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"Halo at 四畳半"活動休止に纏わるすべて

photo by オチアイユカ

①はじめに

僕がVo&Gtをつとめる千葉県佐倉市発のロックバンド"Halo at 四畳半"が活動休止をしてから1年が経過した。しかしながら、僕らの伝え方が不十分だったせいで「なぜ"活動休止"となったのか」を明確に言語化できる人は少ないように思う。この記事はその疑問を解き明かす、ハロを愛してくれているすべての人達へ贈る永久保存版のラブレターであり、謝罪文である。

奇しくもハロの初ワンマンが開催されたのと同日5/14、そして渡井翔汰ソロプロジェクトVarrentiaの初音合わせの日に敢行されたこのインタビューは、僕から直接黒澤さんに依頼をして実現した。"活動休止の真相"が伝わりきっていないことは僕自身理解しており、しかし改めて伝える場を持てずにいた。そんな中きたる来月7月からVarrentiaのライブ活動が始まる。このタイミングで話をしないと、新たな活動と正面から向き合えない気がした。

この記事はハロを思ってくれている人にとっては所々ショッキングな内容を含むものだと思う。ただ、包み隠さず伝えることがハロらしさだとも思うし、自分自身にとってもひとつの区切りとなったから、受け取れる人には是非最後まで受け取って欲しい。

それでは以下、インタビュー記事となります。
(17,000字を超える長文なので心して読んでね)

※インタビューは渡井のみで行い、その後メンバーと室さん(Mg)に内容確認、公開許可を得てから公開しています。

 『渡井翔汰→Halo at 四畳半→Varrentia』という物語を少し振り返る。

 渡井翔汰という音楽家は、Halo at 四畳半というバンドとして音楽シーンに足を踏み入れた。千葉県佐倉市で産声を上げたバンドは、インディーズ時代から同世代のバンドと共に独特の歌モノバンドシーンをライヴハウス界隈に巻き起こし、その登場人物となっていた多くのバンドがメジャーシーンへ。その中で彼らはZepp DiverCityでのワンマン開催なども含め、全国にファンを広げ、ワンマンツアーを全国各地で開催できるバンドとして歩みを進めていた。

 その中で訪れた、突然の活動休止。そこで、ファンの心理を更に複雑にしたのは「活動休止」であるにも関わらず、音楽活動を始めるメンバーがいたことだ。
 その中でも、メンバーの中で唯一表舞台へ足を進めたのがフロントマンである渡井翔汰。

今回のインタヴューは、彼の現在地に迫ると共に、複雑に絡み合った結果ヴェールに包まれることとなってしまったHalo at 四畳半というバンドに冠された「活動休止」というキーワードを解き明かすものでもある。
 だからこそ、このインタヴューは、ある種非常に奇妙なものだ。何故なら、このテキストは或る音楽家の一種の贖罪に近い告白であるから。

 Halo at 四畳半として、そして漕ぎ始めたVarrentia(読み:ヴァレンティア)としては勿論、何よりも渡井翔汰という独りの人間として語った1万7千字に渡るロングインタヴュー。余りにも真っ直ぐに向けられたバンドとファンへの愛が生んだ我儘の真相、そして彼が綴り続ける物語の行方を感じて欲しい。

(interview&text:黒澤圭介)

②完全に渡井翔汰という一個人として話すという前提です

■こうして渡井と改まって話すのは久しぶりだね。

「はい、よろしくお願いします」

■まず本題に入る前に少し振り返らせてください。今日は2022年の5月14日ですが、2020年の11月にHalo at 四畳半の活動休止がまず決まりました。

「そうですね、その時はまだ表には出ていないですけどあってます」

■そこから2021年1月に活動休止を発表、そして2021年6月にラストライヴと共にHalo at 四畳半は活動休止に入りました。その後渡井としては、まず「渡井翔汰」として弾き語りのツアーを各地で行い、そしてVarrentiaとして楽曲をリリースしてきました。

「そうです、うん」

■そこで改めて確認したいのは、このインタヴューは誰の話を聞けばいいのかな?ってことなんです。

「それはHalo at 四畳半でもあり、Varrentiaでもあるんですけど……完全に渡井翔汰という一個人として話すという前提です」

■わかりました。そもそもこのインタヴューは、さっき簡単に振り返ったタイムラインで起きた様々なことをスッキリさせたいという、渡井の言葉から行うことになったよね。

「各所各所、ラジオだったり、それこそ別のインタビューだったり、自分でやってる個人的な配信だったり……いろんなところで話はしたものの、そのすべてに触れないと話が繋がらないっていう状態になってて。多分、何がどうなってるのかをファンの人に対してまるっと伝えられていなかったと思うんです。改めて誰もがすべてを知ることができる状態にしたいってところから、今回黒澤さんにお願いしました」

■うんうん。さっきも話したけど、Halo at 四畳半というバンドは2021年に歩みを止めました。もっと言えば、「解散」ではなく「活動休止」という発表をしたよね。

「それなんですよ、それ!」

■メンバーが抜けたわけでもない。

「はい、抜けてない(苦笑)」

■それなのにハロは止まってしまった。リリースやツアーもしていた中で、言ってしまえば急な話として俺にとっても飛び込んできました。

「俺にとっても急でしたから、ファンの皆さんからすれば尚更だったと思います」

■実際、活動休止の話が出始めたのはいつ頃だったのかな?

