舞台付箋 舞台『野球 飛行機雲のホームラン ~ Homerun of Contrail』

20240630、東京千秋楽おめでとうございます。
06/24夜公演メモ。


■舞台付箋

幸運にも時間が出来たので当日券で行ってきました。2018年の初演を観たことがあったしDVDも買っていたものの、殆どまるっと内容を忘れていたので、初見のつもりで劇場に足を運び。
客入りの時間、蝉の声。ああそうだ、夏の物語。着席、そして……暗転する前の審判による「試合開始!」の一声で、暗転する間に6年前の公演を走馬灯のように思い出した。
西田氏舞台にはよくある、開演直後に出演者が全員でてくるOPタイムがある訳ですが、そこでもう泣き始めたわけです。もう彼ら両チームの球児達がそんなふうに揃って野球をする機会は、この公演の時間に於いて先、もう二度と無い事を、2018年公演を観た自分は知っていた。

登場人物は、反戦記者である唐澤ユメ(傳谷英里香)も含めて、皆口々に「お国のために」「(特攻隊へ)志願します」「(招集が決まり)おめでとうございます」「万歳!」と当時、受け入れて当然・祝うべきものとされていた言葉を口にして、戦争は悪いものだ、と声にするものは誰一人いない。
しかし、本作品は反戦を一切叫ばない反戦作品だと自分は解釈している。
「お国のために」と苦渋を浮かべて怒鳴る者。
志願しなければ懲罰を与えられる故に「(特攻隊へ)志願します」と手を挙げる者、返事が遅れたものへ叱咤する者。
招集が決まり、泣きながら「おめでとうございます」と家族へ全てを押し殺して見送る者。

この試合が彼らの生涯で最後の試合となったことを、その勝敗がついたことに、子供達へどうすることもできず、ただ見届けることしかできなかった大人たちの「万歳」の声が響く。

戦争は悪いものだ、と声にするものは誰一人いない。
ただ、彼らは野球がやりたかった。野球を続けたかった。その辛さと苦しさを冒頭から終わりを迎えるまでたっぷり味わうことのできる悲しい物語だった。

笹川美和氏楽曲が作中いくつも使われているのも良い。ときをとめないで、とか。本作のために書き下ろされた「蝉時雨」の使われ方も秀逸。同じ楽曲なのに幾つもの雰囲気の異なる場面に使われていながらどれもが合っていて。特に、終盤の神風特攻隊の飛行が重なってなんかもう、すごい。四谷怪談の「木枯らしに抱かれて」の絶望ソングに並ぶ、舞台野球の「蝉時雨」が絶望ソングになりそう。すげぇつらい。

■公演概要

作・演出 : 西田大輔
野球監修 : 桑田真澄
音楽 : 笹川美和

公演期間
2024年6月22日(土)〜6月30日(日)
※6/20休演日
天王洲 銀河劇場(東京都品川区)
https://www.gingeki.jp/

2024年7月6日(土)〜7月7日(日)
サンケイホールブリーゼ(大阪府大阪市)
https://www.sankeihallbreeze.com/

・チケット
全席指定 ¥9,900(税込)

スタッフ
作・演出 : 西田大輔
野球監修 : 桑田真澄
音楽 : 笹川美和

美術:角田知穂
照明:大波多秀起
音響:前田規寛
衣裳:瓢子ちあき
ヘアメイク:新妻佑子
BGM:こおろぎ
演出助手:佐久間祐人
舞台監督:上村利幸、清水スミカ
宣伝美術:山下浩介
宣伝:フューチャーPR&Media
票券:十文字優香
制作:窪寺裕子、塚本拓弥、長浜あかね、上野志津華
クリエイティブプロデューサー:西田大輔
プロデューサー:三浦奏子、岡 美優里、下浦貴敬、徳 秀樹
企画制作・主催:エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ
Office ENDLESS
DisGOONie

■出演

穂積均:橋本祥平
唐澤静:中村浩大

島田治人:財津優太郎
浜岡喜千男:西銘駿
岡光司:健人
堂上秋之:大隅勇太
林崎歩:結城伽寿也
佐々木新:大崎捺希
田村俊輔:大見拓土
菱沼力:相澤莉多
大竹明治」:瀬戸啓太

穂積大輔(海軍中尉):猪野広樹
唐澤ユメ(元新聞記者/唐澤静の姉):傳谷英里香
菊池勘三(海軍少尉)「:村田洋二郎

遠山貞明:川原和久

掛川勇輝 本間健大 田上健太 中土井俊允 桑野将春 本武大聖


https://homerun-contrail.com/cast.html

■作品概要

届かなかった、あのマウンドに ――
少年たちの生きた夏
鋭い感性と、繊細な表現、演者の持つ力を最大限に押し出す粋な演出で数多くのヒット作品を手掛け、舞台界という荒野を開拓してきた西田大輔が本作で描くテーマは、第二次世界大戦中、日本で”野球”に憧れを抱き、白球を追いかけた少年たちの物語。

戦時中の日本では、野球は敵国の国技であるが故に、「セーフ」、「アウト」と言った野球用語は全て日本語化される他、野球を行うことすら球児にとっては厳しい時代だった。

そんな環境下で、特攻隊として飛び立つ前に最後の願いとして行った野球試合を描く。

西田大輔を筆頭に舞台を形作るのは、現在読売ジャイアンツ2軍監督を務め、甲子園通算20勝の戦後最多記録を保持する桑田真澄が野球監修を担当。数々のCMやドラマ、舞台の主題歌に起用され、唯一無二のメロディーを生み出す笹川美和が音楽で彩ります。

https://homerun-contrail.com/introduction.html

あらすじ
1944年、夏。
グランドでは、野球の試合が繰り広げられていた。甲子園優勝候補と呼ばれた伏々丘商業学校と、実力未知数の有力校、会沢商業高校の試合である。

会沢の投手・穂積が、捕手・島田の構えるミットを目掛けてボールを投げる。ど真ん中に入った球は力強く打ち抜かれた。穂積と幼馴染の伏々丘四番打者で投手・唐澤も高い空を見上げた。
それは紛れもなくホームランだった ――。

戦況が深刻化するなか、敵国の競技である野球は弾圧され、少年たちの希望であった甲子園は中止が宣告された。

兵力は不足し、学生たちには召集令状が届く。甲子園への夢を捨てきれず予科練に入隊した少年たちは、”最後の一日”に出身校同士で紅白戦を行う。
「たとえあと一球でもいいから投げていたい。時間があるなら何度でも。」
野球を心から楽しみ、仲間を思い、必死で白球を追う少年たち。
それぞれの思いがグランドを駆け巡るなか、最後の試合が幕をあける。

https://homerun-contrail.com/introduction.html

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