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『すずめの戸締り』に見る映画と広告の新しいカタチ

2022年11月に公開して以来、日本中で話題になっている『すずめの戸締まり』。

2022年12月現在、最終的な興行収入が150億円にも届くのでは?とも言われています。

『すずめの戸締まり』のレビューや考察については、様々な方が様々な観点で述べられているので、本記事では『すずめの戸締まり』の内容ではなく、広告について書いていきたいと思います。

結論から述べると、『すずめの戸締まり』は映画と広告(タイアップ)の新しいモデルを確立しつつあるのではないかと思います。

新海誠監督作品では、『天気の子』の頃から、その傾向は見えていますが、より顕著に、しかも違和感ないマッチ度へと洗練されている気がしています。

※個人的な感想や意見なので参考程度にお願いします。

作品内に実際のサービスが出ている

『すずめの戸締まり』では、作品内で実際の商品サービスが出てきます。

特に印象的だったのがSpotifyです。

主人公たちのドライブシーンで音楽が用いられているのですが、それがSpotifyから流れています。

出典:Spotify Japan https://www.youtube.com/watch?v=AQB1w2TXzUg

最近では、このような形式は増えてきているのかもしれないですが、すべてのアニメ作品でできるものではないと思います。

具体的にいうと、『ONE PIECE』などの世界観や舞台、設定が独自にあるものの場合、行いづらいでしょう。(『ONE PIECE』の世界で、いきなりSpotifyが出てきたら相当驚きます笑)

一方、新海誠監督作品が、これを実現できる理由にはリアルな背景描写にあると思います。

『言の葉の庭』『君の名は』『天気の子』『すずめの戸締まり』などの作品では、新宿駅や田端駅など実在する土地や駅が描かれています。

以前Macのインタビューで、新海誠監督は「自分が好きだった風景が変わっちゃう前に、その場所のアルバムをその作品の中につくっていく」と述べています。

これはあくまで私の推測ではありますが、新海誠監督が、実在する商品やサービスを出していくのにも、そのような日々変わっていく世界について、映画ができた当時の瞬間を記録していく背景もあるのかもしれないです。

ちなみに、少し話はそれますが、新海誠監督は、作品との「一体感」というのを、音楽で先駆けて行っていると感じます。

もう様々な箇所で語られていると思い、ここで改めて書くことではないかと思いますが、『君の名は』や『天気の子』ではRADWINPSの楽曲に併せて登場人物の心情が動いていく手法がとられていました。(そしてこの手法は他のアニメ映画でもとられることが増えたように感じます)

さすがに広がりすぎたのか、控えたのかはわからないのですが、『すずめの戸締まり』では、同様の形式は取られていないです。

ただ、音楽自体は先述したように、上手いように映画内に違和感なく組み込まれています。

コンセプチュアルなタイアップCM

『すずめの戸締り』はタイアップCMもコンセプチュアルにつくられています。

au

auとのタイアップCMは、RADWINPSの『カナタハルカ』に合わせて、「いってらっしゃい」というシーンが非常に印象的です。

CM内にある「日本のどこにいても、”つながらない”がなくなるように」というメッセージは、全国に通信サービスを提供しているauならではだと思います。

Spotify

先述したSpotifyもコンセプチュアルです。

男の子が音楽を聴いて映画のシーンが流れるというもの。音楽を聴くと映画のシーンが蘇る瞬間は、誰しもあると思いイメージができます。また、扉が始まりと終わりの合図になっているのも作品と一体感があります。

マクドナルド

マクドナルドとのコラボCMも、同様に映画のテーマとうまくマッチしていると感じます。

個人的に、マクドナルドは記憶の溜まり場だと思います。子どもの時に親などの家族で行った記憶、学生時代に友達や1人で行った記憶、大人になって子どもと一緒に行った記憶など。

特に、子どもの時の記憶と、少し成長してからの記憶、というのは、『すずめの戸締まり』でも重要な鍵になってきます。

このように、映画のシーンを活用してCMをつくっていくこと自体は、タイアップ一般的によく見る手法だと思います。

ちなみに余談ですが、私が映画の企業タイアップと聞いて思い起こすのがジブリで、かなり前に読んだ本で、鈴木プロデューサーが宣伝について書いているものがあります。

その中で、タイアップの難しさを書いています。企業はお金を出した以上しっかりアピールしなくてはと色々口を出す、作品側も応えようとすると結果よく伝わらなくなる可能性がある。なので、CMの中で「応援しています」と書くぐらいが良い、と書いてあります。

そのように考えると、『すずめの戸締り』の場合、よりコンセプトに沿って、新しいカタチでつくられていると感じます。

映画に沿った広告キャンペーン

タイアップでよく取られる手法のひとつにプレゼントキャンペーンがあると思います。

商品を買って応募券を集めると、グッズが当たる的なもので、特に原作がある作品の場合、取られることが多い手法だと思います。

これ自体は素敵な企画だと思いますし、『すずめの戸締り』でも用いられています。今回それとは別に素敵な取り組みだと思ったのが、この#日本の戸締まりプロジェクト。

『すずめの戸締まり』にはロードムービーの側面もあります。

それに関連して、47都道府県ぞれぞれ一つの企業の商品のアピールをするというキャンペーンになっており、こちらも『すずめの戸締り』の作品もマッチしています。

おわりに

今回は『すずめの戸締り』と広告(タイアップ)の新しい関係について述べてきました。

※あくまでも個人の意見なので参考程度にお願い致します。

CMレビューもしています(まだ1記事だけですが)

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