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パチスロは合法です。
この記事は、mast Advent Calendar 2024 の20日目の記事です。
前回は定積さんの「2024年度 情報メディア創成学類入試現代文 問題」でした。
ついにクリスマスが目の前になってきたので、予定創成学類になりましょう。
18歳未満お断り
この先は、18歳未満の方は入場をお断りしています。
駄菓子屋と法律
mastの2年生って、秋学期に法制度についての勉強をたくさんしますよね?
実際、周りの23生は「情報社会と〜」と「知的財〜」の単位の課題に苦しんでいる様子をよく見かけます。
ただ、その授業で扱う法律は主に著作権など、情報系に関係あるような法律だけ学びます。当たり前ですけどね。
ところで、みなさんにも好きな法律ってありますよね?
こういう記事を書いている地点でお察しかもしれませんが、自分が一番好きな法律は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」です。俗に言う「風営法」ってやつですね。
なぜこの法律が好きかと言うと、圧倒的な「抜け道の多さ」です。例えば、ショッピングセンターにある駄菓子屋とかに、絶対Switchとかが景品になっているクレーンゲームがありますよね?イーアスにもありますね。しかし、クレーンゲームに入れていい景品は「小売価格1000円まで」という規制があります。
警察庁が3月1日付で通達を出した。上限価格はこれまで「小売価格おおむね800円以下」とされてきたが、その金額が「1000円以下」に変更された。
これにはいろいろな噂がありますが、なぜSwitchなどの高額商品を景品にすることができるかというと、そもそも風営法における「ゲームセンター」の条件に当てはまらないことが大きいと思います。風営法では、以下の条件を満たしている場合はゲームセンターとしての申請は不要で、ゲーム機を設置できると定められています。
風俗営業(風営法)の10%ルールとは簡単に言うとゲームに利用する面積が客室の床面積の10%以内であれば風俗営業(5号)の許可を取らなくても良いというルールです。
ホテルやショッピングモールの一角にゲームコーナーが設けられている場合はこのルールを利用しているケースが多いと思われます。
細かい条件はありますが、店舗の一部にゲーム機を設置する場合は許可も要らず、そもそもゲームセンターとして扱われないことになります。よって、景品の上限価格の規制も受けないことになります。
でもこれって、射幸性を過剰に煽るものを規制する、風営法の趣旨に照らしたらおかしい話と思いませんか?
かなり抜け道的な営業方法なわけです。
景品交換所と法律
スロットやパチンコをしたことがない人でも、「三店方式」という言葉は聞いたことあるでしょう。これについて説明するのは、下の画像で十分だと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1734589770-fWX1UqSmzoku48TxIRjhbNw2.jpg?width=1200)
この図で何を言いたいかというと、パチンコ店の客は「賭博」をしているわけではなく、「遊技」をしているということです。(ちなみに、遊戯でもなく「遊技」です)
そもそも、ギャンブルなんて行われていないんです。遊技の結果に応じて、店が貸し出しているメダル/玉が払い出され、それを現金ではなく「特殊景品」に交換しているだけであり、これは賭け事ではないのです。つまり適法です。
そして、偶然パチンコ店の付近に「特殊景品」を買い取ってくれる古物商のお店があり、その店に景品を売ることで客は利益を得ます。これも、ただの買取であるため適法です。景品交換所は古物商として営業許可を得ています。
つまり、パチンコ・スロットは完全に合法です!!!!!!!!!
ただ、これも風営法の趣旨に照らしたらおかしい話と思いませんか?
よく言われますが、警察からのお目溢しによって営業できているわけです。
回胴式遊技機と法律
「スロット」の定義
皆さんが「スロット」と言う言葉を聞いたら、この画像みたいなものを思い浮かべるでしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1734590348-rNs0o8e4OfcVzPtjKEpB26w1.jpg)
では、パチンコ店に入ってない人は見たことないでしょうが、日本に設置されているスロットマシンの写真がこちらです。
![](https://assets.st-note.com/img/1734590431-G4oOhln6EFJSraWeNB2b1Zij.jpg?width=1200)
決定的に違うのは、液晶がついているところでしょう。基本的に、今のパチスロ機は液晶を搭載し、そこで演出を見せることで客の射幸心を煽っているのです。
例えば、下のような映像をみると、パチスロにハマる人がいる理由もわかると思います。
しかし日本における法的なスロットの定義としては、以下のように決まっています。ちなみに、スロットは「パチスロ」または「回胴式遊技機」が正式な名前です。
カジノで稼働するスロットマシンは、回転するリールが自動的に停止するのに対し、パチスロでは基本的には遊技者がストップボタンでリールを停止させる。これは、パチンコと同様に、遊技結果に対する遊技者による技術介入を求める法的要件を満たすためである[注釈 1]。
つまり、実は見た目とかではなく「遊技者の行動によって結果が決定される」ことが必要になるのです。
ですが、もし高速回転するリールを狙って7を止めることができる人がいたら、その人はずっと大当たりを仕留めることができるのでしょうか?
