[6]文系でF1に関わるなら、どんな仕事があり、どうしたらその職に就けますか?
F1エンジニアに憧れる人へ。実際に目指してきた経験を元に、F1に憧れる人へ連載を始めました。筆者は:日本の高校→イギリスの大学→英F1チームインターン(2017-18)等してました。
・収録マガジン:「F1で働く」
・前回記事「[5]F1エンジニアを目指すにあたった、情報の仕入れ方に関するアドバイス」
・毎週日曜更新予定!
今回は連載の主旨とは少し離れた、コラム的立ち位置です。一服。(と言いつつ、先週も休んでたのですが。現在もパソコンのバッテリーが息絶え、日本語キーボードが不便な状態にあります…。いつになったら新しいバッテリーは届くのか…。)
はい、本題。
「文系なのですが、モータースポーツを仕事にしたいならどのような職がありますか?」
「文系でもF1で働くには、どんな方法がありますか?」
僕はF1エンジニアを目指してきた身なのですが、時にこんな質問も受けることがありました。たしかにF1での仕事って、ドライバーとエンジニアが"分かりやすい役職"と共に取り上げられることもあり、それ以外については分かりにくい。
いや、F1での仕事自体が遠い世界なのかもしれないけれど、その中でもさらに遠く感じる。そんな気もする。
あまり自分の専門外で無責任に書きたくはないんだけど、よく受ける質問でもあるので書いてみます。文系でF1? レース? 考えるヒントになればなと。
F1とはいえ、基本は会社
F1は特別な世界です。他業界とは色々勝手が違うかもしれません。が、そうは言ってもF1チームって何かって言うと、チームであり、会社。人が集まって組織的に動いて車作ったり、レースしたり。その裏でお金集めたり、契約をまとめたり、優秀な人を集めたり。うん、その辺は普通の会社と同じ。
だから普通の会社にある職は、F1内にも何かしらの形で転がってると思ってもらって、大きな間違いはありません。まさか、エイリアンが働いてるわけじゃあるまいし。
世界を転戦するスポーツチームであるという点もあるので、同じ職種でも一風変わったところはあるかもしれません。F1チームを中心に見ていきますが、F1に関わるという意味では、外部提携等でも結構関わりがあったりする。
まずは幾つか例を取り上げてみて、どんな仕事があるか見てみましょう。
チームマネジメント
チーム運営をしていく中で、全体を統括したり、チームとしての方向性等を考えていくマネジメント層の人がいます。チーム代表なんかが分かりやすい。チーム潰れないように考えないといけないしね。ちなみにエンジニアリングのマネジメント層は、エンジニア出身者が占めてます。
コーディネーター、ロジスティクス
世界20ヵ国ほどでレースが行われている中、毎レース遅れや欠品のないように、しかしできるだけ無駄なお金が出ないように、モノやヒトを移動させなきゃいけない。そうなると、コーディネートする人、ロジスティクスを考える人が必要となります。過去のインドGPは大変だったって、F1速報に書いてあった気がする。
人事
チームで働く人をなんとかして集めなきゃならない。チームオーナー一人では、F1マシンは作れません。採用するんですから、一般企業がするように採用活動もしてるし、もちろん各チーム人事専門の人もいます。HR(Human Resource)ってやつです。
法務
F1に法律は付き物。時には法律の裏をかいくぐり…等としてるから、時々逮捕者が出るんですよね。勝ち負けやお金、名誉が大々的に関わってるんだから、しょうがないとも言えるけど。法律の専門家は、チーム内だけでなく、ドライバー個人との契約であったり、外部弁護士も。
マーケティング
自チームやF1本体について、もっと多くの人に知ってもらって、ファンになってほしい! 運営母体の商品の販売に繋げたい! そう考えると、マーケティングだってある。レッドブルやフェラーリが分かりやすいかも。ロンドンや東京でも、F1マシンのデモランをしたりしてます。
シェフ
レースがある時には、各チームパドック内で食事が提供されます。ホンダでは日本食が食べれるし、フェラーリではイタリアンが食べれるし。実は個人的に料理関連の特集が昔大好物でした。料理を作るのはシェフ。もちろん、本社オフィスの食堂のおばちゃんだっています。
