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そわんわんについて


そわんわんをご存知だろうか。
YouTuberである。

彼女を初めてみたのは成人式の動画であった。
鮮やかなサムネに惹かれて見始めて、
グッズを買うほどではないが、今でも動画が更新されると見るくらいにはファンである。

見始めた頃は、お友達系YouTuberとは自称か他称か知らないが、まさにそんな感じで、
雑然としたワンルームで、すっぴんの若い女の子が、納豆をかき混ぜて朝飯を食い、本当にどうでもよい日常の出来事を楽しそうに喋るのが、なんだかクセになってしまった。
まるで自分が彼女の部屋に遊びに行っているような錯覚を覚えた。


彼女はいつも髪を面白い色で染めていて、ジャンルに囚われず色んな服を着ていた。
メイク動画が面白かった。
一重なのだが、アイプチをしたりしなかったりして、メイクの試行錯誤をあっけらかんと公開した。出しすぎた!塗りすぎた!とはしゃぐ屈託のなさに惹かれた。

正直言って、流行りのお顔立ちではなかった(もちろん私より遥かにカワイイ)。

ただその「流行の顔ってなんなん?ウチはウチの顔なんだけど!服が好き!オシャレが好き!他に何が要る?」と、
色んなものを飛び越えてゆく勢いが眩しかった。

こういう性格の明るい子は、どのような顔立ちでもきっとみんなに愛されるのだろうな、と私は勝手に思っていたのだが、何気なくTwitterで検索すると、容姿への誹謗中傷は散見され、驚いた記憶がある。
ブスのくせにモデル気取りがうざいとかそんなんばっかりだったと思う。
彼女にもそれは届いていたであろう。
本当に外見しか見ない人っているんだなとこの世の広さを思った次第である。

そんな彼女が広告に出て、雑誌に出て、ついにはドレスを着て(本格的なファッションショーでないとはいえ)ランウェイを歩いたとき、かなりグッときた。

二十歳そこそこの普通の女の子が、人気YouTuberという肩書を武器に、容姿が売り物の世界に飛び込んでいって、中傷に負けず、そこに立った。

ポムポムプリンのクッキーを焼けなかったあの女の子が。
ちょっとドヤ顔で芸術的な寝癖を見せつけてきたあの女の子が。


おらが村から有名人が出たぞ!という
同郷人を誇りに思うようなそんな気持ち。

ただ、そのランウェイの動画についているコメントは、ほとんどが中傷で、彼女が志している世界の厳しさを改めて知った。

***

二十歳前後の万能感というものは誰にでもあり、そこをすぎると、猛スピードで飛んでいた人も、自分がどうやってそのように飛べているのか、わからなくなり、ぎこちなくなってしまうようだ。

その後のそわんわんは、そんな感じに見える。
色々苦労したのだろうか、屈託のなさは消え、お友達系だった頃、自分がカメラ前でどう振る舞っていたか、わからないようだったし、その瞬間の正直な自分を写そうとしているようだった。
自然なことだ。
いつまでも同じことはやれない。
私だって二十歳の頃のようには振る舞えない。あのテンションは二度と戻ってこない。


そわんわんはその後何回か炎上したがここでは触れない。
いまは留学している。

彼女は、おめかしが好きな普通の女の子なのだろう。最初から。

デブやブスと言われれば傷つき、
落ち込んでしまう普通の女の子が、

若さと憧れをエンジンにして、
半ば道化を演じることでファンを得て、
また多様性という流行りの世論を追い風にして、
ランウェイまで飛んだのだ。

向こうみずな若さが刻々と失われていけば、
残るのはおめかしが好きな普通の女性である。
道化を演じるのは最早ストレスでしかない。
どこかで道化を求めていたファンは去っていく。

今に至るまでどれほど傷ついただろうか。
表に出る仕事ってそんなもんだし自業自得と言われればそれまでだが。

**

そわんわん御本人がひょっとして読むかもしれないので、改めて書いておく。

将棋の才能がない人は、棋士になれない。

足の遅い人は、オリンピックの代表選手に出られない。

それと同じで、

顔の美しくない人は、モデルや女優になれない。

一般的にこういう感じの認識だと思う。
ただ将棋の強弱、足の速度はひとつの物差しで測れるものなのに対して、
美は相対である。
美しいと言われやすい傾向がある顔とそうでない顔が存在するだけで、
「絶対的に顔の美しくない人」など、正確にいえば存在しない。

そこの一点突破で、
そわんわんが、
あの「ブスが表に出るな!」という強固な圧力の壁を超えて、
ドレスを着てランウェイに立ったとき、

本当に感動した。
よく一矢報いてくれた、という感謝の念すらわいた。
ありがとう。


そわちゃん。
あなたの人生なのだから、
これからもあなたの好きなことをやって、
元気に生きていってください。
誰の顔色を伺うこともなく。

私はあなたの顔が好きだ。


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