「活動休止に至る大元の話が出たのは、2020年の10月の末頃だったんですけど……ここでは包み隠さず言いますけど、実はそれより前の2019年の12月に、齋木(齋木孝平/Gt&Cho)から脱退の申し出があったんですよ」

■この話は俺自身とても覚えてます。当時、聞かせてくれたね。

「そう、直接話しましたよね。先に出た齋木の話に関しては、一度就職をして働きながらハロを続けるという決断になって一旦終わったんです。ただそこから、また新たな気持ちで頑張っていこうとなっていた中で、2020年の10月に片山(片山僚/Dr&Cho)からハロを止めたいっていう申し出があって。ーーその理由も、齋木の脱退の申し出も、言ってしまえば同じ理由だったんですよ。シンプルに、ミュージシャンっていう職業を生業としてこの先も生きていくことを考えるのが難しくなってしまった、というのが大きな理由で。今後、Halo at 四畳半を生活の中心にして続けていくことは、精神的にもしんどいという」

■うんうん。記憶が曖昧なんだけど、確か渡井と齋木に2020年の頭頃に逢ったんだよね。

「『ANATOMIES』のリリースの時にインストアライヴで札幌に行った時ですよね」

■そうそう。その時、齋木から脱退を考えたという話を聞いて。

「そうですね、その時はまだ片山の話は出てきてない時ですね」

■その時に凄く難しいなぁ、と思ったんだよね。というのも、齋木は渡井が曲/歌詞を書いているHalo at 四畳半というバンドのことを、ある意味一番愛しているメンバーだったんじゃないかな。そんな齋木でも脱退を申し出る状態になっていたんだなって。

「確かに、あいつは元々ハロの前身バンドのファンで、当時はただの仲のいい友達だったから『ギター弾いてよ』ってこっちが言ったところから始まってて。ファン始まりなんですよ(笑)」

■(笑)。その齋木の問題は一旦抜けて、片山の話が出てきたと。そこで本格的に止めるしかないとなったのは、どういう流れだったのかな?

「片山から申し出があったのは、さっきも言ったようにハロを中心に生きていくのが難しいってことで。ただ、そこに関しては正直コロナ禍だったこともあって、メンバーそれぞれ同じように考えることもあったと思うんです。だから片山から申し出があった時に本人にも伝えたんですけど、活動を止めるということに関しては、4人の中で片山が偶々言い出しただけだったと思ってるんです。片山の主張としては、Halo at 四畳半というバンドを嫌いになったわけではないし、この4人で音楽をすることが嫌になったわけではないから、それぞれ生活の主軸を別にーーつまり仕事を他に据えた上で、細々と地元の佐倉で数ヶ月に1度ライヴをやるような活動はやりたい。でも、メジャーアーティストとして第一線として頑張っていくような活動の仕方は厳しいって話だったんですよね」

③4人で守ってきたHalo at 四畳半っていうものを守り抜きたかった

photo by 安藤未優

■2020年初頭にコロナの話題が日本でも大きく報じられるようになって、あっという間に春には緊急事態宣言が出た。その後浮き沈みがありながらも、俺らはコロナと生きていくことになったよね。この期間、全国的にバンドの解散が相次いだじゃないですか。

「そうですね、いまだにその波はありますよね」

■既に名が売れているかどうかに関わらず、本当にバンドの活休/解散が増えた。その現象からもわかるように、クリティカルにコロナ禍の影響を受けたミュージシャンは、やはりライヴハウスで育ってきたバンドだなと思ってて。ライヴができないという状況下で自分たちの存在価値を見失い、メンタル的にもダメージを受けていた様子を俺自身肌で感じていました。

「そうですね。俺はHalo at 四畳半の中でソングライターという立場だったので、曲作りという大きな活動方法が変わらずにあったんですよ。でも片山からすると、主な活動ってスタジオで合わせることやライヴをするってことで。特に片山はライヴというものが本当に好きだったので」

■曲作りが俺にはあったと今話してくれたけど、コロナ禍に入って、渡井自身も音楽を創る意味やバンドマンであることに対して考えを巡らせることはあった?

「そうですね、やっぱり曲は書けなくなりました。今何を言っていいのかわからなくなってしまって……ボツにした曲も何曲かあって。どうにか意味を見出そうとして、トーク配信のようなものを通して『応援してくれるファンの人たちと曲を創ろう』という中、“フィラメント”っていう曲を創ったりもしました。何かしら理由がないと曲が書けなかったんでーーそういう意味ではスランプではありましたね」

■さっき自分でも言っていたけど、活動休止に関しては片山が言い出しただけだったと。これは書くことが正しいことなのかはわからないけど、はっきり言えばメジャーデビューをすれば必ず生活が保証されるような時代ではないじゃない。

「そんな時代じゃないですね、本当に。ただポジティヴに言えば、メジャーだろうがインディーズだろうが、それこそアマチュアだろうが、今音楽はやっていける時代にはなっていて。ただよくも悪くも、以前のようなメジャーアーティストに対する大きな夢は見れない時代ではありますよね」

