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2020年3月 前橋旅6(完)

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 さて、赤城フーズの工場を出て、再び駅方面へと戻ります。
 次の予定は群馬県庁です。群馬県の山本一太知事と面会をし、群馬の観光施策について協議する予定、というのはもちろん嘘で、県庁の展望台が有名なので行ってみようかと。

 戻りは行きとは違って線路沿いの道をひたすら西へ。というかこの道、ただただ真っ直ぐだし、最初からこのルートを選んでた方が快適だったな。日差しも降り注いでいて暖かだし。まぁでも、行きも面白いもの見られたから良いけれど。
 っと、信号の庇(ひさし)が上ではなく、なぜか右についている信号機を発見。これは……機能的な意味があると思うのだけれど、一体どういうワケだろう。というか昨日も、歩行者用信号の赤と青が上下じゃなく、左右に並んでいる信号機があったな。どっちも初めて見た気がする。何だ群馬は、変わり種信号機を集めているのか。

 駅前を通過し、そのまま県庁の真南に行き、そこから北へ。というか、昼はどこで食べよう。これまた何の候補もなく、当然うまい店で食べたいが……。っと、県庁への道すがらかなり年季の入った支那そば屋を発見。メニューを貼り紙で店の表にペタペタペタと貼っている感じ。凄い店構えだ。しかし店内に人はいる。うーん、まぁ憶えておこう。

 さて、駐車場のおっちゃんに尋ねて駐輪場へと自転車を停め、やってきましたは群馬県庁。かなりの高層ビルです。旅の途中、「無駄に豪華な県庁」と揶揄する前橋人もいました。
(というかそう! ランニングやってる癖に今思い出したけれど、群馬県庁はニューイヤー駅伝のスタート/ゴール地点だ!)

 群馬県庁内に潜入。何だか受付みたいなところに、ぐんまちゃんがふんぞり返っているんだけれど、これは何だろう。一体、どういう料簡だい。とりあえず、展望ホールのある32階まで健康のために階段で向かいます嘘ですエレベーターです。
 エレベーターは背面がガラスとなっていて、上りながら外を眺めることができるのだけれど、土手を船の帆みたいな巨大土埃が舞っていて、見るからに強風。上州の空っ風とは有名だが、まさかここまでとは……(たまたまこの二日間がそうであったのだと思うけれど、群馬=風の印象がとても強くなりました)。

 やってきました展望ホール。ここは椅子やテーブルが用意されていて、お昼時なのでお弁当を食べている人もいらっしゃいます。都庁と比べると何だか素朴な展望フロアです。人もそんなにいないので、東西南北とゆったり見て回れます。前橋市を睥睨してフハハハとかもやっちゃう(ヘイゲイ言いたいだけです)。
 前橋の町並みも赤城山も、榛名山も、そんでもって先程見かけた富士みたいな山──浅間山(展望台によくある山の名を記したパノラマ写真により判明。全然違った)も稜線までくっきりと見渡せます。風はめっちゃ強いけれど、とってもいいお天気で。

 うん、思いがけずのんびりできました。で、お昼ご飯どうしよう。昨夜食ったにも関わらず、何だかラーメンが食べたい気分。グーグルマップで検索してみる。せっかくだから前橋にしかない評判店でも行きたいなぁ、と。しかし、なかなか所望の店が見つからず。美味いかどうか分からんが、やっぱり行きに見かけた強烈な店構えの店に突撃してみようか、と考える。ひとまず再び店の前まで行ってみることに。

「支那そば」と黄色地にどでかい赤文字。紙にマジックで「前橋城」と書かれているが、これが店名だろうか。お店の左の壁面には「……よりジェット空輸してます 前橋城」と、寂れた看板。何をどこから空輸しているのだろうか。というか空港どこ? ガラス越しに覗けば、背広の男性が数名。少なくともハズレではない。ならば、と隣の小さな駐車場に自転車を停め、店内に突撃。指を立てて「一名です」。

