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2020年2月10日朝

「今日の晴れ間を活用して…」と、週間予報を前に天気予報士は言っていた。

 日の出時刻よりも少し遅れて谷戸に朝日が差し込み始めるころ、洗濯物を干しに外へ出るとウグイスが鳴いた。

「ほぉ〜〜ぅ。。。」

気づいたのは今シーズン初めて。どうやらウグイスも鳴き初めの発声らしい。

「ほきゅ、ほきゅ。。っきょ」

 なんて具合に続いた。舌がうまいこと回らないのか、しばらくそんな調子で繰り返す。霜柱も立った朝です、勇んで出たものの、思ったより春は遠かったのかもしれない。冷えた洗濯物に触れるたび、指先は血の気を失っていく。
 今度は「クォークォー」とウグイスとは逆の方向からカラスが鳴いた。入りくんだ枝の間にうまいことおさまり、くちばしに白い塊り(ご近所さんが用意した食パンだな)を咥えたまま、うまいこと鳴いている。仲間を呼んでいるのだろう。
 この食パンを巡り朝から大喧嘩をしていることがあるかと思えば、ひとつを仲睦まじくついばみあっている姿も見かける。家族なのかな。今のところ、カラスの個体差までは認識できておらず、どう言った関係性なのかは想像の域を出ない。
 カラスの鳴き声を合図にウグイスはどこかへ行ってしまった。
「クォークォー」と誘えども意中の相手が来る様子はない。代わりに彼のもとには台湾リスが向かっている。なかなかストイックだ。リスがうまいこと食パンにありつけたところで、藪に戻る道中でカラスに戦利品を奪われるのが日々なのだから。
カラスは向かってくるリスが幹から枝に渡ったタイミングで飛び立ってしまった。空振りに終わったリスはそれでも、カラスのいたあたりをくるくると回っている。パンクズでも落ちているのかな。
 自然の営みを目に耳に感じつつ、1日が始まる。のどかだ、洗濯物を干し終えるころ、すっかり悴んでしまった指先を別にすれば。

ありがたくいただき、世界のどこかにタネを撒こうと思います。