
「曲で合わせていない」
これが正解です。
常日頃から、人を見て合わせたり、呼吸のタイミングを自分たちの感覚の中で合わせて練習をしているので、曲がなくなっても問題ないのです。
でも、動画のなかで大きくずれているところが2つだけありましたよね。
「倒立」と「柔軟」です。
この2つだけは曲で合わせていますので、大きくズレが出ていました。
そもそも、僕の記事を読んでくださった方はわかると思うのですが、
【演技が出来上がる→それに合わせて曲を作る】
という流れが主流なので、演技の作成段階では曲を使いません。
これも一つの大きな理由かもしれません。
※まだ読んだことがない人はこちらからどうぞ↓
まとめ
正直、長年の練習で培ってきたコツが多いので、言葉で表現するのが非常に難しいです…。人によって感覚もそれぞれだと思いますし。
新体操の団体競技が持つ1番の魅力である同調性が、1番わかりやすい動画だからこそ、皆さんに見ていただきたかったのです。
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ではまた次回!
井藤 亘(いとう わたる)
・シルクドゥソレイユアーティスト(Cirque du Soleil)
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