父に見せられる写真
以前所属していた写真コミュニティで、大阪で合同展をやるという企画が立ち上がった。大阪のあたりには父が住んでいるので、父に展示に来て写真を見てもらえるかもと思った。けれども、アマチュアの創作活動に触れてなさそうな父にセルフポートレートを見せてもふうん、で終わってしまいそうな感じがしたので、合同展には出なかった。
それからしばらく父親に見せられる写真については忘れていた。
……が今月頭に帰省した時の父とのやりとりでそのヒントを一つ掴んだので記しておく。
親戚が結婚式を挙げることになったのだが、この歳まで結婚式に参加したことがなく服装に自信がなかった。
父が結婚式に関連して、礼服をどこで買うとお得なのか話していたので聞いてみたら、父は「30年以上も生きていて知らないのか情けない」と怒らせてしまった。これまで調べようとしなかった私に腹を立てたのか、はたまた今回の出席にあたり金銭面で援助してもらったという身分で祝福したいと見栄を張ろうとしたのがきに食わなかったのか……
とは言いつつも、結婚式の服装を揃えてやると買い出しとレクチャーをしてくれた。優しい父親である。しかし買い物中「情けない」と何回も何回も言うので、15回目くらいで流石に私も耐えられなくなってしまった。
耐えられないなりに買い出しは無事着地した。でも学校中退してダメなりに頑張ってきたこれまでの人生を「情けない」とされて辛い。とはいえ私もこれまで学校中退など父に酷い仕打ちをしてきたので、ここまで言われるのは仕方がない。でもモヤモヤする……
その時ふと思い浮かんだ。
「情けなくない」自分を撮ればいいのでは、と。
ところで「情けなくない」状態とはなんなのだろうか。
いい歳して結婚式などの常識を知らないこと、稼いでいないことが「情けない」のだとしたら、常識を身につけ援助を要しないくらい稼げば自然と「情けなくない」姿になるのかもしれない。
もし自身の「情けなくない」姿を撮れたら、展示に父を呼ぼうと思う。