[5]F1エンジニアを目指すにあたった、情報の仕入れ方に関するアドバイス
F1エンジニアに憧れる人へ。実際に目指してきた経験を元に、F1に憧れる人へ連載を始めました。筆者は:日本の高校→イギリスの大学→英F1チームインターン(2017-18)等してました。
・収録マガジン:「F1で働く」
・前回記事「[4]F1エンジニアになって何がしたいのですか? - 「F1が好きだから」のその先を知る」
・毎週日曜更新予定!
こんにちは、わたぽんです。
F1エンジニアという特殊な仕事を求める人にとって、その情報入手は至難の業でしょう。いかんせん、絶対的な情報量が少ない。日本のよく分からない就活というモノに関する情報はたくさんあるのに。
だからと言って、テキトーにしか調べないのは良くありません。これまでにも幾つかF1のエンジニアを目指したいという人達から質問を受け付けましたが、中には調べれば一瞬で分かるのになという質問もありました。ちょっともったいないなと。というのも、僕自身が過去に同じ疑問を持ち、自分で調べた経験があるからです。
今日はただ闇雲にリンク紹介するのではなく、代わりに誰でも普遍的に実践可能なよう、情報の入手方法と、幾つかの代表的な情報の在り処を、僕が実際にしてきたことを交えつつ、紹介しようと思います。
基本(1) インターネット
まず最初に見るところは、やはりインターネットでしょう。誰でも簡単にアクセスできるし、多くの情報に対しては、お金が特別かかるわけではない。たしかに信ぴょう性の問題はあるも、ニッチで限られた情報だってあります。これを最大限に活かさない手はない。
インターネットでの情報は、主に以下の3つに分けられます。
・ニュース・コラム系
・個人・ブログ系
・SNS
上記はさらに言語によっても分けるべきでしょう。
・日本語
・English
その他言語は重要性が低いので今回は除外。フェラーリやザウバーに入りたいなら別。まあ、止めはしません。(これも調べたらビザが大変だと分かります。)
F1全般のリンク集としては、こちらのまとめが豊富です。2012年更新とちょっと古いけど。
さて、問題はこれら情報ソースから、如何に気になる情報を抜き出すか。情報の集め方に関し、僕の意見を紹介します。
①ニュースは全部追う
②コラム記事はF1エンジニア情報の宝庫
③日本語での検索
④英語版Wikipediaは英語初級者でも使いやすい
⑤SNS(特にTwitter)
①ニュースは全部追う
まず基礎中の基礎として大切にしたいのは、全てのニュース記事を追うということです。F1好きなら勝手にやってそうなことですけど。
普段流れてくるニュースの中には、しょうもないものもたくさんあります。しかし稀に、ちょっと気になってたことが混じっていたり、興味深い言及のある記事が出てきたりするものです。
しかし最初から「面白そうなものあれば読もーっと」なんて思ってたら、実際にはチャンスを逃すことになります。まずは全て読み、その中から良い情報、初めて聞く情報があればラッキーというところか。
結局は、新しい情報というのは、ニュースが基本となります。数あるニュースの中から情報を読み解き、今後を予測する。各F1チームの動向や技術の方向性も、新しい情報はニュースから。
また、量は質を兼ねるという点もあります。たくさん読んでいくことで、なんとなく「これ正しそうだな」、「これは間違ってそう」というのも見えてくるようになる。だから、情報に飢えてるならまずは全てに目を通すことが基本です。取捨選択はそれから。
ちなみに手っ取り早いのは、Yahoo! JapanのF1欄に流れてくるニュースに全て目を通すことです。信ぴょう性が高いと言われるAUTOSPORTやMotorsport.com(両方日本語)の情報も含まれています。
ただし、F1 LIFEやSTINGER等は、Yahoo! Japanには流れてきません。
なのでYahoo! Japanに頼らなくても、FeedlyやRSS、Twitterを使って情報を集めるのも良いですね。僕がYahoo! Japanを使ってたのは、当時情弱でそれしか知らなかったからです…。
②コラム記事はF1エンジニア情報の宝庫
Yahoo! Japanを見ていると、F1ページの下の方に新着コラムが挙がっていることがあります。正直、これが読んでて面白い。
僕がよく読んでいた時は、Number Web等で当時ロータスの小松エンジニアや、フォースインディアの松崎エンジニア等が取り上げられたコラム記事が出回っていました。現役エンジニアの方達が、自分で語っているんだから、これほど貴重な情報はありません。エンジニアの人達が普段何を考えているか、レース時にどの様な魂胆を持って判断を下しているのか。その手のことが分かります。
ただし、この手の情報はYahoo! Japanでも流れたり、流れなかったりします。だから後でも書くように、定期的に検索したり、SNSで情報を追う必要があります。
ちなみに僕が今「F1速報 小松」で調べて出てきたコラム記事を紹介しておきます。小松エンジニア大人気…。
【無線ハイライト】グロージャンを落ち着かせた、小松エンジニアの判断
【小松礼雄のF1本音コラム】中団を制するハースの今後の課題と強み。マグヌッセンが次のレベルに行くために必要なこと
ホンダ長谷川祐介とハース小松礼雄「将来F1で働きたい!」夢を持つ日本の若者にアドバイスを贈る
③日本語での検索
ニュース記事が新しい情報を対象にしているのに対して、検索は過去の情報を対象にしています。例えば「F1 エンジニア」等のワードで検索すると、幾らかの結果が帰ってくるでしょう。さて、グーグルの検索結果に並んだ数あるサイト、あなたなら検索結果の何ページまで遡りますか?