■2010年代は一時期、本当に「バンド」という形態のアーティストが多くメジャーデビューを果たしていて。

「うん、メジャーデビューが流行っている感じありましたよね」

■バンドが矢継ぎ早にメジャーデビューを果たし、悲しいことにどんどんと消えていってしまった。ある意味、その波の中にハロも入ってしまったということは事実だよね。

「ーーそうですね、うん」

■ただハロの場合はメンバー自体がハロのことを嫌いになったわけでもなければ、バンド/音楽そのものを嫌いになったわけではない。幾つもバンドが世に出ては消えてしまうという現象が繰り返されていた中で、ハロはその中で大きな場所まで行けたバンドだったと言っていいと思うんだよね。

「そうですね、ゼップワンマンもやらせてもらえましたし」

■そこは誰もが到達できる場所ではないじゃない。当然関わっている人も沢山いたし、多くのファンも存在していた。もちろんアーティストもひとりの人間だから、それぞれの人生があって当たり前なんだけど、ある意味巻き込んでしまった人が沢山いる中で活動休止を発表する時はどんな感覚だったのかな。

「ーー片山からの話があって、その後決定的にハロが活動休止と決めたのは……最後、活動を止めようと言い出したのは俺だったんですよ。片山からハロを主軸には生きていけない、でも地元で細々と活動は続けていきたいって話があった中で俺が最初に思ったことは、ハロを聴いてくれている人が全国にいてくれて、ワンマンツアーも回れるような存在になってきていたってことで。そんな中で急にハロが千葉で数ヶ月に1回ライヴをするだけの存在となってしまったら、それはもう名前がHalo at 四畳半なだけで、本当の意味でHalo at 四畳半とは違うよね?と俺は言ったんです。もちろん俺はハロのことを嫌いになったわけでもないし、コロナ禍でいろいろ考えはしたけど思考の出口は活動休止でも解散でもなかった。でも、メンバーが止めたいと思ってしまっているのであれば……片山の人生も、4人で守ってきたHalo at 四畳半っていうものも、守り抜きたかったんですよね」

■活動を縮小したHalo at 四畳半ではなく、今まで愛してもらっていたHalo at 四畳半のまま終わりたい、ということだよね。

「そうです。その結果『じゃあ解散だね』となったんです。でもその時に白井(白井將人/Ba)が口を開いて。白井はずっと、ハロのことが好きだからどんな形でも続けていきたいって言っていたんですね。ただ渡井の意見も片山の意見もわかるから、俺はどんな結論になろうともその意見を尊重すると言っていて。ただ、もし解散っていう結果になるとするなら、白井は今後も音楽業界での活動を続けていきたいという想いがあって。その中で『Halo at 四畳半の白井將人』として生きていきたいから、解散をしてハロを無くさずに『活動休止』という形で発表したいって言ったんです」

■解散ではなく、名前を残して白井は生きていきたい、と。

「『ex.Halo at 四畳半』ではなく、『Halo at 四畳半』の白井將人として生きていきたいからって。それに関しても、俺は片山の意見と同様に白井を尊重したかったし、齋木も片山も白井の言葉を受け入れたんですね。そして、結果的に活動休止と発表をすることになったんですよ。そもそもこの話をする前提として、もしハロのファンの人がこのインタヴューを読んでくれたとしたら、今のハロの状況に関しては、誰でもなく間違いなくメンバー4人全員の意志の結果として捉えて欲しくて。確かに、解散ではなく活動休止になった理由は白井の個人的な理由だったりもするんだけどーーそこで生まれた誤解が凄くあると思ってて」

■うんうん。白井のその想いは、彼が今後ハロの名前を利用して活動したいというものとは間違いなく違うよね。白井なりのバンドへの愛情表現として、どんな形になろうともハロという存在を掲げて生きていきたいということだね。

「その通りだと思います。あいつの元々の意見としては、どうあれHalo at 四畳半が大事だから、どんな意見になっても俺はついて行くというところから始まってて。どう転んでも、Halo at 四畳半として生きていきたかったということで」

■当時、俺自身もSNSで少しファンの反応を目にしたりしたんです。ハロが活動休止となって、その後初めて表立って活動発表をしたのは白井だったじゃないですか。

「うん、そうですね」

■彼は今裏方のプロデューサーとして凄く頑張っていて。ハロのファンの中には、そんな彼に対してHalo at 四畳半という名前を利用して好きなことをやっているように感じてしまう人もいたんだと思います。ただそれは、4人のバンドのことを本当に愛していたからこそ生まれてしまう葛藤だったんだと思う。齋木に始まり、片山の話があり、渡井の話があって、白井の話があった中で迎えた「解散」ではなく「活動休止」という選択は、実際には「解散」へ進んだバンドのメンバーがHalo at 四畳半を大切にしたいという想いによって生まれたものだった。それが現在の少し奇妙な状況を産んでしまったんだね。

「そうなんですよ。俺らは活動休止と発表をしているので、頻繁に『Halo at 四畳半はいつ復活するんですか?』と今も沢山質問をもらうんですね。ただ今話したような事実があったので、復活の目処は立っていないといろんな場所で言ってはいたんです。その中でも、俺自身が昨年の9月ごろにSNSの質問に答える機能で、ファンの方からの質問に『事実上の解散なので復活の目処は立っていない』と言ったんです。そのことによって複雑な気持ちにさせてしまった人もいて、結局活動休止になった理由もよくわからない状況……その気持ちを払拭させたくて、今回こうやってインタヴューをお願いしたんです」

④活動休止って発表したのは完全に4人のエゴ


■ーーこれは俺がドライな考え方なのかもしれないけれども、今日改めて渡井と話していてHalo at 四畳半はやっぱり解散したんだなと思いました。そうだよね?

