キャプチャ

ある元女性隊員の話 不合格理由を開示請求した理由

↓世界各国で活躍する隊員さん達のブログです
をクリックして頂けると幸いです。

前回まで、協力隊選考過程で判別されるであろう
「協力隊員としての資質」の話と
選考過程に納得がいかず
「情報公開制度」と「行政不服審査制度」を利用して
JICAに対して、自分の不合格理由を開示依頼した
方がいることを書いた。

その方「小保方貞代(仮名)さん」の審査請求における主張が
なかなか興味深いので、解説する。

↓総務省HPにて公開されている答申書
https://www.soumu.go.jp/main_content/000608561.pdf

貞代さん(仮名)の主張の概要

貞代は過去に2回青年海外協力隊として派遣されている。
(仮にこれをα国とβ国とする。)
β国からの帰国後も、何度か応募したが
全てが一次選考(書類選考)で落とされてしまった。
今回、不合格となった選考過程における
不合格となった理由が記述された文書の公開請求をしている。
その根拠として以下の主張をしている。

合格した時も、不合格の時も要望調査票
(こんなスキルも持った人をボランティアとして募集しているというJICA側から出された求人情報のようなもの)
に対して、応募書類に記述した
私のスキルは申し分なかったはずだ。

考えられるとすれば、α国、β国における私の活動において
不合格となる要因があったのではないかということだ。

しかし、これに関してはJICAに不合格理由を電話問い合わせした際
「活動実績が不合格原因ではない」とボランティア選考部門長からの
言質を得た。

となると、私の年齢や応募要項に記載のない選考基準を適用し、
密室での差別的、恣意的な選考がなされたのではないかと疑ってしまう。
その疑いを晴らす意味でも、JICAは選考理由が記載された文章を公開すべきである。

貞代さん(仮名)のこれまでの活動

貞代は、α国、β国の活動における最終報告書を資料として提出し

審査請求人(著者註:貞代のこと)の活動全般につきサポ ートしてもらった在外事務所所属の企画調査員(ボランティア事 業)のコメントが記載されている。審査請求人の活動実績を好意的 に評価した内容となっており,活動全般については次回の応募時に 不合格と判定されるような問題はなかったものと考えている。 資料6と8の左下部分には審査請求人の受入国配属機関に所属する 力ウンターパートによる評価とコメントが記載されている。いずれ も審査請求人の活動実績を好意的に評価した内容であり,こちらの 観点からも,次回応募時に不合格と判定されるような問題はなかっ たものと考えている。

と活動に問題がなかったことを主張している。

一方で、β国における1号報告書(派遣後3カ月の時点でJICAに提出する報告書。貞代の派遣時はネットで公開されており全世界から閲覧可能だった。現在は、一部の場所からのみの公開となっている)提出時に問題が発生したことを明らかにしている。

しかしながら,審査請求人の1号報告書提出時にトラブル発生。期限の5日前に1号報告書を提出したものの延々と 承認されず,WEBにもアップされぬことから他のボランティアから「審査請求人は期限を超えても報告書を提出していないの?」と誤解されるなどして,プライドを傷つけられることもあった。 特定国C(著者註:α国のこと)派遣時に,1号報告書提出後4日目には在外事務所が承認し,その翌日には諮問庁本部が承認したというスピード感を経験している審査請求人にとって,在外事務所承認が(提出 71日後),諮問庁本部承認が(提出97日後)というのはあまりにも遅く,信じられない出来事であった。 改めてWEBサイトを確認すると,世界の至る所で,報告書のアッ プが合意書で定められた期限より遅い事例が見受けられ,本件は諮 問庁が推進する海外ボランティア事業全体の課題であるとの認識を持つに至った。

以上の様に語り、派遣2国目β国における報告書承認の遅さに憤りをあらわにしている。
おそらく同期隊員から
「貞代は、期限過ぎてるのにまだ1号報告出してないの?」
と提出済にも関わらず、ダメな奴扱いされて相当プライドを傷つけられたのだろう。

報告書においてJICAに対する要望を書く欄があるが、そこには

活動報告書を期限内に提出するようボランティアにもっと強く働き 掛けてほしいとか,提出後は諮問庁承認までの日数をもっと短縮してほしい

旨を記述しJICA側のオペレーション改善を要求した。

また、協力隊員は、派遣前に合意書という契約書の様なものにサインをする。
そこには、様々な規定が掲載されており、
それを隊員が破った場合に
隊員として派遣を中止させられたり、
隊員として与えられるべき権利の行使が
できなくなる場合がある旨が記載されている。

