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多くのITエンジニアが面接で企業に問いただす、2つの比率
ITエンジニアの会社選びについての記事の9回目です。今回の記事では、企業の「案件比率」についてとりあげたいと思います。これまでの記事はこちら。
エンジニアの成長機会を左右する、案件のフェーズ
「その企業ではいかなる案件に参画できるのか」。ITエンジニアの成長機会という観点で考えると、これこそ最も関心を寄せるべき内容と言えます(第2回の記事を参照)。さて、これを手っ取り早く把握するには、どうすればいいでしょうか。そもそも、案件を特徴づける属性は、使われている技術や開発手法、プロジェクト規模、業種、勤務地、など、あげていけば切りがありません。
案件について考えるにあたって、最も重要なのは、「どのフェーズの案件か」「どのフェーズからの参画か」、この2つです。フェーズという言葉が繰り返し2度出てきましたが、意味するものは違います。
前者はシステムのライフサイクルにおけるフェーズを意味しています。
新規開発→運用→保守開発→運用→…… と続くやつですね。
後者はプロジェクトのライフサイクルにおけるフェーズを意味しています。
要件定義→設計→開発→テスト→…… と続くやつです。
そして、(システム.フェーズ==新規開発 && プロジェクト.フェーズ==初期工程)、この参画での働きこそが、ITエンジニアにとっての腕の見せ所であり、腕を上げる大きなチャンスでもあるわけです。別の捉え方をすると、このような「腕の見せ所」となる案件への参画機会に乏しい企業では、自分の成長機会に恵まれないだけでなく、そもそも企業そのものが、顧客から実力で評価されていない可能性が高いと言えそうです。
面接でチェックする2つの比率
チェックすべきは、ずばりこの2つと言えるでしょう。
・新規開発案件:保守運用案件 の比率
・初期参画案件:中後期参画案件 の比率
採用面接で企業担当者から、聞き出すべきはこの比率ですね。なぜなら、企業ホームページには主要取引先は列挙してあっても、こんなことは書かれていませんもの。しかも、企業はたいてい、この割合は気にしているものなのです。
まず実態として比率はどれくらいなのか。そして企業はその比率をどう変えようとしているのか(していないのか)。変えようとしている場合、現状のその実態の原因は何であると考えているのか、そして変えるために何をしようとしているのか。これを聞いてみれば、その企業の考え方がよくわかるはずです。
上流という言葉に注意
面談の場では、参画タイミングのことを「上流」「下流」といった言葉でやりとりすることになるかもしれませんが、「上流」という言葉の意味は、注意深く、とらえる必要があります。
第一に、「上流」という言葉は、「上流工程」と「商流上の上流」が混同されて使われる可能性があります(第7回の記事を参照)。「上流」が商流を指す場合、「上流業務」の実態が下請けやオフショアをコントロールする、マネジメント業務であったりするわけです。
第二に、初期工程であっても、実態としてユーザ企業の御用聞きをして文書作成するだけの「要件定義」業務などであったりする可能性があります。
ただ、上の二つ、マネジメントにせよ、御用聞きにせよ、これはどちらかというと、その企業の文系力が顧客に評価されている証ではあるといえそうです。(第5回の記事も参照してください)。
一方、同じ初期工程でも「基盤構築」「アーキテクチャ構築」等々の役務で参画している場合は、純粋に技術力が顧客から評価された企業であり、自身もエンジニアとしてこれを伸ばすことが期待できる、というわけです。どちらが良いかは、個々のエンジニアのキャリアプランによるのは言うまでもありません。
まとめと次回予告
今回は面接で聞き出したい「案件比率」について取り上げました。
この比率については、気にしているエンジニアは非常に多いように感じます。知られている指標であっても、それでもなお大切で重視すべきに違いないので、あえてとりあげたのでした。一連の投稿は奇をてらうのが目的ではありませんし。
次回は企業の社員構成について考えます。