「……はい、そうです」

■今活動休止としているのは、あくまで各々がHalo at 四畳半を大切にする気持ちが現れているだけ。

「そうです。白井が言い出したことですけど、それを3人が受け入れて発表したので、全員の意志です。Halo at 四畳半っていうものを残しておきたかったという」

■そうだね。だから、これもエゴかもしれないけど、同じようにファンの人にも感じて欲しいと思う。実質の解散ということに対して前向きに捉えられないファンはもちろんいると思うのだけれども、逆に言えば、ファンが大切にしていたものを殺さないという選択を取ったメンバーの気持ちも汲んであげて欲しいなと思う。

「そうですね。片山もこないだ実家のケーキ屋さんを継ぎますってお知らせをして。白井は音楽の活動はしているんですけど、あくまで裏方として。そして齋木は大学にまた通い始めてます。だから唯一、俺が表舞台に立って音楽を続けている状態なんですよね。側から見て、ハロが活動休止の状態なのに、俺が本格的にVarrentiaとして活動をしていることが矛盾しているように感じる人はいると思うんですよ。実際にそういう声はあるし」

■その気持ちは理解できるけど、少し思い出して欲しいこともあって。最後にハロは“星巡りのうた”という楽曲をリリースしたよね。そこで<物語を続けようか>と渡井は歌っているんだよ。じゃあその物語ってなんだろう?って考えると、それはバンドの物語ではあるのだけれども、根本としては渡井、齋木、白井、片山という人間の人生が綴ってきたものじゃないですか。つまり、その人生であり物語は今も終わってない。あの歌はハロに向けた餞のようなものであるけど、先に続いていくための歌。だからハロが選んだ「解散」なんだけど「活動休止」という結論は、メンバーの意志だけを考えれば正しいものだったと思う。

「ーー俺は大事なものを守りたかったんですよ。大事なものっていうのはもちろんHalo at 四畳半も大事なものなんですけど、その前に白井將人、齋木孝平、片山僚というメンバーで。人生の中で最も共に過ごした3人の友人を大切にしたかったんです。3人にはそれぞれ望む人生を生きて欲しいし、その中には俺自身も含まれてて。メンバー、そしてHalo at 四畳半、そしてその音楽を聴いてくれる人のことを守るっていうと大袈裟かもしれないですけど……」

■自分たちが止まることで投げ捨てたくはなかったってことだよね。

「そうなんですよ。だからこそ、伝えるのが下手くそだったというかーーハロは終わるんだけど終わらないよっていうよくわからない表現になってしまって」

■端的に言うのであれば、Halo at 四畳半は解散した。でも何故活動休止という形でHalo at 四畳半が残っているかと言うと、まずはメンバー4人の願いであったと。

「そうです、まずそこです」

■そしてまだ続いていく物語がある中で、綺麗事ではなくHalo at 四畳半は消えないし、消せない。だから解散っていう言い方をしなかったんだな、と俺自身はスッキリしました。

「そう言ってもらえると、安心しますね。俺自身はずっと引っ掛かってたというかーー何が一番辛いって、ハロの活動休止に関して矛盾を感じていたり、少し怒っていたりして俺に疑問を投げかけてくれる人って100%ハロのことが好きなんですよ。それが一番辛くて」

■うん、そうだよね。渡井もハロが好きだし、ファンもハロが好き。じゃあ、なんでハロができないの?っていう話になっちゃうのかもしれないね。

「そこは活休をした時に出した俺のコメントがすべてで。Halo at 四畳半って独立して生きているものじゃなくて、4人が集まって1つの生き物になってる。だから、その何処かひとつに異常を来したり、悩みが出てしまった以上、Halo at 四畳半は機能しないんですよ。で、それを無理矢理生かし続けるのは違うと思ったし、ハロを愛してくれている人達に見せたくもなかったから」

■だから改めてはっきり言うべきだと思う。ハロは解散したって。ただ、何故活動休止にしているかって言うと、それぞれがハロを携えて生きていたいというメンバーの我儘なんですって。

「その言葉が一番その通りです、本当に。我儘を受け止めて欲しいな、と思います」

⑤ハロもこういうところから始まったんだよなって

photo by 安藤未優

■ここまでHalo at 四畳半の話をしてきたけど、俺は折角だから未来の話もしたいんだよね。ただその前に一言言いたいのは、今既に世に出ているVarrentiaの音楽を聴いていても、今渡井翔汰という人間とこうして話していても、Halo at 四畳半というバンドが持っていた空想と現実の間にあるものを増幅させるという世界観は、音楽家としての渡井のコアとあまりにもストライクだったなと思ってて。自分自身ではどう思う?

「思いますね、それは。纏う音楽自体は変わったんですよ。それは無理矢理変えたところもあるんですけど、それ以上に俺の音楽的な趣味が自然と変わったところが大きくて。ただ、根っこにいる曲を書いている人間が一緒なので、信念みたいなものを無理に変える必要はないと思ってて。だからHalo at 四畳半の音楽と通ずる部分は当然あると思ってます。ハロをやめたくてやめたわけじゃないから、無理に変える必要はないなって」

■もちろんVarrentiaはこれから新しい人にどんどん出逢って欲しいと思うけど、ハロのファンにも聴いてもらいたいなって思うよね。

「そうですね、それはめちゃめちゃ思います」

■貴方が好きだった音楽/バンドのソングライターが、物語という言葉を再び携えて活動を始めたんだよってね。

「うん、本当にそうです」

■実際、どういう意図でVarrentiaという名前で活動をしたいと思ったのかな?