答えは当然NOです。なぜなら、ストップボタンを押したときから、数秒間はリールが停止しなくてもよい、つまりリールが滑ってもよいというルールがあるからです。
遊技機規則の存在
パチンコ店を取り巻く法律は、風営法だけでなく遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則というものがあります。これによって、「パチスロ」はかくあるべきだ、という要件が定められています。そして、この法律(法令)の存在によって、ついに「射幸心を煽りすぎない」ことを達成目指しています。あれ?風営法の役割は?
遊技機規則では機械的な仕組みなど(例えば、リールの回転速度)も定義されていますが、その中でも射幸性に関わる話をすると、「有利区間」というものがあります。簡単に説明すると、「有利区間というものに滞在している場合のみ、大当たりを開始してよい」というものです。ユーザーにとって有利である区間、ということですね。
では、有利区間に滞在していない台で遊技しようとする客はいなくなりますよね?だって大当たりしないので。
なので、朝お店が開いて客が1回転リールを回すと、有利区間に突入する台がほとんどです。でも、これじゃあ有利区間って何のためにあるの?という話ですね。
有利区間には以下のようなルールがあります。
規定された回転数までしか、連続して有利区間に滞在することはできない。
同じ有利区間内では、一回の大当たり(連チャン)での払出メダルに上限がある。
有利区間を終了した場合、これまでの大当たりに関する情報は無視されなければならない。
特に一番下のルールが、今の遊技機の現状に最も影響しています。
同じ有利区間内では、遊技機が製作された時期によりますが、おおよそ+2400枚程度(現金換算で48000円)しか払い出すことができません。つまり、一撃で10万円!!みたいなことができなくなったのです。
じゃあ、有利区間を終了して、もう一度始めたらもっとメダルを払い出せるじゃないかと思うわけです。しかし、有利区間終了に伴い「大当たりであった」という情報もリセットしなければなりません。そのため、大当たりでない状態、いわゆる通常時に戻ってしまうわけです。
この規制によって、射幸性が高くなりすぎることを防いでいます。確かに、一回大当たりするだけで5万円以上が得られるギャンブルって、なかなかないですよね。
ちなみに、この2400枚(48000円)という数字は、1600回転の間に使用したメダルの1.5倍以上のメダルを払い出してはいけない、という遊技機規則の規制によって決まっています。
スロットは1回転にメダル3枚を消費するため、1600回転で4800枚を使用します。その1.5倍は7200枚ですね。使用したメダルの1.5倍のメダルが払い出された場合、7200-4800=2400ということで、2400枚の壁が出来上がったわけです。
さらにさらに、パチスロ機は世に出る前に、規定を満たしているかをもちろん検査されるのですが、その試験に「出さなすぎ」ではないかを検査する項目が増えました。これにより、たくさん飲み込んで後でまとめて吐き出す、いわゆる波の荒いマシンというものが作りにくくなりました。
やりました。射幸性を抑えることに成功しました!!!
ただ、この規制によって、スロット業界は相当な客離れを起こしました。今までのパチスロ機は、運さえ良ければ平気で一回の大当たりから1万枚以上出ていました。それなのに上限ができ、1万枚の1/4以下になったわけです。パチスロの生きるか死ぬかのヒリつきに慣れていたユーザーは、たった2400枚程度じゃ面白くないわけです。
規制緩和と6.5号機
ところで、遊技機規則はこれまでに6回改定されています。規則が改正されると、前の規則を基準にして作られたパチスロ機は撤去されます。そのため、その規制に適合するマシンをn号機と呼びます。現在の規則に適合するマシンは6号機というわけです。じゃあ、タイトルにある6.5号機とはなんぞや?って話ですね。
まず、遊技機規則には「解釈基準」というものがあります。法律について勉強している皆さんはわかると思いますが、法律の言葉ってすごくお堅くて、何を言っているか正直わかりませんよね?そのために、具体的にこの基準に反したら摘発するよ、という警察からのお達しが「解釈基準」というものです。
解釈基準は、ある程度改正されます。法改正より圧倒的に楽ですから。
ですが、さらにもっと簡単に改正される規制があります。それが「内規」と呼ばれる、業界団体が設定する「自主規制」のことです。これは、結構頻繁(年に1回くらい)改正されます。そして、有利区間の詳細はこの「内規」で定められてます。n.m号機のmの部分は、内規に対応する番号になるわけですね。
じゃあ、6.5号機はどうなったのかというと、有利区間の仕様が大幅に緩和されました。具体的には以下の通りです。
規定の回転数までしか滞在できない・・・ 1500回転→4000回転に
払い出しメダルの上限・・・最大2400枚→有利区間内で使ったメダル+2400枚までに
これによって、一撃で2400枚以上の出玉を出すことができるようになりました!これならギリギリ射幸性も高くなく、出し過ぎや出さなすぎもなさそうです。
ただこの頃から業界は、「脱法」の成功例を生み始めていました。有名なのは「甲鉄城のカバネリ」というアニメのパチスロ機です。
この台はなんと、大当たりで2400枚上限まで払い出されると、一回大当たりが終了したあと、大当たりに再突入します。あれ?これってダメでしたよね?