僕は最低10ページは遡らないとと思います。グーグルでは既に訪れたサイトページへの文字リンクが青色から紫色に変わるのですが、10ページまで全て紫色にする。それぐらい調べる。どれが良いとか悪いとかじゃありません。情報が少ないからこそ、全てをヒントに紐解いていく。ここでもまずは、質より量。
例えば僕は、「F1エンジニアになるならイギリスの大学へ行くのが良い」というのは、最初はYahoo!知恵袋で知りました。ご存じの通り、信ぴょう性皆無の質問投稿サイトです。笑 でもそれをきっかけに、イギリスへ渡るということを考え、調べ出した。
もし事前に「質問投稿サイトは信ぴょう性がないから見ても無駄」なんて思って見てなかったら、イギリスの大学へ行くことも考えなかったかもしれません。(もちろん、イギリスの大学が良いことは複数の別のソースを元に総合的に判断し、信じて行くことにしました。決して質問投稿サイトを信じようというわけではありません。)
また、最近では個人ブログでもF1エンジニアについて書く方がいますね。
・Engineer Life in Top Formula world
・わたぽんWorld(手前味噌ですが…)
僕が調べていた当時は個人ブログでF1エンジニアについて書いてる人なんていなかったし、あると言えば頑張って探した末に、英・オックスフォードブルックス大学のレースエンジニアリング学科に通っていた人が、取り上げられていた記事だけでした。特にF1の話題があったわけじゃなかったけど、たしかFormula Studentのことが中心。
あとは団体運営のサイトですが、例えばF1チームのホームページ等です。それぞれ自チームで働くのはどの様な感じか、簡単に紹介されています(英語)。
④英語版Wikipediaは英語初級者でも使いやすい
またまた信ぴょう性のない情報源をあえて紹介して申し訳ないのですが、Wikipediaだって使えます。特に、英語の情報を得るきっかけとしては悪いものではありません。
というのも、日本語での情報は正直言って足りているとは思いません。今回このnoteを書いているモチベーションにもなっているほどです。これまでのところ、F1の本場は欧米、特にヨーロッパ、特にイギリス。英語で調べた方が、情報が断然豊富。
しかしいきなり英語でっていうのも難しいので、まずはWikipediaで特定の情報を探してみる。幾つかのページは日本語と英語両方存在していて、答え合わせのようなものもできる(書いてることが全然違うことも多々あるけど)。
僕が実際にしたのは、「有名F1エンジニアの出身大学探し」です。これなら固有名詞が出てきて分かりやすいし、あえて出身大学が間違って書かれてる記事も少ないはず。そうして、イギリスのどの大学へ行けばF1に最も近づけるのか、参考にしました。もちろん熟練で歴史の深いエンジニアばかりなので、今から大学を目指す人にとって必ずしも良質なデータかは分かりませんが…。
英語に関しては日本にいても、少しずつ慣れていくのが得策です。F1目指すならどうせ扱う必要があるので。SNSで英語の流し読みの練習、Autosport (UK)等のちゃんとしたメディアで深く解読する。それが良いかなと。
僕が調べた当時はEPSNが日本語・英語両方で発信していたのでよく利用していましたが、最近ではmotorsport.comが扱いやすいと思う。
ちなみに今ググってて、めちゃくちゃ有用そうな英語サイト見つけた。
⑤SNS(特にTwitter)
ネットでの情報収集の最後はSNS。特にTwitterは使えます。ニュースやF1に関する情報はもちろんですが、中にはモータースポーツでの就職に関する情報を発信しているアカウントもあります。具体的に、僕が把握してたのは以下の3つ。
・Racing Careers
・Aero A
・Motorsport Jobs
最初2つが更新途絶え気味なのに対し、3つ目のMotorsport Jobsは現役です。ポジションの空き情報が流れてきます。
その他エンジニアのアカウントだったり、個人でF1等を目指してイギリス等に留学しておられる方のアカウントもあります。検索したり、フォロワーのフォロワーからつたっていったりして見つける。あと、自分でF1行きたい!って発信してると、自然と集まってくることもあります。
基本(2) 雑誌
インターネットと似て、雑誌も新しいニュースや、最新の状況を反映したコラムが載っています。紹介するまでもないでしょうが、