「単純に、もう音楽を辞めるという選択肢はそもそもなくて。名前に関しては正直めちゃめちゃ迷ったんですけど、さっき話したように、俺のやりたい音楽が信念の部分で変わったわけではないので、自然とそこに着地したというかーーハロの前身バンドを始めたのが2009年なんですけど、その1曲目から俺は物語を歌っていたんですよ(笑)。だから当たり前というか、渡井翔汰が創れる音楽ってそれしかない。だから、物語っていう意味の『Narrative』という単語のアナグラムから新しく名付けました」

■時系列としては、Varrentiaとしての活動の前に渡井翔汰として『BEFORE DAWN TOUR』という弾き語りのツアーをしたよね、その時にはハロの曲に加えて、新たな曲も鳴らしていたと思うんだけど、各地を回った時間はどんな時間でしたか?

「何て言うんですか……必死でした(笑)」

■(笑)。

「音楽を続けていこうとは思っていたものの、当然Halo at 四畳半じゃなくなってしまった自分自身にどんな価値があるんだろうってずっと考えていた時期でもあって。音楽を続けたい気持ちはあるんですけど、続けたところで何の意味があるんだろうって」

■うんうん。

「そう言う意味でも『BEFORE DAWN TOUR』ってタイトルがついていて。自分自身の夜明け前ーー真夜中にいるような状況で考え始めたツアーだったんです。今までハロで回ってきたツアーというのは、応援してくれる人のためや、今後の活動を見据えてのものだったりしたんですけど、今回はそんな余裕は正直一切なくて。兎に角、歌を聴いてくれる人を目の前にすることで安心したかったんですよね。それはツアーの時も実際に話していたんですけど、本当に他のことを考える余裕が一切なくて自分のことでいっぱいいっぱいでした」

■俺自身は札幌のライヴを観させてもらって。札幌ではwarbearという今渡井翔汰として新しく出逢いたい人との共演だったこともあってか、凄く楽しそうに歌ってたことが印象的でした。

「そうですね、あのツアーを計画する段階ではどん底だったんですけど、やっぱり歌うのが好きだし、それを観に来てくれる人たちがいてくれたことでーー本当に、一番生き生きと歌っていたかもしれないです。Halo at 四畳半で感じていた喜びみたいなものとはまた少し違うんですけど、シンプルに歌を歌うことに向き合えたツアーで」

■それこそ、尾崎雄貴くん(BBHF/warbear)も「歌で勝負をしていてカッコよかった」と言ってくれていたよね。

「そうでしたね、言ってくれましたね」

■バンドという母体を失って、ただ独りステージに立つのは初めてだったわけだよね。だからこそ、ステージに立つ感覚としては新鮮な楽しさが一番大きかったのかな。

「そうですね、新鮮でした。ハロをやっている頃から弾き語りはやってはいたんですけど、帰る場所があったので、弾き語りに対してバンドのような情熱を向けることはできていなかったんですよね。本気で弾き語りと向き合って『BEFORE DAWN TOUR』を回ったし、シンプルに歌うことが好きなんだなってことを発見できたツアーでもあって」

■共演者からも刺激はもらえた?

「そうですね、本当に。みんな駄目元で声をかけた人たちだったのでーー先輩だったり、友達だったり、それこそwarbearは初めましてだったのに快諾してくれて。やっぱり此処にいたいなって思えたんですよ。このツアーで呼ばせていただいた人たちってバンドを普段はしていて、そのバンドとも共演できるくらい追いついていかなきゃなって気持ちにもなれました。消えかかってた心の炎みたいなものを再び点けてもらったようなツアー……凄い燃えましたね。うん」

■自分の名前を前面に背負っての活動は、活動休止をしたハロのO-EASTでのライヴ以来だったわけじゃないですか。今も自分の音楽を聴いてくれる人がいるという実感を得ることができたのは、音楽家として必要な刺激だったんだろうね。

「ハロの時は物販とかもスタッフが立ってくれていたので、直接会場に来てくれた人と話す機会がまったくなかったんですよ。でもこのツアーは完全にDIYだったんで、自分で物販に立って、来てくれた人と話したりして。『音楽を続けてくれてありがとうございます』って声を掛けてくれる人が本当に多くて。俺からしてみれば、音楽を続けること自体に悩みを抱えながら始まったツアーだったので、その言葉がシンプルに凄く嬉しくて。ーーハロもこういうところから始まったんだよなって思い出すことができました。共演者からもだし、ツアー自体からもだし、お客さんからもだし、いろんなものを改めて思い出させてもらったツアーでしたね」

photo by 安藤未優

⑥今冷静に聴くと、滅茶苦茶Halo at 四畳半のことを引き摺ってます


■このツアーを行う時にはVarrentiaとして今後やっていくということは決まっていたわけだよね。ツアー終了と共にVarrentiaとして“NEW DAWN”のMVを発表した時、周りの反応はどうでしたか?

