スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け(EP9)を見た感想を書くぞ!
というわけで、葬式に行くかのような気持ちで最後のスターウォーズを見に行った。
以前のEP8はローズとかいうゴミキャラの出演、突如フォースに覚醒するレイヤ姫、など色々な無理やり展開があり、しかもその展開がことごとく面白くないという、恐ろしい恐慌状態を生み出していた。
今回も改悪は健在だが、EP8に比べるとだいぶ見れる映画にはなったな、とは思った。
それでも甘く見て凡作程度であり、少し厳しく見ればあっという間に駄作の仲間入りだ。前作EP8がクソすぎたせいでハードルが下がっているのが、相対的にマシな評価になったと言える。
一応、SWシリーズは今回で一応の終焉を迎えたわけだが、さらに続編を作るとしたらもういらないし、多分作られることはないだろう。
名作映画シリーズなだけに、最後がスカイウォーカーの夜明けではなく、ほぼ落日、幕引きになってしまったことには残念な気持ちもある。
さて、以下ではネタバレ上等でレビューしていくので、気をつけていただきたい。
大きく分けて2つの点に分けてレビューしていきたい。
1.キャラクターがグダグダ
まずはローズの扱い。これはドラの危険牌を引っ張ってきたようなものであり、どう処理するかで迷うところだ。ここで処理を間違えれば、一気に振り込んで試合終了になってしまう。
EP9で取られた手法は、「いないものとして扱う」だった。
実際にローズはいるのだが、特に活躍することもなく、ローズとフィンのロマンスもなく、まるでいないかのようなキャラとして扱われている。
違和感しかないわけだが、こいつの描写がカットされたことで、逆に映画がスマートになれた、とも言えないことはない。さすがに映画製作者も反省したのだろうか。
ただ、だったら「生かさず殺さず」よりかは「名誉の戦死」でもさせてやったほうが良かったのではないだろうか。
結局生き残る上、フィンは途中の惑星(草原と荒波の惑星。デススターの残骸が海に転がっている惑星)で黒人カウガールに出会ってしまう。しかもこの黒人カウガールも元ストームトルーパーだということで意気投合してしまう。しかも二人っきりでいい雰囲気だし……
完全にロマンスの相手を選択し間違えている。
あと、これは個人的に思うことだが、「子供のときにさらわれてファーストオーダーとして訓練された」ということらしいが、そのことに対しての人間的、心理的トラウマや苦労などが全く描かれていないのにも不満がある。
また、ここでフィンが実はフォースを感じ取れる、という能力があることが判明。お前、そんな強かったんかい……
フォースを感じ取れるなら、フォースの暗黒面を感じ取れると思うのだが、こういうやつが暗黒面を見て恐怖したり、ファーストオーダー時代がフラッシュバックしたり、という描写も特にない。
基本的にお気楽黒人キャラ枠としての地位にいる。
まあ、このことを今更言っても仕方ないのだが、シリーズ最後ということでついつい言いたくなってしまう心情をご理解いただきたい。
この黒人カウガールとフィンがいい雰囲気になったせいで、観客としては「まさか子供向け銀河映画で不倫でもするんかな?」という気にさせられたが、さすがにそこは銀河的にまずかったのだろうか、そのままハンソロの友人で若本声のオッサンについていくことになった。
ていうか、最初からこのカウガール役をローズ役で出しとけば良かったんでは……?
次はレイア姫のフォース覚醒である。これはEP8で覚醒したのだが、EP9の最後の方でレイア姫がフォースの修行をしている描写があったりして、さらにメチャクチャなことになっている。
ていうか、そもそもレイア姫は姫なのか、将軍なのか、何なのか、この新世代三部作を見てきて何一つ判然としないのだが、共和国の政治体制はどうなっているのだろうか?