・F1速報
・オートスポーツ誌
・Motor Fan Illustrated
には目を通す価値があります。Motor Fanは技術に関する話題が豊富。F1とはいえ、結局は車。車の技術を理解しておくことは大切です。また、F1だけに絞り、他のタイプの車に関する理解が乏しいと、幅の狭いエンジニアとなってしまいます。まあ、普通に面白いのでつまみ読みだけでも是非。
(F1速報では過去に、F1速報PLUSという、特集コラムのかき集め雑誌が定期的に発売されていました。中には「空力研究」だったり、「F1初心者特集」で日本人でF1チームで働いてる人達から、これからF1を目指す人へのコラムが載っていたりして、読み応え抜群。今はもう発売されてないみたい。残念。)
また、イギリスであれば以下三つの雑誌が主流かな。
・F1 Racing
・Autosport
・Racecar Engineering
F1 RacingとAutosportは正直ネットで得られる情報と比べられてしまいがちだし、ゴシップな話題も多い。でもRacecar Engineeringはめちゃくちゃ面白い。毎号読むべき。F1に限らず様々なレースカーの技術に関する記事や特集で溢れてる。毎年Formula Student(学生フォーミュラ)も特集されるし、これは読んでおきたい。
雑誌紹介の最後に、一つ空力をやってきたものとして紹介しておきたいものが。
・Bernoulli
現在は廃刊になってしまった、レースカーのエアロに特化した雑誌。ドンピシャ。そりゃ廃刊になるわ。でも2012年あたりなど、エアロがホットな時代に出された雑誌というのもあり、内容は面白い。僕もイギリスで他人から借りてよんでました。
基本(3) 書籍
ふぅ、疲れた。次は書籍。
F1エンジニアを目指すにあたり読むべき本は、実は限られていると思います。以下の3つ(+1)。
・F1 戦略の方程式 世界を制したブリヂストンのF1タイヤ - 浜島 裕英
・リアルな裏F1 - 井上隆智穂
・世界一の考え方 - 森脇基恭
(・トヨタF1 最後の一年 - 尾張正博)
最後のはおまけ。読んでて面白かったから。笑
あとのは正直、古すぎるかなと。読み物としては面白いのかもしれないけれど、現代のF1とは違う部分も多々あります。目指すための参考にするというより、モータースポーツに関する教養を積むため、というイメージですね。第二期ホンダF1関連の本なんかも、本で読まなくても色んなところに情報が出回ってるし。
それよりも英語で本を読むべし。英語では、さらに豊富なラインナップがあります。直接的なタイトルを紹介すると、
・How To Get A Job In Grand Prix Racing: The startline for a career in motorsport - Richard Ladbrooke
・How To Get A Job in Formula 1: The ULTIMATE Guide to Jobs and Careers in F1 - Stephen Sawyer
ちなみにレースカーエアロダイナミクスであれば、
・Race Car Aerodynamics: Designing for Speed (Technical including tuning & modifying) - Joseph Katz
これはレースカーエアロのバイブルです。
応用編 - 実際に聞く、体験する
さて、ここからは応用編です。基本編が自分で家で今すぐ調べられること中心だったのに対し、応用編は行動力が問われます。今すぐできないかもしれないし、中には実現が難しそうに見えるものもあるかもしれません。
応用(1) レース関連会社で見学する・働く
日本には数が少ないけれど、レース関連の会社へ直行するのは手っ取り早い。
僕が初めて訪れたのは、株式会社 童夢。高校の友達と二人で社会見学と称して、校長先生に直談判。そうして実現させた、二人だけの夏休みの社会見学です。いやー、あれは楽しかった。実際に訪れることで、会社としてどんなことをしているのか、設備はどうなっているのか、そういうことが垣間見れます。
僕達が訪れた時は、2対1の面談の時間も取ってくださり、深くお話を伺うことができました。実は、僕はエアロでF1を目指す決めたのも、この見学での話が決断材料に。