この合意書には、報告書を期限以内に提出することも
隊員の守るべき規定として記載されている。

「期限内に出しても、本部承認に時間かかるくせにどういうことやねん!」

と憤慨した貞代は

「報告書の期限内提出 (合意書の遵守)が 相当数のボランティアにとって難しい現実があり,諮問庁(著者註:JICAのこと)がその状況を了解しているのであれば,合意書の罰則規定を実態に合わせて緩和する」とか,「ボランティアに報告書の期限内提出を継続して義務付けするのであれば,報告書提出後の甲 承認までの所要日数についても上限値を合意書に明記すべきではな いか」,などと合意書を所掌する諮問庁本部の担当に合意書改定の提案をした

そうである。
JICA本部にまで掛け合うとは、よっぽどこのことにのっぴきならない思いをもっていたのだろう。

一方で、

最終報告書(資料7)の項目4(ボランティ ア経験について)の中で,「関係者の方々に不快な思いをさせるこ とが多々あったのではないかと,反省している」とあるのは,上記 したような審査請求人の行動を意識してのものである。

と関係者を気遣う、おちゃめな一面ものぞかせている。

貞代が考える不合格理由

なぜそれまで一次選考で不合格になり続けたかについて

以上の活動実績のいずれか,特に最後の紹介事例(著者註:JICA本部に合意書改定を提案したこと)が諮問庁内で問題視された結果,その後審査請求人がいくらボランティアに応募して も,諮問庁は書類審査段階で常に不合格と判定する行動に出た,というのが審査請求人の考える不合格の原因である。(中略)このような活動実績を判断材料にして審査請求人を諮問庁が不合格と判定したのであれば,諮問庁の行った行為は密室で の差別的で恣意的な選考であった,といわざるを得ない。

として、JICA本部にまでクレームをつけたことが災いし、
その後何度応募しても書類選考で落とされているのではないかと推測している。

不合格から一転、合格に

実は、この審査請求の手続きの途中で、貞代が出した応募が一次選考で合格している。

補充理由説明書及び意見書の内容に関係する新たな選考事例が発生 したので,この場を借りて以下に詳細を記しておきたい。(中略)諮問庁(著者註:JICA)との関係が微妙な時期にあり,かつ連続特定回の一 次選考不合格という逆境下ではあったが,募集案件の中に審査請求人のスキルに合った案件を見つけた時には迷わず,「応募しない」 ではなく「応募する」側の行動を選択した。(中略)以上のような背景の下で諮問庁による選考結果は,審査請求人の予 想に反して「合格」。合格判定となった応募案件は,活動先が特定国D(
α国でもβ国でもない新たな国),職種が特定分野で,特定活動といった内容であった。

見事に念願、久方ぶりの一時審査合格を勝ち取ったのである。
これで、貞代の喜びも一入ではと思いきや

特定国Eや特定国F(著者註:両国とも不合格となっている)の一次選考結果が的を射たものであれば,今回 の特定国D案件も当然ながら不合格判定となるべき

と今度は、今回の合格がおかしいのではないかと主張している。

なんとも難しいお方だ。

久しぶりに挑んだ二次面接

結論的には、貞代の挑戦は残念ながら二次面接で不合格となった。
その面接の様子を以下の様に振返っている、

今回久しぶりに臨んだ二次選考の人物面接では,面接官から「特定年齢B(著者註:39歳)の今回が最後の応募と思うが,なぜそこまで応募にこだわる のか理由を教えてほしい。」との質問が特定時間(当初予定は特定時間)に及ぶ面接時間の最後に出て,驚いてしまった。 特定年齢Bではあるがボランティアとして海外に出て活動したいと 希望する応募者に対して,「意欲にあふれているね」とか,「気持ちは若いんだね」といった心のこもった好意的な質問をされたよう に感じることは,残念ながらできなかった。

貞代のこれまでの苦労や、面接に臨んだ意図を汲み取り
面接官には
「意欲にあふれているね」とか「気持ちは若いんだね」
と慰労の言葉を貞代に投げかけてあげて欲しかった…。

最後に、ひとつ気になるのが
2度の派遣で4年に渡る活動期間で
不条理が多い新興国において果たして貞代がどの様な活動を
してきたのか、ということです。

これだけ、繊細で律儀な人だと
色々と苦労されたと想像できるのです。


ケニア滞在についてお話ししたポッドキャスト↓

https://podcasts.apple.com/jp/podcast/fm-%E3%82%82%E3%81%AA%E3%81%8B/id1474033014?l=en&i=1000462932983


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
↓人助けと思ってクリック頂けると幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?