今までは一応元老院やら帝国やらの政治情勢が少しではあるが一応の描写はされていた。新作部作のパドメやジャージャービンクソなどがそうだろう。
今回はそういう描写すらなかった。
普通に考えると、将軍というのは軍事部門のトップだから、姫とは別の、軍人などがなるのが普通であろう。
姫というのが具体的にどういうポジションかまでは分からないが、ここで姫とは政治家と仮定しよう。そう考えると、政治家と将軍とは別ではなかろうか。
姫は政治や外交を担当して、将軍が戦争指揮を取るのが普通ではある。
EP8では敗走中であるため、適切な人材がおらず、仕方なく将軍も兼任していた、という見方もできなくはない。
しかし、この場合だとEP9開始時にあまり絶望的な状況でもなく、敗走している悲壮感も特に感じないのはどうなんだろうか。
さらに適切な人材がいない、と言ったが、その割に死んだときにあっさりとフィンたちに後継を託す。いきなり託すよりかは、普段からある程度の地位につけておくのがベターだろう。しかもフィンたちはどちらかというと下っ端の指揮官といった感じで、そいつらがいきなりレイア姫のあとを継いで全指揮を取ることに誰も不満や恐れを抱かないのも疑問に感じた。
この辺はレイア姫の役者が死んだりして、脚本が変更になった可能性もあるので、全部がだめとまでは言えない。しかし、落ち目のシリーズというのはここまで不幸が重なるものなのか、とフォースの運命に皮肉を感じざるを得ない。
次はカイロ・レン関係である。
最近は会社社長から芦名源一郎、カイロ・レンと言った剣士系キャラにジョブチェンジしている感がある中の声優さんであるが、そんなことはどうでもいい。でもこの声優の声は凄みがあってかっこいいね。
さて、その声優を活かせているのかどうかだが、レンくんは総大将のくせにとにかく敵地単騎突撃をしたがる、という項羽みたいなところがある。項羽みたいに無双できれば絶望感もあるのだが、いかんせんレイの方が強いため、ほぼ返り討ちにあう始末……
また、今回また新しい部下を新調しているのだが、この部下も見た目ナズグルっぽい感じでかっこいいオーラを出しているのだが、オーラだけで実力は一切伴っていない。
ナズグルは飛竜に乗ってドワーフたちを追いつめるなど、かなり敵として強敵で執拗であり、絶望感もあった。ちなみに『シャドウ・オブ・ウォー』というゲームでは、ナズグルも出てくるが、ワープで瞬間移動しながら切りつけてくるというかなり鬼畜なボスになっている。
その話は置いとくとして、とにかくこのレン君の部下たちはなんの活躍もせずに、レン君によって粛清される。
パルパティーンの復活もそうだが、結局年寄りたちが出張ってきて戦うために、こういう新キャラの活躍するところがなくなってしまった。さらにEP1では赤鬼、EP2ではデューク―伯爵、EP3ではクリーバス将軍など、いわゆる中ボスキャラというのが存在感を放っていた。今回の新世代三部作では、結局三部作通して魅力的な中ボスは登場せずじまいだった。
レン君の部下の話に戻るが、この部下は6人くらいいる。ナズグルでもそうだが、普通は6人いたら6人はそれぞれ散っていって任務をこなすと思う。そういう描写すら特にない。普通はコイツらを使って共和国派の惑星を攻略させたり、レイア姫のいる場所に奇襲させたりするものだが、そういうこともしない。本拠地に奇襲、などすれば、先ほども言ったように防衛戦もできるし、そのときにいらないキャラのローズを名誉の戦死させてあげればいいのではなかろうか。せめて戦争しているのだから、戦争を描写する、という気概くらいは見せて欲しい。
ちょっと話に出たが、結局ラスボスはパルパティーンである。そしてレイは皇帝の孫らしい。
え、子供は……?
