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とんでも美人の自己救済③-細い目を愛せよ



どうもワタリノです。

家族はみんな並以上の顔なのに、
幼い頃は美人の母そっくりだったのに、
思春期に私の顔面は血への反旗を翻し、
ポストアポカリプス・フェイスへ成れ果ててしまいました。

いろんな嫌な思いをしましたが、そのあたりは過去記事をご覧ください。
諸々のトラウマを癒すために自分で自分の顔を褒める試みを始め、5日めにしてとりあえず終わりにしました。
顛末を書いておきます。

***

暇さえあれば、
「いやーワタリノちゃんはお母さんに似て目ぱっちりで可愛いわぁ」
「美人だわ〜」と脳内で唱え続けるということをやってました。2日目くらいで、なんか美人になったような気がしました。自己催眠つうのも侮れないな、ひょっとしてマジで遺伝子覚醒して平行二重の美人になれちゃうかも?とか、ほんのちょっとだけ、期待しました。

しかし3日目くらいから、

「やっぱり、目はぱっちりしてない」
「どう見ても瞼が重い」
「嘘だ、家族とは似ても似つかない」

という反論が脳内で入るようになり、やがてその文字数はセルフお世辞を凌駕していきました。

その反論においてネガティブな感情は一切湧きませんでした。事実、似てないよね。事実、目、ぱっちりしてないよね。鼻、低いよね。

ここにきて、今までにない精神状態で自分の顔を初めてちゃんと認識したのだと思います。

目に関していうと、若い頃は、アイプチなどを駆使して瞼をボロボロにしていました。

現在、まぶたはますますたるみました。私のおでこは耕したばかりの畑みたいにボコボコと盛り上がり、小さなシワがてんでばらばらに走っています。
腫れぼったい一重瞼を、細くて小さい目を、なんとかパッチリ開こうと必死なあまり、眉毛の筋肉がめちゃくちゃムキムキになり隆起している&おでこと眉間に常にギュッとチカラが入ってシワシワになるのです。

すなわち、一貫して、私は自分の目が細くて小さいなんて絶対に許せなかったのです。ぱっちりしているはずなんだから。皮と肉に埋もれているだけで、技術を磨いて眼球を露出させれば…それがダメなら、表情の作り方を変えることで、「正しい目」にできる。

違いましたね。

瞼が重くて、小さくて細いのが、私の目なのです。それが私の正解なのです。
それを無視して無理やりおっ広げようとするから瞼の皮膚は荒れ、おでこはボコボコになったのです。
造りが違うからお母さんのようには開かないよ、無理して開けても良いことないよ、と目はずっと語ってました。中学生の頃から。
気付くのが遅くてごめんな。



高校生の頃、喧嘩中に母がウッカリ口を滑らして言った、「子供の頃は可愛かったのに、なんでこんなブスになっちゃったの?」という疑問…母に言われる前から私の中で渦巻いてました。なんで?小さい頃は可愛かったのに!親は美人なのに!姉は美人なのに!なんで?どうして?なんで私だけブスになっちゃったの?
この問いは人生の節々で頭をもたげ、ときには自殺すら仄めかしてきました。

その疑問の答えが、セルフお世辞に繰り返し反論するうちに、出たのでしょう。
親も姉も全く関係ない。
親にも姉にも似てないしこれからも似ないだろう。
これが私の顔。
これが私の顔にとって正しい成長だった。
だからこの顔になった。

終わり。

なんか、青い鳥みたいな…
文字に起こすとデタラメ宗教の広告みたいな、よくある自己受容の話に終わってしまってすみません。

肩透かしを食らったような感じで、
ボンヤリしてます。
私は顔に関して母と姉との境界線を引けてなかったんだと思います。
なまじ小さい頃似ていたが故に。
幼少期から顔が変わるなんてありふれた話で、親が美人で子がブスなんてのも、またその逆も、普通にある話です。それだけのことにすぎません。それだけのことなんだけど、受け入れるのに大層時間がかかったってわけです。
美醜はともかく、私の顔はなんの間違いでも手違いでもないと気付くまでに。

***

過去記事でも度々書いてますが、私の職場は頭も顔面も偏差値の高い、選民思想バリバリの人が多く働いており、私は浮きに浮いており、顔の悪口もバリバリ言われております。

わずかなりとも人権が欲しい私は、浮腫んで瞼の重い日はダイソーのアイテープで奥二重を作って出社していました。
そうでなくても、人に話しかけられたときは、必死におでこと眉毛を吊り上げて、目を見開き、人を不快にする悪すぎる目つきを緩和しようと心がけていました。

もう全部やめると決めました。
朝、鏡を見て、おでこと眉毛の力をフッと抜きました。女性に見えません。パンパンの瞼。映画アウトレイジに出てくる極道のオジサンです。ガン飛ばしすぎ。愛嬌のかけらもない、光の入らない、ジトっとした暗い目。
でもこうすると、おでこのシワは緩和されてつるんとしているし、筋肉はラク。これが私の正しい目の開きなんだなーと実感。思ったより全然開かない。仕方ない。

さてパンパンの瞼で出社すると、急病の同僚の代わりに、上のフロアにいるめちゃくちゃ偉い人に書類持っていけと指示を受けました。私は入って一年たたない下っ端ということもあり、その層の人たちと顔を合わせたことはありませんでした。

心底嫌でした。よりによってアイテープつけるのをやめて人相が悪いのを受容した日に。選民思想の先輩方のさらに上の人たちなんて、どんなんだか、顔について何を言われるかわからんと身構えて向かいました。

しかし全くの杞憂で、
上のフロアの人たちは、やはり美男美女揃いでしたが、エレベーターから降りた私と目が合うなり、ニッコリ微笑み、丁重に挨拶をし、すばやく道案内をしてくれました。もうその時点で面食らってました。

届け先のめちゃくちゃ偉い人は、シュッとしたハンサムな中年男性でした。北大路欣也みたいな。私が入室するなり、パッ!と花が咲いたように微笑み、丁寧な挨拶に始まり、雑談をふってくれ、デスクの引き出しから洒落たクッキーを2枚取り出して休憩で食べてねと渡してくれ、どうぞこれからもよろしくお願いしますと深々とお辞儀をしてくれました。
驚くほど腰が低くて、実るほど頭を垂れる稲穂ってホントなんだわ、と恐縮するばかり。

こんな風にちゃんと人間扱いされたのは入社して初めてかもしれません。
むろん、心の中でめちゃくちゃ嘲笑っている可能性もありますが、だとしてもそれをおくびにも出さない演技力。
やっぱ上の人は違うわ…
上のフロアは天上界でした。

気が楽になりました。
私とすれ違うときに必ずキッショと小声で何か言わずにいられない先輩や、私の瞼の上のアイテープをじろじろみて可笑しそうにしていた同僚は、所詮2流3流なんだと。
気にすることないな、と。

そして私が目指すべき態度は、もちろん上の人です。
何もかも顔のせいにしてネチネチとクダ巻いてばっかりの人間が、上のフロアで働けるはずがない。今の私はドドドドド三流でしょう。このフロアのムカつく同僚たちとお似合いです。

頑張ろうと思いました。
ムカつくことがあっても常に礼儀正しく、
淡々と良い仕事して、
めちゃくちゃ目つきの悪い、
とんでもなく変な顔の、一流の人になろうと思いました。

読んでくれてありがとう。
良い1日をお過ごしください。
またね。



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