 入口すぐのカウンター席に着き、頭上にずらりと貼られたメニューを眺める。1から20くらいまでの数字が並び、どうやらそれぞれ半炒飯等のセットメニューで番号が振られているよう。番号で注文すりゃいいのか。一見さん、よぉわからんです。
 もちろん、こういうときは尋ねるに限ります。「ごめんなさい、初めてなんですけれど、オススメって何ですか?」醤油ラーメンと、半炒飯セット700円とのこと。うん、庶民的。それに決めました。

 いやぁ、手狭な厨房の中、夫婦二人でちゃきちゃき働いてらっしゃいます。間違いなく、昔ながらの支那そば屋だ。案外、目の前の県庁が建つ前から営業してたりして。というか場所柄、群馬県庁職員さん御用達なのだろうね。
 さて、さほど待つことなく醤油ラーメンに半炒飯が出てきます。うん、庶民的、昔ながら、といった形容がぴたりと当てはまるラーメン半炒飯セットです。やや濃い見た目のスープに細麺、チャーシュー、メンマ、ほうれん草、ふやけた海苔、中心にはもちろんナルト。炒飯もとっても良い色合い。早速、いただきます。

 ラーメン炒飯ともに見た目ほど味は濃くない。個人的にはあっさり過ぎるような気もするけれど、まぁ前橋の日常を味わっていると思えば、それもまた一興。何よりこの時代に取り残されたかのような雰囲気が嬉しいのです。ごちそうさまでした。

 いい心地で外に出る。自転車に跨がり、前橋駅へとゆるり向かう。
 これで前橋での旅程は終了。何だか名残惜しゅうございます。てなもんで、わざと街中をじぐざぐに走って、様々な前橋の情景をその目に映しておく。ありがとう前橋。立派な観光パンフレットが刷られているにも関わらず、住人からは観光地と思われていない節があるけれど、振り返ってみりゃとっても楽しかったです。
 最後にドーミーインの前を通り、前橋旅終了です。レンタサイクルを返却し、駅構内のお土産屋で家での夕飯用に、上州民御用達弁当の登利平(とりへい)の「鳥めし」を購入しようとするが……売り切れ! それもそのはず、夕飯用は15時半の入荷だとか(ちなみに昼飯用は16時までの消費期限だが、すでに完売)。
 現在13時半。どうしよう、せっかくだから帰っても群馬を楽しみたい。しかし。

 ここですかさず、OKグーグルさん。帰路の途中にある高崎駅で売っているか? そしたら途中下車で買いに行くが……登利平、高崎駅にアリ! 今度はsuicaじゃなく、わざわざ切符を購入。えぇ、もちろん途中下車できるように紙の切符です。すぐさま13:35に発車の列車に乗り込み、慌ただしくも左様なら前橋さん。とはいえ、まだ群馬旅は続きます。微力ながら、経済回します。

 車窓をぼけっと眺めていたら高崎駅に到着。改札の駅員さんに「100km越えてるので、途中下車お願いできますか?」と頼み、切符に判子を押してもらい、改札の外に出ます(切符の移動距離は100km超えてると、途中下車できるのです。東京から前橋は100kmちょい)。
 さて、登利平。以前一度食べて美味しかったので、鳥めし。駅直結デパートのお土産弁当売り場の一角にお店を発見。が、ここも夕飯用はまだ出来上がらず。残っているのは「ソースカツ弁当 ~20時期限」か「上州麦豚炙り焼き弁当 ~17時」。正直、ソースカツは朝食べたからもういい。家に着くのは18時頃だが……まぁいいかと、炙り焼き弁当を購入です。

 その後、電車が出るまでに時間があったので、屋外に数歩だけ出てすぐに引っ込むという不毛なことをして、再度駅に入場。無論、まだ旅は終わりません。群馬と埼玉の県境、新町駅へと向かいます。

 こちらも10分ほどで到着。高崎同様に100kmを武器に途中下車しようとするが……「できません」とのこと。高崎駅ではできたのにと控え目に食い下がるが「大都市近郊区間なので~」と、よく分からんが、駅員さんができないというのなら、どうしようもないので、高崎駅からの切符を買い直し、何とか外に出る(帰ってから調べると、この路線図内では100km超えてても途中下車はできないとのこと。つまり本来は高崎駅でも下車できなかったことになる)。