子供は強くなかったのか、何なのか……
レイが何かの子孫じゃないか、という予感はEP7からしていたが、その予感は悪い形で命中することになってしまった。ひょっとしたら俺にもフォースが感じ取れるのかもしれないな……
というのは置いといて、今回の新世代三部作は「旧三部作の登場人物たちの数十年ぶりの同窓会」以外のなにものでもない、ということが明らかになった。
いちおうは「新世代三部作」と銘打たれているが、実質は「旧世代同窓会三次会」なのだ。
全く新キャラに何もいいところを感じない。そして足を引っ張り続ける老害たち……
人物に魅力がないと、面白い物語を作るのは難しい。
あとは個人的に気になったのは、チューバッカであろうか。死んだと思ったら実は生きていた、という展開なのだが、正直、個人的には興ざめした。
あの状況でどこにもう1隻の船があったというのか。しかも拷問室に連行された割には拷問などの跡も特になく、これも興ざめの一因である。こういうときにナズグルもどきがそれぞれいろんなフォースを使ってレイたちを追い詰める、などの作劇上の工夫が欲しかった。ていうか脚本家はそれくらい提案できなかったのか……
最後になるが、レン君は今回もマスクをつけたり外したりして、中二病に酔いしれている。
せめて同じマスクつけた影武者使うとか、何か相手の裏をかく手段に使うなど、いくらでも利用方法はあると思うのだが……
いい加減に項羽ごっこは終わりにして欲しい。項羽気取りするなら、せめて共和国兵を10万人ほど生き埋めにするなどの残虐行為を行って欲しいものだ。
さて、ようやく2つ目のツッコミどころ……
それは戦略・戦術がしっかりしていないところだろう。
キャラのところでも述べたが、レイア姫たちはどこかの惑星でのんびりと将軍ごっこしている。普通は敵が激しい追撃をしてくると思うのだが、そういうこともない。敵は常にレイを探すために全人員を使っているようだ。
そんなことをしなくても、レイの後方地帯、つまり策源地を奪い取れば、レイたちもそこに対処しなくてはならなくなる。
自然とレイをおびき寄せることになる。
一番クソだと思ったのは、パルパティーンの用意した戦艦部隊だろうか。
この戦艦部隊は惑星破壊砲を全ての艦に装備している。
どう考えてもオーバースペック過ぎるんだが……
普通は艦隊というのは戦艦、駆逐艦、巡洋艦、揚陸艦(この場合は惑星地上降下用の艦ということになる)、空母艦、工作・支援艦など、役割ごとに分けておくものだろう。
どこの世界に一種類だけの艦で統一するバカがいるというのか。
惑星破壊砲を備え付けた艦など、せいぜい何隻かあれば十分ではないか? そいつらを銀河のいろんな場所に散らばらせて、共和国派の惑星を同時に攻撃させればいいだろう。とてもではないが、共和国の残党たちに対抗できるとは思えない。恐怖の惑星破壊砲による脅しの効果によって、他国を政治的にも帝国に寝返らせることが十分にできるだろう。このあたりは「ダイの大冒険」の最後の方で、黒のコアを世界各地に配置したりした手法が記憶にある人はあると思う。せめてそれくらいのことはしてくれ、ということだ。
まあ、全艦統一は見た目がかっこいいから、という中二病みたいな理由で百万光年譲って見逃すとしても、戦力を整えたならさっさと敵地へ侵攻していけばいいのに、何もせずにチンタラ惑星大気圏内に停留しているというていたらく……
しかも大気圏内ではバリアは張れないというポンコツ仕様……一回プレデターに技術支援してもらえ! それかインデペンデンス・デイのエイリアンに1隻母艦分けてもらえ!
そもそも、惑星上は不毛の大地で特に惑星上から補給など支援してもらっているとは到底思えない。だったらさっさと軌道上(宇宙空間)まで浮上して、そこで停留していればいいのではないだろうか。それなら有事の際にすぐにバリアを張って防御できる。
せっかくの性能があるのに、その性能を何ら活かせることのできない場所に自らとどまり続ける……もはや戦術や戦略という概念すらない軍隊未満の軍隊同好会かな?
さらにこの艦隊、宇宙空間に浮上するのに管制塔から信号を送ってもらって同期しながら浮上する必要があるという。この設定も正直意味がわからないが、ここではこれを受け入れるとしよう。
それでも、管制塔が一個しか用意されていないという体たらく、案の定その集中した機能をフィンたちに狙われることになる。
そんなもん、非常事態なんだから、適当にラインかスカイプで(もちろん、軍事用に自ら用意したクローズドな通信アプリで、ということである)提督が各艦長に「ただちに浮上せよ!」ってメッセージでも送れば済む話じゃないのか? おめえらはバリアも張れない大気圏内でチンタラ何やってるんだという話である。スタバでドヤってたんか?!
という感じで、全く戦争する気が感じられない!
