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ピアノを聴きながらぼやく
先日、高校時代の同級生Nくんと再会。と言っても、高校生時代は、お互いの存在をすこし離れた距離から認識してたくらいで、30年以上前に同じ高校で過ごしていただけ、という感じである。それでも、彼は笑顔で接してくれる。よくできた人だ。
高校卒業後、Nくんは渡米して、ジャズピアノのプレーヤーになっていた。大きなホールも埋めてしまうようなビッグネームになっていてびっくり。たまたま、共通の知人を通して、その噂は聞いていたのだけれど、ひょんなことから、何故か、蘭越町で再会する。
Nくんは、小樽市張碓というものすごい田舎に自前でコンサートホールを作った。古民家を改造して、グランドピアノを持ち込み、外装はできたもも、内装は未完成。これから、少しずつ内装にも手をかけるらしい。笑いながら、彼は言う。
「サグラダ・ファミリアだからさ」
この、DIYコンサートホール「N-038」で、ミニコンサートがあったので、聴きに行ってみた。このコンサートは、改装中のホールのお披露目ということもあるのだろう、人が集うと「それでは、始めましょうか」とスタートする。
人数は決して多くないが、とても豊かな環境だった。「リクエストある?」とNさんから気軽な感じで尋ねられる。ジャズにはあまり明るくないので、困ってしまったのだけど、最近、ガーシュウィンのドキュメントを観たな、と思い出して
「ガーシュウィンがいいなぁ。『Rhapsody in Blue』」
と、王道の中の王道をお願いしてしまう。
「あれは、オーケストラと一緒にやるやつで、練習が必要なやつなんだよね」
と、Nさんは笑いながら、コンサートがスタートする。最初は、有名な曲のメドレー。
ピアノは、音ひとつひとつに主張があるが、音同士の間に適度な間隔を感じる。スキマがあるように感じてしまう。だから、聞きながら、合間にいろいろなことを考えることが容易だ。
また、余計なことを考えてしまう。
そう、ここに来てみたはいいが、悩みは、「Nくん」への呼び方なのだ。「Nさん」がいいのか、「Nくん」がいいのか?このブログでも、すでに揺らいでいる。さすがに、呼び捨てはまずいだろ。あとは、敬語の距離感。なんとなく、共通の思い出があるとは言え、それさえ、共有を確認できていない。
こんなとき、人はどう接するのだろう?なんだかこんなこと考えるのも野暮ったいのだけれど。
そうそう、最近、学校って、子どもたちに「あだ名」をつけたり、呼び捨てにするのを禁止してるところのが増えてるらしい。理由はしょうもない。
「あだ名」がついてる子どもと、ついていない子どもに差別が生まれ、不公平感を生徒ができるから。
そもそも、子どもたちに「くん」「ちゃん」「さん」なのどの敬称の付け方にも、学校の偉い人たちは文句をいってくる。不公平がないように「さん」で統一して欲したほうが望ましいのだと、えらい人たちは言う。うーん。なんか、しっくりこない。
子どもたちは生身の人間なのだから、ぼく自身との距離感は、ぼくとその子どもたちが決めることだと思う。なんという敬称を使っても、呼び捨てにしても、どちらも違和感を感じなければそれでいいような気がする。
今日は「ちゃん」という敬称で呼びたい。
今日は「さん」という敬称で呼びたい。
という日もあるかもしれない。敬称が変わることで、先方がどこまで近づきたいか読む。これも生きるために必要な気がする。そういう、見えない人間関係の機微を学ぶのが、集団で生きるということだと、ぼくは思っている。
平等のために、機械的に、子どもたちは全員「さん」に統一しなさいと、職員会議で話す校長の言葉に、気味悪さを感じる。それは、ぼくだけなのだろうか。
あれ、だいぶ、脳内会話が走ってしまった。ピアノって、やはり、隙間があって、いろいろな感情が渦巻くな。などと、思っているうちに、「Rhapsody in Blue」がスタートした。
きっと、「Rhapsody in Blue」をリクエストする時点で、素人感が満載なんだろうな。「どんなお芝居が好きなんですか?」「うーん、あ、あれ、『キャッツ』!」みたいなノリなのかもな。「キャッツ」に罪はないし、「キャッツ」が好きな人に文句はないんだけれど。
そういえば、シブガキ隊の曲で「キャッツ&ドック」って歌があったな。あの曲、子どもながらに、なんで「キャッツ」は複数で、ドックは単数なんだと思っていた覚えがある。たしか、なにかの人形劇のテーマ曲だった気がする。
「キャッツ&ドック」って、たしか人形劇みたいなのの主題歌だった気がするが思い出せない。あ、そうだ、「ひげよさらば」っていう、猫のお人形が主人公の人形劇だった気がする。いや、待てよ、犬のお人形か?
などと、ぼくの脳内問答は続く。
ピアノと脳内問答のプレンドがちょうどいい。
こういう聴き方は、あんまり良くないのかな?
世の中の人は、音楽をどう聴いてるんだろう。謎は深まる。
そんな、張碓での午後だった。