「周りの反応は、ツアーで言ってくれたような『続けてくれてありがとう』って言葉が本当に多くて。9月9日のファイナルで、本当にツアーに込めた想いの通りになったというか。自分で暗闇を打ち破ろうとしたツアーだったんですけど、周りの人たちに引き摺り出してもらって」

■“NEW DAWN”はスタジアムロックの要素がある大きな世界が見える楽曲で。その中に綴られた<僕らはもうはじまりの副作用を知ってる>って言葉は凄く渡井らしいな、と思いました。

「そこは俺も好きですね、うん」

■何かを始める上では、明るいことばかりじゃないよね、就職もそうだし、新生活そのものもそうだしーー何を始めるにしても、何かを犠牲にする部分は必ずあって。ハロが終わり、渡井翔汰として再び歌うと決めてから創った楽曲にこの言葉が出てくるというのは、凄く素直だなって。

「あの曲は凄く素直だと思います。それこそ、俺の意思としては新しい音楽で生きていこうという曲ではあるんですけど、今冷静に聴くと滅茶苦茶Halo at 四畳半のことを引き摺ってますからね(笑)」

■<頷けないままエンドロールへ>って言っちゃってるもんね(笑)。意図しない形で誤解を生んでしまったけど、それでも音楽は続けたい。ただ、もちろんハロを応援してくれた人にもまた応援してもらいたいという、少しグチャっとした感情ーーツアーが始まる前の渡井がそのまま出ているよね。そして、その後リリースが続いていくと。

「そうですね、3ヶ月連続リリースをして」

■そして『FRACTAL」というEPに辿り着きます。全編を聴いて感じたのは、まず音楽的な話で言うと、バンドフォーマットという拘りは完全に捨てているよね。

「そうですね、ハロの『ANATOMIES』ぐらいから少しずつ出てきていたものではあって。ポジティヴな意味でハロの頃は4人で奏でる音楽だったので、メンバーそれぞれの役割を凄く考えながら音楽を創っていたんです。そこにロマンがあって。ただ、独りになったということを前向きに捉えると、もう何でもできるなと思って。バンドっていうスタイルに拘らない曲を書けたのはVarrentiaになったからだなって思います」

■元々渡井は物語を音楽で創りたい人じゃないですか。その物語は現実世界に近いものもあれば、寓話的な空想のようなものもあって。その脳内世界をそのまま現実世界に描こうと思うと、バンドフォーマットから解き放たれるのは必然だよね。“ユーフォリア”の時点で既にその要素は出ていたし、“蘇生”とかでも完全に意識としては出ていたね。

「うん、そうですね」

■バンドサウンドはバンドサウンドで、方法論のひとつになったって感じだよね。

「そう、俺が単純に好きなものであることは変わらないので。バンドサウンドにロマンを感じてハロはやっていたし、それは今も変わらないけど、バンドじゃないサウンドのカッコよさも知って単純に選択肢が増えたって感じですね」

■他のEPの楽曲に触れると、“Beautiful Nightmare”はEDM的な構造を、“(y)our novel”はオーガニックでありながらも今の時代のポップソングにトライしているよね。

「そうですね、自分の中でのポップの位置付けがどんどん変わって。ハロの時に思っていたポップとは変わったんですよね。“(y)our novel”は今自分が思うポップを表現したって感じです」

■EPの話に戻ると、さっき渡井自身もハロを引き摺っていたと言っていたけど、俺もそう思います。どういう意味かというと、「もう一度見つけて欲しい」という感覚が“惑星都市”をはじめとして、歌全体を通して感じるんだよね。

「“惑星都市”は確かにハロを引き摺っているような歌詞に思われるかもしれないですけど、実はそうじゃなくて。ただ、実際白井もそう思ったらしいです(笑)。最初は確かにそんなニュアンスの歌詞だったんですけど、流石に引き摺り過ぎてたんで書き変えたんです。ただ、サウンドに関しては敢えてハロを継承しています。ギターロックを捨てたわけじゃないんですよ、だから“惑星都市”を最初の作品に入れたくて。これは明確な俺の意思表示ですね」

■ハロもVarrentiaもこの世に数え切れないほど存在する音楽のひとつで。ただ、ハロは少しだけその存在に気づいてくれる人が増えたかもしれないけど、Varrentiaはまだそうじゃない。だから、もう1回見つけてね、という歌として聴こえました。それはハロを引き摺っているのではなくて、新しい星も見つけてね、ということだよね。

「そうですね。音楽の中にあるカッコよさとかロマンってそれぞれの中にあると思うんです。例えばオルタナティヴな音楽をやって、そのよさがわかるやつだけついて来いよっていうカッコよさも間違いなくあると思うんですけど、俺はずっとそうではなくて。それこそさっき話したポップのことじゃないけど、沢山の人に愛してもらいたいという気持ちが何よりもあって。自分自身を認めて欲しいっていう気持ちがきっと強いんだと思うんです。だから、内側を向いて職人のように曲を創っているタイプではなく、リスナーという存在がいて曲を創っている人間で。ついこの間の弾き語りライヴの時に、あるミュージシャンと今日のように活動休止の顛末を話すことがあったんですね。そこで「Halo at 四畳半って、ファンが決めるものなんですね」って言われて。ーー活動の幅を狭めてやっていくのか解散をするのかという問題と対峙して、そこで生まれた俺たちの考えとか選択に対して言ったことだと思うんですけど、半分合ってて半分違うと思ったんですね。最終的にはすべて当然4人の意志だし、今回も結局4人の我儘で活動休止となったけど、そこにファンという存在が大きく在るのって俺らからすると当たり前だったので……カルチャーショックのような気持ちでした」