 さて、国道は歩いても大して面白味がないので、線路沿いの道を2kmほどてくてく歩いて行きます(2kmは距離の内に入りません)。こちらのほうが現地の方々の生活感やら日常感に溢れていて、歩くだけでも楽しいのです。何やら段ボールの工場がある。天井がぼろぼろ。というか日差しがとっても温か。風も気づけば和らいでいます。赤城山から離れたからだろうか。思いがけず楽しい道行きです。

 っと、広々とした駐車場の一隅に、石碑やら灯籠が集まっているのを発見。石碑好きの血が騒ぎます。これはまったく意図しない遭遇だったので、嬉しかった。
 神流川古戦場跡。遠い昔にこの地で戦があったとか(ごめんなさい。古いもの好きな割には歴史に疎いっていうね。大きな歴史の動きよりも、民衆の暮らしとかのほうが好きです。つまり民俗学ですね)。
 そしてそんなかつての戦場に現在、ラスクの巨大工場が建っていようとは誰が思ったことか。というわけで仰ぎ見れば、ガトーフェスタハラダの工場がででーんと構えています。表に回ると、まるで神殿。ガラス張りの建物に白い石柱が幾本も列んでいます。現代神殿といった様相で。

 ガトーフェスタハラダ。あのフランスっぽい色合いの包装袋に入ったラスクの会社です(食べたことある人多いはず)。旅程でここの工場を知るまで完全に外国の菓子かと思ってましたが、実は群馬県銘菓です。何やらすでに甘い香りが漂ってきました……。

 無論、工場見学です。工場は「シャトー・デュ・エスポワール」という名前がついてます(憶えられないので、コピペしました)。無料です。だのに受付でパンフレット等ともに定番ラスク「グーテ・デ・ロワ」を一枚配っています。軽やかなバターの香りがたまりません。工場内は撮影禁止なので、あまり細かく憶えちゃいませんが、工場内の通路に沿って歩きつつ、ガラス窓の向こうに広がる製造ラインを眺めては進む感じです。ボタンを押して映像を見るコーナーもいくつかあります。っと、オーブンで焼く前のラスクを調理した、柔らかいラスクの試食が待っていました。ここでしか食べられない一品とのこと。コーヒーのサービスまである。何てことだ。太っ腹か。勿論、試食の柔らかラスクはめちゃ美味。
 フロアを一つ下り、今度は製造ラインと一緒にガトーフェスタハラダの商品をショーケースにて紹介するゾーン。こんなん購買意欲を刺激しまくるに決まってるじゃないすか。ニワトリを象ったサブレがあったけれど、これはまるで鳩サ──。というか神殿の外観にふさわしく、工場内はめっちゃ清潔で見学通路もゴミ一つ見当たりません。見るもの何もかもがキレイでした。
(4月から工場見学は休止にしているとのことです……)

 無論、買います。販売は隣の本館「シャトー・デュ・ボヌール」で行っています。ラスクをチョコでコーティングしたものやら、ラスクにバターレーズンを挟んだという想像するだけで美味そうなお菓子もあります。幸福か。

 帰りもまた2km歩きます。今度はお土産の紙袋を手に。国道脇に旧中山道の標識を見つけたが、駅から離れていってしまうので、再び線路沿いののどやかな道を選びます。
 新町駅で無事途中入場を果たし、あとはもう帰るだけ。でもまだ、わざわざ途中下車して買った群馬の「鳥めし」があります。今から楽しみです。

 ベンチに座り傾きだした陽を浴びては、電車を待ちます。ふと目を上げれば、「群馬へまた来てね!」の横断幕。車掌姿のぐんまちゃんが見送ってくれています。
 もちろんまた来ます。それではまた逢う日まで。さようなら、群馬県。さようなら、前橋。振り返れば(多分)2万5千文字も費やすほどの超濃密な旅でした。別に長くしようと思って書いているわけじゃないですが、文字通り「馬鹿みたいに長い旅日記」と相成りました。
 ではみなさま、お元気で。また次の旅で会いましょう。

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