ロクディムALIVE_001〜1997年4月13日。即興人生はじまる〜

1997年4月13日。
この日付けを忘れない。
ワタリは当時18歳。
兵庫の高校を卒業して、映画俳優を目指し上京した。
そう書くと満を持しての俳優修業!って感じもするが、実際は全然そんなことはなく。
「絶対に!おれは!俳優になるんだ!」と小さい頃から思っていたわけでは全くなく。
むしろ大学にいこうと思って高校3年の夏に予備校に通っていた。
でも当時学校でやっていた生徒会がオモシロすぎて、もう勉強やめ。
学校の行事をどんどん盛り上げていった。

学校の帰り道、自転車をこぎながら友達と話す。
「ワタリ、将来なんになんの?」
ふいに聞かれた。
一瞬考えて答えた。というより勝手に口から出た。
「ハリウッドスターかな」
360度山に囲まれた田舎。
坊主頭でヒゲをはやし、エンジニアブーツを履いているのにママチャリに乗っている高校生ワタリは、ドヤ顔で答えた。
その自分の声を聞いて

「・・ありやな」

と思った。

予備校に通うのを辞めた日。ふだんは入らない本屋に何気なく入り、普段手に取らない「CUT」という雑誌を手にとった。
ペラペラとめくる。
「日本映画学校」という文字が目に入ってきた。
ペンを取り出し、募集要項希望の案内の情報を手の甲に書いていた。
学校の案内が送られてきたときの高揚感を覚えている。
まだポケベルとかピッチとかの時代。
ネットはもうすこし先。
だから「こんな世界があるんだ!」と興奮した。

行きたい。行ってみたい。

そこからまた本屋にいっていろいろ調べる。
俳優養成所というのがあるということを知る。
関西にもあったとおもうんだけど、なぜかその時のワタリの眼に入ってきたのは「日本映画学校」「俳優塾」「無名塾」だった。
それぞれどれもオーディションがある。
想像するだけで緊張した。日本映画学校なんて「3分間の自由演技」というのがあった。
「なにをやってもいいのかな?どうなのかな?」
不安になって事務局に問い合わせた。

電話ごしにおばちゃんの声。

おばちゃん「はい」
ワタリ「あ、あの、すいません」
おばちゃん「はい?」
ワタリ「あ、あの!自由演技っていうのはなんでもいいんでしょうか?」
おばちゃん「なんでもいいわよ」
ワタリ「あ・・そうですか!」
おばちゃん「でもさ」
ワタリ「はい?」
おばちゃん「そんなこと聞いてる段階であんた向いてないよ」

衝撃だった。

その後なんて答えたのか覚えてない。
電話を切ってからちゃんとキレた。「なんやねん!ばばぁ!」と。電話を切ってからね。
そこで日本映画学校にたいして嫌なイメージがあったけど、とにかく説明会っていうのがあるからわざわざ聞きに行った。

新幹線に乗って東京へ。
説明会では校長である今村昌平監督が登壇し「こんどね『うなぎ』って映画を撮るんだ」と話ししている。
なんやねんな「うなぎ」って。ふざけとんな。
その年「うなぎ」は第50回カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞する。

いかん。このままだと、ロクディムに出逢えない。
ワタリの上京話はすっ飛ばします。

結局、1番最初にオーディションを受けた「俳優塾」に合格。
ワタリの上京が決まった。
その俳優塾の最初のレッスン日が
1997年4月13日だった。
祐天寺にある養成所は地下のスタジオにあった。
俳優塾は1組(午前)と2組(午後)に分かれていて、ワタリは2組。
時間がきて、祐天寺のアパートから歩いて向かう。
思い扉をあけて狭い更衣室で稽古着に着替えて稽古場にはいる。
稽古場には10数名の役者たち。
皆、緊張している。
だまってストレッチしている。
ワタリの隣。少し年配に見える色黒のお兄さんがストレッチしていた。
横目で見る。
短パンだ。短パンでストレッチだ。そして
とんでもなくふくらはぎが発達している。
すげえな。すげえ筋肉だな。
そんなことを思いつつ、ストレッチ。
時間がきた。
そしたらその「Mr.ふくらはぎ」が突然立ち上がり。

「はーい。じゃあはじめまーす」

と声をだした。
え??先生???

1997年4月13日。

最初の授業は「インプロ」だった。
Mr.ふくらはぎが、のちの「今井純」だった。(いやこの時も今井純なんだけどね)

そしてこの時。

同じ空間に「宍戸勇介」もいたのであった。

ワタリはこの日、3つの大きな出逢いをしている。

「インプロ」「今井純」「宍戸勇介」

ワタリの即興人生が始まった。

そして俳優塾の1組に「カタヨセヒロシ」と「りょーちん」がいるのであった。

ロクディムになるのはまだまだ先の話。

画像1

俳優塾時代の渡猛(右)と宍戸勇介(左)

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