■孤独が故の他者への愛情は、渡井にとって当たり前の発想なのかもね。“アインツェル”はまさにそういう曲に感じた。これも姿形は違えど、“惑星都市”と同様にもう一度出逢いたいって気持ちが本当に強いんだなって。

「『FRACTAL』は2021年の下半期ぐらいから創っていたんですけど、一番自分の中にあった気持ちはそれですね。新しく出逢いにいきたいって気持ちはもちろんあったけど、それよりも正直Halo at 四畳半を聴いてくれていた人たちに、また一緒に行こうよっていう気持ちが一番大きかった」

■そんな中でもHalo at 四畳半とVarrentiaの違いは、纏うサウンドスケープはもちろんそうなんだけど、それ以上にメロディのリズムにあると思ってて。洋楽に傾倒し始めたことも影響としては大きいと思うんだけど。

「そうですね、そこはめちゃめちゃ変わりました。曲自体もリズムから創ることが増えて、そこに気持ちよく言葉が乗るように意識をしたというか。歌詞に関しては、大きく渡井翔汰という枠からは変わっていないんです。ただ、それをより人に愛してもらうためにはどうすればいいのかな?って考えた時に、今自分の好きな音楽が身体に入ってきやすいものだったりするのでーーそんな音楽に、渡井翔汰の言葉を乗せたら面白いものが生まれるんじゃないかというところから始まっているんです」

■その要素が一番わかり易いのが“(y)our novel”だと思ってて。リズムも軽快だし、洋楽的にいうとポップソングど真ん中のラインにいる曲で。ポップの例で言えば、テイラースウィフトって一度は誰もが耳にしたことがあると思うんだけど、テイラーも根っことしてはオーガニックなサウンドから始まった人で。

「うん、変化はしていきましたけど元々はカントリー少女ですもんね」

■そうそう。俺は個人的にそんなオーガニックな要素もあるこの楽曲が一番好きだと思ったんですけど、その理由は面倒くさい捻くれた奴が書くラヴソングが好きなんですよ。

「(爆笑)。この曲、面倒くさいですか?(笑)」

■いや、めんどくさい「奴」が書くラヴソング(笑)。タイトルから言えばさ、この楽曲は“your song”でも“our song”でもいいじゃないですか。でも渡井は“novel”って付けちゃうんだよなっていう。

「(笑)。そうですね、確かにそれは譲れなかったですね(笑)」

■結婚式でも流せるような暖かいラヴソングなのに、どこまでも人のことを物語として捉えているという渡井の考えの根深さというか執念じみたものが垣間見えて、個人的に凄くグッときました(笑)。

「確かに、そこに対して何も思っていなかった自分がヤバイですね(笑)。素直に真っ直ぐに書いたつもりでこれですもんね」

■<君が教えてくれた小説は まだ読めていないんだ>という歌詞はそのままの意味に捉えることはもちろんできるけど、タイトルで“novel”ってついていることも含め、Varrentiaであり渡井翔汰という人間が歌うと、一気に君という人生の「物語」を聞かせてよという歌に聴こえるという。本当に面倒臭い人が書くラヴソングはいいなぁと思った(笑)。

「はははは(笑)」

■抽象論として<物語>とか<ページ>とかという言葉を使っているんじゃなくて、本当に渡井は人のことを物語として捉えているっていうことがわかる歌でした。

「ちょっとした異常者扱いじゃないですか(笑)。けど、本当に何も思っていなかったから、何も俺は言えないんですけど」

■ストレートなポップソングとしてラヴソングを創る中で、無意識的に渡井の要素が入っている楽曲だから、Halo at 四畳半とは違う捻くれ方をしていて。そういう意味で、新しくVarrentiaに出逢う人はこの楽曲から入っても面白いなと思いました。

「(笑)。けど確かにこの曲の歌はチャレンジでしたね。サビの感じは今までのニュアンスも強いんですけど、AメロとBメロの感じは今までにない歌い回しだったんで」

■メロディ自体の変化もあるんだけど、声の表情が一番違った。ある意味一人ぼっちになったからこそ、渡井の暖かい部分がグッと前に出てきたなと思って。この声は初めて聴いたな、と思いました。

「確かにそういう曲はなかったですもんね。嬉しいな、そう言ってもらえると」


⑦今はVarrentiaって小さな星だけど、その中に内包しているものを体感して欲しい


■『FRACTAL』に関していろいろ話したけど、そもそもこのタイトルにはどんな意味を込めたのかな。

「言葉の意味としては自己相似性みたいな難しい意味があるんです。物体の一部分をピックアップしてみても大元の形のようになっている、ということなんです。今回のEPっていろんな曲を創ろうと思って、今までとは違う自分の側面を出したいという想いがあったんですけどーーそのどれも、自分を写したものであることには変わりなくて。殻を破ろうとはしているんですけど、殻を破ったとて、渡井翔汰は渡井翔汰のままという主張がこのタイトルにした理由ですね」

■今日の冒頭でも話してくれたけど、今日は渡井翔汰として話しますと。その人は、Halo at 四畳半をやってきた人だし、弾き語りとしての姿もあるし、Varrentiaとしての姿もある。だから、どこを切り取っても渡井翔汰という音楽であるという意味で、『FRACTAL』は「久しぶり」ってみんなに言うにはわかりいい1枚になっているね。

「みんなが久しぶり、って言ってくれればいいんですけどね」

■そうだね。そして、最後に話したいことがあって。これからVarrentia 1st LIVE&TOUR 2022 『PALE BLUE DOT』が始まります。そのツアーはバンド形式でやるということを既に発表していて、偶々今日が初めてのスタジオーーつまり始動日とのことで。

「そうですね。もっと言えば、本当に偶々なんですけど、Halo at 四畳半の初ワンマンも今日5月14日で。気持ち悪いですね(笑)」

■そんな日に、ファンに改めて包み隠さず伝えるためのインタヴューをやっていると(笑)。

「ちょっと怖いです(苦笑)」

■(笑)。ツアーの話に戻るけど、音楽自体はバンドに拘っていないにもかかわらず、今回バンドでツアーを回ろうと思ったのはなんでなのかな?

