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作曲家が撮影現場でやってること


撮影は基本、観に行きます

音楽を担当する事になったドラマの撮影を観に岩手の遠野市に行ってきた。
映画やドラマの音楽を担当する事になった時、撮影現場には必ず行くようにしている。ただ、仕事として劇音楽をするようになった最初から一貫して、そうしている訳でもない。
撮影を観に行かない時期もあった。

撮影現場に初めて行ってみた頃

劇音楽の仕事をするようになった最初の頃(20年弱前)は、撮影現場のもの珍しさとか、芸能人に会えるとか、そういった野次馬根性的な興味本意で撮影を何度か観に行ったこともあった。

行ってみて分かったのだけど、撮影現場にはものすごい数のスタッフの皆さん方がいて、演技をしている俳優さんの周りは概ねスタッフによる人垣が出来ていて、直接俳優の演技をじっくりと観る事ができる、なんて事はまずない。

しかも、同じシーンをカメラアングルを変えながら何度も撮る。もうそのシーン(演技)観たよというのを、何度も観る。

私はと言えば、スタッフの背中と背中の隙間から見える俳優さんの演技をチラ見しているだけで、その場でやる事というのは実はない。(と、その当時は思ってた。)

そんな感じだったので、撮影にはすぐに行かなくなった。

あれ?分からない。。。

まあ、それでもしばらくは撮影を観ることなく、出来上がった映像と、台本と監督との打ち合わせで、音楽を書くことは出来ていた。

それが、ある時から出来なくなった。

俳優さんの体温とか、声の奥行きとか、仕草の真意とか、照明の意味とか、美術に込められたストーリーとか、カメラの中に収めれているものと、カメラに収められなかった、その外側にあるものとか、衣装にフワッと乗せられた花弁に込められた意味とか、撮り直しになった時に変更が加えられた演技の意味とか、その空間の空気の流れとか、それら全てが音楽と密接に繋がりあってると分かってしまったから。

出来あがった映像と、台本と、監督との打ち合わせだけでは、「ああ、分からない」と思うようになった。

撮影現場で観ているもの

監督の横で演出を聞くのは勿論、休憩中に監督と他のスタッフや俳優がしている雑談も、実はこっそり聞いてたりする。
何食わぬ顔で横でお茶飲んでるだけのフリをしながら、話を盗み聞きしている。

単なる雑談の中で、不意にシーンの意味が語られたりする。

監督と撮影スタッフのカット割の打ち合わせも、横で聞いてたりする。遠くから撮るのか、近くから撮るのかとか、その台詞は俳優の背中ごしだけで良いのかとか、演出の真意が汲み取れる。

美術(撮影セット)の作り込みもジーッと観て、写真もパシャパシャ撮りまくってる。美術は登場人物の写しだと思う。

撮影終わりで監督やプロデューサーと飲みに行ったりすると、素面で出てこないそれぞれの思いに触れる事ができる。

他にも沢山ある。その場にいないと分からない事が沢山ある。
劇音楽の作曲は、それら全てに触発されながら進められる。

つまり、撮影に行かないと分からない。。。

グルメ

新里豆腐店

写真は遠野市のホテルの近くにあった豆腐屋さん。
店先で出来立ての豆腐やがんもどきを食べさせてくれた。
とっても美味しかった。
当然、食事も大きな楽しみの一つでよね。

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