通訳、広報
F1は何十か国も関わるスポーツなので、色々な言語・文化背景の人達がいます。F1の公式文書は英語とフランス語ですし、みんな英語で受け答えはしてるけど、それでも通訳の必要性はまだまだ必須。同時に、その声を届ける広報の人達もいます。プレスリリースとか。
ドライバーのマネージャー
F1ドライバーはアスリートなので、各自マネージャーがいます。ドライバーの日々や契約事等をマネジメントしてる人達。上に挙げたコーディネーター的な人が兼用することもある。
ドライバーのフィジオ、トレーナー
スポーツ選手として、コンディションを整えたり、トレーニングをすることは必要事項。その専門家の人達もいます。生体的なことに精通しているという意味では理系なのかもしれませんが、ドライバーの心理面のケアも重要。0.01秒の差、それは技術ではなく心理的な差だったりするのがスポーツの面白いところ。
チームオーナー
色々書いてきたけど、チーム作っちゃえば早いんじゃないでしょうか。お金あれば作れます。サッカープレミアリーグで強豪チーム作るより、F1でトップチーム作る方が安いかもしれません。知らんけど。
怪しい人達
パドックにうろうろしてるそうです。聞いただけです。
絶対数は少ない
色々職種はありそうだということは分かった。でもハッキリ言って、そのポジションの数は多くはありません。エンジニアより少ない。
例えば人事であれば、各チーム一人や二人いたら十分だってこともあります。ドライバーのマネージャーが何人もいたら変だし(まあ複数人いることもあるけど)、シェフもそんな大量にはいらない。お金があれば、F1マシンを速くすることにできる限り注ぎたい。となれば、やっぱりドライバーや設備、パーツ、エンジニア等により多く予算は割かれるべきです。ある意味、チームが勝つために最適化された状態。
だから、小さいところでは一人で複数兼業してることもあります。まあ、総じて数が多いわけじゃない。
ポイントは「自分のできることをF1でどの様に活かせるか?」
そんな中で如何に仕事にありつくかと言うと、もうこれしかない。自分の専門性を、F1でどの様に活かせるかのか?
例えば過去にスポーツで本気でプロを目指し、かなり近いところまでいった人であれば、アスリートの気持ちがより分かるかもしれません。もし事務処理や契約事が得意であればドライバーのマネジメントができるかもしれないし、場合によってはチームのスポーティングディレクターのような仕事ができるかもしれません。
あるいは複数言語ができるのであれば、広報として入り込めるかもしれない。
最初にも書いた通り、F1には一般的にある職種のほとんどはあります。自分の得意を、何かしらの形で活かせる場がある。そう考えると、無理に仕事に対して自分をフィットさせるというより、自分のできることをF1にフィットさせると考えた方が良いでしょう。これは僕のオススメです。
仕事を作り出す気概も必要
言い換えれば、仕事を新たに作り出すぐらいの勢いでも良いかもしれません。
F1チームは、自分達にとって利益だ、つまり勝つために有利になると判断すると、受け入れてくれます。今までにない職だったとしても、有用であれば可能性はある。(実は特にエンジニアに言いやすいことなんですが…。)
自分の得意を如何に活かせるか? どうすれば自分が入ることでチームの成長に繋がるか? これは考えてみると結構面白いです。
F1を目指す人へのTips
色々と部外者がほざいてますが、本当に門外漢なので「へー」と聞き流していただければと思います。
今回書いていないことでも、まだ職はあると思います。今回挙げた職の例だって、1分で思いついたものを書き連ねただけ。文系で学問を積んできた人であれば、僕の知らない専門性や職種を元に、他にも思いつけると思います。
ポイントは、自分の得意は何か? それをどの様に活かしたらチームに貢献できるか?
まあ、あんまり自分の絶対的な得意とかパパっと出てくるもんでもないですし、自分が何を専門にしたいか、何を極めたいかという、将来的視点で考えてみても良いかもしれませんね。
次からは(やっと)具体的なお仕事を見つけ方等を書いていく予定です!
お楽しみに!
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