有利区間を終了した場合、これまでの大当たりに関する情報は無視されなければならない。
ですが、カバネリは有利区間に関する規制を守っているのです。
どう実現しているかというと、「大当たりに関する情報は無視」という部分を逆手にとっています。要は、大当たりと関係ない情報は引き継げるんですよね。そのため、通常時の状態フラグに特別な値(ここではAとします)を保存し、有利区間が終了した次の回転で、そのフラグを参照した際に値がAだった場合、大当たりが当選する、という仕組みで実現しています。これは脱法と呼んでもいいでしょう。
この仕組みを各メーカーが真似し始めたことで、「一回で2400+α枚まで」という規制は、ほとんど意味をなさなくなります。
現行機は違法賭博スレスレ
せっかく業界で自主規制しているのに、カバネリのような台が出てしまうと意味がないはずです。なのに、それが罷り通るどころか各社真似を始めたのはなぜでしょうか?
それは単純な理由で、「客が飛びついてくれる」からです。みんな荒いギャンブルが好きなんです。
その後、6.5号機のさらに上をいく「スマスロ」が登場しました。これは、「スマートスロット」の略で、メダルを使用せずゲームセンターの機械の「クレジット」の様に持ちメダルを管理するマシンです。画期的ですが、スマスロを設置するためには設備の更新がたくさん必要で、お店としてはあまり導入したくありません。
そこで、スマスロには6.5号機以上の規制緩和を加えました。具体的には「有利区間には、無限に滞在できる」ことになりました。
なぜこれで緩和されたというのか、その理由は「一撃の出玉をさらに伸ばせるようになったから」です。
払い出し枚数に関する規制は変わらず、「有利区間内で使ったメダル+2400枚まで」なのですが、有利区間が無限になったことで大量に溜め込んで、一気に解放することができるようになったのです。例えば、有利区間内で10000枚が使われたとしたら、その有利区間内で引いた大当たりでは12400枚まで払い出すことができます。これで、昔のマシンのように大量出玉を期待させることができるようになりました。
しかし、大量出玉を演出するためには、当然たくさんメダルを飲み込まないといけません。そのため、当然6号機や6.5号機よりも大きく負けることが増えます。さらに、ユーザーは昔のマシンのような1万枚以上の払い出しを夢見てプレイするため、ギャンブル性が高くなってしまうわけです。これでは5号機以前と変わらなくなってしまい、緩和しすぎです。
実際、スマスロに関わる緩和の際に、「コンプリート機能」というものの搭載が義務化されました。端的に説明すると打ち止めのことで、1日に+19000枚以上の払い出しはできないというものです。つまり、どんなに大当たりが続いても38万円までが限界ということです。当たり前ですよね。警察も40万円以上が動くギャンブルは違法であると考えているわけです。
で、スマスロが実際どのくらいギャンブル性が高いかというと、大学の近所のパチンコ店でコンプリート機能が作動している台を1週間前くらいに発見しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1734596120-cdjvQbY5ByTLWPJMxSaum2zO.jpg?width=1200)
身近な場所でも起こるくらい、結構ありえるレベルの確率なんです。風営法とか遊技機規則とかどこに行ったんだよ。
有利区間が終了したのに、大当たりが続くマシンも大量に登場しています。有名どころだと「革命期ヴァルヴイレイヴ」や「スマスロ北斗の拳」で、これらは大当たりの途中で2400枚に達してなくても有利区間を終了しています。ですが、有利区間終了後はただの大当たりではなく、大当たりの中でも上位のものからスタートするため、大量に出玉が出る状態を維持したまま大当たりを無限に継続することができます。有利区間なんてなかったんや。
脱法、よくない。
ここまで紹介した事例は、もちろんすべて適法であるもとで現実に行われているのです。法律の解釈次第で、いくらでも人の射幸心を煽ることができます。スロットの話がメインでしたが、ゲーム機が入ってるクレーンゲームも本質的には一緒です。
ただ、なぜ違法スレスレのことをしていてもこれら業界が成立しているかというと、当然それを楽しむお客さんがたくさんいるからです。コロナ禍が間に挟まっている影響もありますが、減少傾向であったパチスロの遊技人口は、増加傾向にあります。自分もその一人なわけです。
ここまで悪口を書いていたように見えますが、自分はこの「制約の中でいかに面白いものを作るか」という試みが、とても好きです。なぜなら、家庭用ゲーム機という制約の中でプレイできる、最高のゲームを作る活動に似ているから。だから、こんなに文字数を使って紹介しているわけです。
脱法ギャンブルのスロットですが、仕組みを知れば知るほど面白く、また打ち手の技術(と運)が試される場面も多いです。興味を持ってくれたら、ぜひ一緒に打ちに行きましょう。いくらでも連れて行きます。
あと、風営法をバイパスするための手法についても聞いてくれればたくさん話せます。例えば、ラブホテルの自動精算機は単独で設置すると風営法に触れてしまうため、両替機能を持たせた上で100円玉を使用するマシンをセットで設置することで回避できる、という話とか無限にします。
以上、超長文になりましたが、読んで頂きありがとうございました!!