あとは技術的な退化であろうか。
かつてはストームトルーパーはクローン兵だった。その前はドローン兵である。
これはSWシリーズ全般に言える話だが、どう考えてもクローン人間よりロボット兵のほうが強いだろう。
人間である以上、飯も食うし水も飲むし、睡眠も必要だ。
ロボットには電気さえあれば何もいらない。もちろんメンテナンスも必要だろうが、人間だって精神的に傷を追う場合もあり、ロボット以上に世話が必要なのは明白だろう。というか、ロボットのメンテナンスも、メンテナンス用のロボットを作れば賄えるのではなかろうか。SW世界の技術水準を知らないが、R2D2みたいなロボットがいるのだから十分考えられる話だと思う。
そしてR2とC3POは、あれだけ昔からいるにも関わらず、新世代3部作でも現役のマシンとして活躍しているなど、どれだけハイスペックマシンなのだろうか。多分、ロボット・AI技術は新三部作時代(映画だと一番古い時代)が最も発展していた、ということになる。そこからなぜかクローン技術という、進んでいるのか劣っているのかよくわからない技術へ移行。
技術的にクローン人間量産の方が難しそうではある。なにせ子供のクローンならいざ知らず、大人のクローンを作るのだから、かなり難しいはずだ。そこに付け加えて、戦争のための技術や知識もあらかじめ仕込んでおかなくてはいけない。
ロボットなら経験はデータ化しているため、簡単にコピーすれば済むはずだ。人間の経験という微妙な感覚をクローンたちにインストールするのは、かなり高度な技術ではなかろうか。
しかし、これは戦争である。戦争に求められるのは「勝つこと」であり、ハイテクかどうかではない。
そう考えると、戦場が宇宙である以上は人間にとって過酷な環境であり、やはりロボット兵の方が有利ではないだろうか。
新世代三部作では、もはやこのクローン技術も失われてしまっている。そこらへんの惑星から子供をさらって、兵士として教育しているという。
もはやアフリカのテロ組織やゲリラ組織と変わらない程度に落ちてしまった。
こういった兵力の大量安定供給ができなくなった時点で、帝国だろうが共和国だろうが、覇権というのが成立し得なくなる。
EP9の最後では、お約束通り銀河中から増援が駆けつけてくるが、これを見たファイナル・オーダーが「民間人がやってきたようです!」とかなりうろたえていた。
この戦いに勝っても、銀河は安定しないだろう。各自が武装した状態では、各地に武装勢力ができてしまい、不安定な連立政権になってしまうからだ。戦国時代の日本、中世ドイツなどを思い浮かべれば想像は容易いと思われる。
やはり、中央政府が武力を独占することで安定的な覇権が築かれ、平和が訪れる。そういう意味では、EP9は何も解決できていないように思える。
ここで政治の話に移動する。戦術や戦略を語るのは素人、とはよく言われる話で、玄人は兵站を語る。兵站というへその尾をどうやって切り取ってしまうか。それが実際にはかなり重要であるからだ。兵站のない軍隊は、経戦能力を失ってやがて自壊する。これこそ戦わずして勝つ、の理想的な形である。
兵站や戦略には、政治も関わっている。安定した兵站を維持するのに、強力な政治組織は絶対不可欠だ。さらに政治を支える経済力も必要である。
そして外交も超重要だ。自国を強くしようとしても、界王拳のように簡単に国力を倍にすることは難しい。しかし外交で自国と同じ強さの国を味方に引き入れれば、戦力を短時間で倍にすることができてしまう。
戦術、戦略もできていないのだから、EP9にこれら高度なことを求めて仕方ないだろう。今までのスターウォーズも細かいところはガバガバであるのは十分承知しているが、少なくとも「そういう描写が少し」くらいはあったはずだ。
それすらもなくなってしまった……
総評に移りたいと思う。
今回のEP9は、EP8がクソすぎたせいで相対的にマシに見えるが、だからといって作品自体の出来が良いわけでは決してない。最後にふさわしいかといえば、そんなことはない。ぶっちゃけなかったほうがいレベルだ。またドラマ化するようだが、背後にディズニーがいる限りは、内容に期待できそうにない。
むしろ最近発売されたゲームの方が面白そうだと感じた。
ジョージ・ルーカスも版権をディズニーに売ったということは、もうSWはやる気がない、ということだろう。
面白いシリーズだったのに、それがこんな形で終わってしまって、スカイウォーカーは夜明けなのかもしれないが、観客の心は暗黒面堕ちだろう。
最近のハリウッド映画全般に言いたいことだが、明らかに全体的なレベルが低下していっている。CGなどで映像「だけ」なら豪華になっているが、作品のレベルは低下しているように、少なくとも個人的には感じる。オリジナル作品が少なく、リメイクやシリーズものが異様に増えた。あとは原作付きの映画……
もうそろそろ映画というコンテンツ自体が終わろうとしているのだろうか。別に今の映画に文句を言いたいわけではなく、面白い映画をみたいだけなのだが、なかなかそういう映画に出会えないのはどういうことだろうか……
老兵は昔の面白かったときの映画を見ているのが、いいのかもしれない。