「単純に、俺が好きなのはバンド編成だからというだけで。もちろんPCを繋いで同期を流せば全部の音が流れる時代ですけど、完全にこれはロマンです。人間が合わさって出す音という、ある種不完全なものになるでしょうし、そういうものにロマンを感じてロックバンドをやってきたのでーーそこからは離れられないですね。ことライヴにおいて、バンドだから増幅されるものって目茶目茶あると思ってて。用意した音を流すのではなくて、その場で生まれる音によって出てくる目に見えない音圧や心に伝わるものを自分自身もこれまで出してきたと思っているし、体感してきた。それをどうしても体感して欲しいですね」

■貴方の左隣にいた人、いっつも違うギター弾いてたもんね。

「あれは怖いです。病的です、同じフレーズ弾けない病です」

■(笑)。ツアーをやる、ライヴハウスに行くーーそこで生でしか体感できない空間を創る。その日にしか感じてもらえない光景を感じてもらうために、バンドでやるということは間違いなくひとつの正解だと俺も思います。

「……楽しいですからね、人と逢うって。孤独になってから思うんですけど、人と逢うって楽しいし、人と何かをするって楽しいですよ(笑)。今自分がセルフですべてやっているからこそ思います」

■ツアーは今着々と準備をしていると。もちろん、新曲もね。

「そうですね、楽しみにしていて欲しいです」

■先に聴かせてもらったけど、また違う側面のVarrentiaがいました。ハロを引き摺っていたというタームは越えたものという感じがします。

「そうですね、新曲は自然とそういうものになったと思います」

■うんうん。『PALE BLUE DOT』というツアー名にはどんな気持ちを込めたのかな。

「これは地球を遥か彼方から撮影すると、本当に小さな青い点として写ったという意味からなんですけどーー割とストレートな気持ちで付けていて。今音楽っていうものを取捨選択できる時代に、本当にイチからロックバンドを始めるつもりでいるんですよ。言ってしまえば、過去にあった輝かしさからは本当に今は小さな星になったと思ってて。ただ『PALE BLUE DOT』って凄い小さな点だけど、それって地球じゃないですか。その中にはとんでもない人間と暮らしと物語があってーー今Varrentiaは小さな星だけど、その中に内包しているものを体感して欲しいという想いがあるんです。それくらい小さい星だからこそ、見つけてくれた人にこそ、このツアーで体感して欲しいものがあって。そういう意味で『PALE BLUE DOT』ってタイトルをつけました」

■ワクワクしてる?

「してますね、スタジオに行くのにこんなに緊張したことないですからね」

■後1時間半でスタジオでしょ。

「ーー緊張してます!(笑)。ライヴならともかく、スタジオで緊張したことなんかないので」

■個人的には札幌で逢った時はアコギ一本を持っていた渡井が、今日はボードとエレキギターを持っていたことに始まりを感じたよ。

「このギター、実はこのツアーのために買って。気合入ってますよ」

■音楽家としての新たなスタートを切る中で、ワクワクできるのは凄くいいと思うし、何よりもHalo at 四畳半と渡井翔汰に対していろんな想いがある人が何も後悔しないようなライヴを見せて欲しい。

「俺自身引き摺っているわけではなくて、Halo at 四畳半のメンバーであることに誇りを持っていて。その上で音楽活動を続けるという選択をした以上、その名前に泥を塗るわけにはいかないという想いは当然あります。だから期待して欲しいですね」

■人によっては不可思議だったここまでの流れも、すべて此処に繋がっていたんだなと思わせて欲しいよ。

「Varrentiaを始める中で、新たに始めようという気持ちはもちろんあるんですけど、それ以上にHalo at 四畳半の活動がなかったら、俺はもう音楽を続けられなかったということを一番思ってて。実際今周りにいてくれる人って、今日こうして逢っている黒澤さんも含めてハロの頃に出逢った人ばかりで、Varrentiaの活動自体ハロがなければきっとできなかったと思います。滅茶苦茶当たり前だけど、敢えて言葉にするならHalo at 四畳半のことを当然捨てることなんてできなくて。こないだライヴの時に自分で言って腑に落ちたんですけど、Halo at 四畳半っていうものは消えたんじゃなくて、いなくなったわけでもなくて、自分の心の中にHalo at 四畳半の特等席を作ってあって。そいつが此処にいてくれるから、俺の命は上手いこと回ってるし、Varrentiaっていう生命体が生きていられるっていうことは、忘れずにいたいし、絶対忘れることはないです」

■その言葉に違わない未来を期待してます。

「頑張ります。今日はありがとうございました!」

(Fin.)

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