また、実際に働いてみるのも良いです。レースチームがバイトやインターンを応募してることもあります。
応用(2) サーキットで観戦
ところでみんな、忘れてないでしょうか? F1で働くことについて実際に見るなら、F1を観に行けば良い。だって、それが仕事の一部になるかもしれないのですから。ならば、F1は現地観戦すべき。
F1日本GPの場合、特に木曜日に行くのがおすすめです。理由は簡単。ピットウォークがあり、ガレージ内(=仕事場)を見ることができるから。そしてそれ以外の時間でもグランドスタンドに自由に出入りできたり、そこら辺を歩いているスタッフにも気軽に声をかけれたりするからです。金曜日からのピリピリした雰囲気の中じゃ、とてもそんなことはできない。
ピットウォーク等に参加することは、モチベーション管理という意味でも良いですね。やっぱりやる気出るもん。
応用(3) その他イベント系
F1関連では、実際のレース以外にも幾つかのイベントがあります。実は僕はそのどれにも参加したことがないのですが、行っても良いかも。
情報は不定期で出てくるのですが、
・F1速報
・Autosport
の二つで紹介されてることが多いかな。雑誌やニュース系サイト・アカウントもですが、お目当てのエンジニア、メカニック、ジャーナリストのSNSアカウントをフォローしておくというのも鉄則です。
2018年には、port Fが神野エンジニアを呼びイベントを開催していました。他にもSTINGER CLUBでも、浜島エンジニア等を招待しイベントを開催しているそうです。
F1を目指す人へのTips
長くなりました。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
基本はやはり、自分で多くの情報を、根気強く集め続けることかなと思います。F1を目指すにしろ何にしろ、戦略をたてるためにはより多くの情報があるに、越したことはありません。そして偏見にごまかされないようにするためにも、複数の情報ソースを読み比べることが大切。
最後まで読んでいただいた方のために、ここで紹介したリンクを再度、まとめておきます。
ニュース・コラムサイト(日本語)
・オートスポーツ
・motorsport.com - 日本語版
・Yahoo! Japan F1(まとめサイト)
・Number Web
・F1速報
・F1 LIFE
・STINGER
ウェブサイト(英語)
・Autosport
・Motorsport.com
(・Racecar Engineering - 雑誌でも紹介)
・JOBINf1.com
個人サイト(日本語)
・Engineer Life in Top Formula world - 神野エンジニアのブログ
・わたぽんWorld - 僕のブログ
雑誌
・F1速報
・オートスポーツ
・Motor Fan Illustrated
・F1速報+(廃版)
・F1 Racing
・Autosport
・Racecar Engineering
・Bernoulli(廃版)
書籍
・F1 戦略の方程式 世界を制したブリヂストンのF1タイヤ - 浜島 裕英
・リアルな裏F1 - 井上隆智穂
・世界一の考え方 - 森脇基恭
(・トヨタF1 最後の一年 - 尾張正博)
・How To Get A Job In Grand Prix Racing: The startline for a career in motorsport - Richard Ladbrooke
・How To Get A Job in Formula 1: The ULTIMATE Guide to Jobs and Careers in F1 - Stephen Sawyer
・Race Car Aerodynamics: Designing for Speed (Technical including tuning & modifying) - Joseph Katz
SNS(英語、エンジニア向け)
・Racing Careers
・Aero A
・Motorsport Jobs
次回は「文系なんですけど、F1で働くにはどうすれば?」という質問が結構多いので、その点について書いておこうと思います。もちろん、僕の専門外なので、今まで以上に素人目線での考察になりますが。
お楽しみに!
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